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アジフライのお話
お立ち寄り頂きありがとうございます。
さて、少し前のことになりますが、ふとテレビから、アジフライの話題が流れてきました。今日はアジフライのお話をしたいと思います。
私はお魚が得意ではありませんでした。骨があるからです。
お刺身だとかたたきだとかは好きでした。骨が刺さる心配はしなくて良いからです(ごくまれにありますけれど、骨)。
父がよく食べたので、子供の頃、お昼ご飯に頻繁に焼き魚が出ましたが、私はそれを食べるのがとても苦手でした。骨を上手に避けられなかったのです。焼き魚を綺麗にお召し上がりになる方々には尊敬しかありません。
母の取る出汁が苦手だったので、煮魚も嫌いでした。
自分で料理をするようになっても、苦手意識が勝ってしまい、なかなかお魚料理を作る気にはなれませんでした。父は魚の方が好きなので、その点申し訳ないことをしていました。
やっと魚にも挑戦しようと思ったのは、料理を始めて四年ほど経ってからのことです。
その時に挑戦したのが、アジフライでした。ちなみにそれまで、アジフライと言えばお惣菜で買うもので、そのお惣菜のアジフライにチャレンジするのにも勇気が必要でした。美味しさに感動して、作ってみたくなったのがきっかけです。ほぼほぼ食わず嫌いだったのです。
当時の私が頼り切っていたのがCOOKPADでした。ある眠れない夜に、布団の中でもそもそと検索すると、さばき方から解説して下さっているレシピに辿り着きました。起き出してそれをノートに書き写しながら、けれどいきなりさばくことに挑戦すると、食べられる部分は残らないだろうなぁ、と思いました。アジバラバラ事件の予感がしました。
さて、私の父は釣りを趣味としていたこともあり、魚をさばける人です。長年、魚市場に勤めていました(競りを行う部門ではありませんでした)。
父の手を借りない理由が見当たりませんでした。一週間分ほどまとめて立てる献立にアジフライの予定を組み込み、当日にアジを一尾買いました。
父は手際よくそのアジを三枚おろしにしてくれました。もちろんゼイゴも取ってくれました。
私はそのアジの骨を丁寧に抜いて(骨が口の中に刺さるのは何としても阻止したかったのです)、大葉を重ねてから衣をつけて、初めてのアジフライを完成させました。あの美味しさはいまだに忘れていません。
それから、夏になるとアジフライを作るのが恒例となりました。普段父が台所に立つことはあまりありませんでしたが、アジフライに限っては、父と私の合作でした。父にお願いすればきれいにさばいて貰えるので、ついつい自分で挑戦することをしないまま、任せっきりにしたままで、今年も夏を迎えました。
そして今、さばき方をきちんと教えて貰わなかったことをとても後悔しています。父は台所に立って料理ができる状態ではなくなってしまったので、アジフライの合作をすることはもうできなくなりました。
スーパーの鮮魚コーナーでお願いすれば、さばいて貰うことはできます。なので、アジフライも作ろうと思えば作れます。
けれど何だか、ほんの一年前にも作った父との合作のアジフライと比べてしまって、ちょっと切なくなってしまう予感がしています。その切なさに向き合う覚悟が何となく持てなくて、アジフライとは少し距離を取っているのです。
美味しいことは間違いないので、案ずるより産むがやすしの精神で作ってみれば良いのでしょうけれど。
私の中で、いつの間にかアジフライは特別な料理となっていたことを思い知ったのでした。
以上、アジフライのお話でした。
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