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七味さやのフォトエッセイ

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現在地を記録するために、写真とともに日々考えていることを綴っていきます。
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#エッセイ

あの日の私の決断を褒めたい

人生の分岐点、みたいなのってきっとある。 後悔したこともあるけど、自分の気持ちの向く方に進んできたら やっぱり「今現在」が一番幸せだなといつも思えているので、 今日は過去の自分の決断を褒めようかなと思う。 18歳の私、あの大学を受験してくれてありがとう。美大に行けば良かったという未練も多少はあるけど、それでも当時はそんなこと考えもしなかったし、なによりあの大学に行っていなければ今の私はない。違う進路にしていたら夫とも出会えなかったし友人とも出会えなかった。あの大学で得たす

「あの日」のこと

* わざわざ見に行かなくても、近所に梅が咲く季節になった。久しぶりにCanonを持ち出して撮ったら、なんだかピンぼけした写真ばかりになってしまった。 今日は3月11日。4年前に大学生だった私は、「それ」が来たときアカペラサークルの練習に行こうとして姿見の前で化粧をしていた。 揺れがだんだん大きくなり、さすがに怖いと感じて机の下に逃げ込んだ次の瞬間、鏡と本棚が化粧をしていたまさにその場所に倒れて重なった。その直後にものすごい横揺れになり、机の下から投げ出されるかと思った。

追悼とフォトブック。「写真を記録する」ということ

この世からいなくなった瞬間に永遠になる。 * 親戚の犬が亡くなった。 おじいちゃんとおばあちゃんが落ち込んでいるとのことだったので顔を出した。その時に、しまうまプリントで簡単なフォトブックを作って渡してみた。あまり写真が無かったので、過去に撮影したものをなんとか引っ張り出して構成した。 これを作ろうと思ったのは、入籍の時に撮影した家族の写真を贈ったらとても喜んでもらえたからだ。「暇な時はつい何度も読んでるよ」と言ってもらえて、情緒的な写真を撮るねと何度も褒めてもら

いなくなった時は、後悔ばかりだ

親戚の犬が亡くなった、と報せを受けた。 動物好きなので犬には大抵好いてもらえるのだけど、あの子は珍しく初めて会った時に噛みつかれた。 その後会う回数を重ね、慣れたと思ってからも撫でさせてくれなかった。 犬らしくない、いつもふてぶてしい態度。 それでもやはり仲良くなりたくて、いつも一歩離れたところからあの子を観察する…という不思議な距離感だった。 ちょうど1年前くらいに撮った写真たち。 まともな写真がほとんど残ってなくて、もっと撮ってあげれば良かったなぁ。フィルム写真も

節目の日のこと

* たくさんのお土産を抱えた大荷物を無理矢理かばんに押し込んで、飛行機に乗りこんだ。これまでに何度もこの日の想像をしたけれど、頭の中での今日はなぜかあたたかく晴れた日だった。東京では大雨洪水警報が出たとかなんとか。お天気アプリを確認すると福岡も雨だ。記念すべき日は少し肌寒い雨の三月だった。太陽光が少なくても、良い写真が撮れると良いのだけど。 スターフライヤーは黒で統一されたデザインで高級感がある。ANAの子会社なだけあって、LCCの中でも圧倒的に快適だ。 もう何回も乗って

変化に飛び込んでいく

「新しいことに挑戦するのは、とても勇気がいる。」 28歳、地元を離れた若い頃から地元を離れたことのある人にとって見れば笑っちゃうことかもしれないが、28歳にして初めて、生まれ育った関東を離れた。 結婚という、一般的には幸せな目的のためではあるけれど、それでも関東で築いた人の縁を全て置き去りにして、九州という全く知らない土地に住むのはなかなか勇気のいることだった。夫の親戚と、たまたま福岡に配属されている唯一の友人を除いては、誰もこの街に知り合いがいない。この街の誰も私のこと