脱サラして株式会社を作ったので、かかったコストや注意点をまとめる

身内のアドベントカレンダーの初日に寄せて。

俺の名前はシチハという。
都内でサラリーマンをやっていたのだが、9月に退職して10月に会社を作った。

今回は、特定多数から資金を集める「株式会社」という形式で創業した。そして金融機関からの資金調達も行った。
これは創業の中では規模が大きい形式と言える。個人事業主で自己資金のみをもって創業する場合などに比べると、ベストプラクティスが見つかりづらい。
そして実際やってみたところ想定よりはるかにコストが重く、また、各所に罠があったように思う。
この機会に、自分のケースについて記録するとともに、創業を試みる方に向けてアドバイスを残しておく。

ついでに、記事末尾には各種サービスのアフィリエイトも含めたリンクを貼る。役に立ったら投げ銭替わりに利用してもらえれば幸い。

コストについて

今回は「会社の設立」「創業融資・投資の取り付け」にまつわるコストをまとめる。事業本体にかかったコストのうち、この2つに関わりのない部分は除く。

集計期間:6か月

開始:2024年6月頭(設立準備開始)
終了:2024年11月頭(設立・資金調達がおおむね完了)

かかったお金:75万円

時間に比べるとそこまで重くない。

  • [5万円]法人印

    • 街のハンコ屋で作ったがミスだった。ネットで買ったらもっと安い。

  • [13万円]登記手数料・登録免許税 

    • 資本金の額によって上下する。

  • [21万円]ノートPC

    • 持ってなくて急遽購入。面談で飛び回るのであった方が何かと便利。

  • [1万円]ウェブサイトドメイン取得費用

    • 日本で法人を持っていると.co.jp系列のドメインが使えるので、
      信用向上のために取得することをオススメする。

  • [30万円]自宅賃貸を法人で借り換え

    • 法人名義でオフィスを借りていないと金融機関の口座が開けないことがあり、融資の受け取りや口座振替ができないことがある。

      • 実際、個人名義で申し込んだ地方銀行では審査に落ちた。

      • GMOあおぞらネット銀行は個人名義の賃貸でも開けた。

        • 最近色々な手続きでGMOあおぞらネット銀行が使えるようになっているので、借り換えナシでも死ぬことはなさそう。

  • [5万円]交際費

    • 従業員、株主、取引先となりえる人などに会って使ったお金

かかった時間:400時間

見ての通り、お金よりも時間が重い。
RimWorldとエルデンリングを合わせたぐらいかかっている。

  • [295時間]経営

    • 書類作成、株主や取引先への企画書説明等

    • 細かい内訳は次の章で。

  • [65時間]交際

    • 従業員、株主、取引先となりえる人などに会っていた時間。

  • [40時間]移動

    • 役所などの訪問に要した時間。

どんな時間の使い方をしたのか

ほぼ日記。参考までに。

[6月:40時間] 事業計画の作成、スケジューリング

6月は資金調達までの情報収集フェーズだった。
事業を継続的に行うためには資金が必要だ。
資金調達先の目途を探し、それに必要な書類や実績を集めることが最初の仕事となった。
調達先は同じ会社に勤めていた友人からの投資と、日本政策金融国庫からの創業融資を当たることにした。
各所に当たるための事業計画作成、市場調査に時間を費やした。

[7月:153時間] 株主・従業員へのプレゼン

7月は資金調達の約束を取り付けるための面談フェーズだった。
数字を見て分かる通り、この月は工数をほぼ100%経営回りに使っていた。
月の前半は企画書を詰めまくり、月の後半はとにかく人と会いまくっていた。
地方自治体の運営する創業支援プログラムに申し込んだり、業界の展示会に訪問して名刺交換や企画書を見てもらう面談を行ったりと、知り合い以外と会社設立のために会い始めたのもこのあたりからだ。
従業員候補となる人に事業の内容を説明し、ジョイン時期についての調整も始めていた。

取引先候補の方とは、8月でプレゼンの約束を取り付けていった。
プレゼンがうまくいくように、図書館に通い詰めて企画書のデザインやプレゼンの勉強をしたり、カメラで自分のしゃべりを見たりした。

[8月:88時間] 取引先候補へのプレゼン・対株主契約書の作成

8月は融資前の実績づくり・投資前の準備フェーズだった。
「取引先にアプローチをしています」という証拠があることによって創業融資の確率が上がるということが、事前に案内されていた。
なので、実際に2年分の事業計画を立てて取引先候補となる会社にプレゼンを行い、契約まで漕ぎつけるための条件をヒアリングしていった。

株主に対しては、実際に株を現金化する場合に備え、契約書面を作成した。作成にかかった時間は調査も含めて30時間ほど。ベンチャー企業においては契約書を作らないことも多いそうだが、自分は株主に安心して投資してもらうために諸々調べて準備をした。

[9月:32時間] 登記準備

9月は登記前の準備フェーズだった。
ここからようやく、経営ではなく本業を進める猶予が生まれ始めた。
やっていたことは、主に必要書類の作成。つまり事務処理だ。
定款の作成もここで行っている。

[10月~11月頭:45時間] 登記、日本政策金融公庫面談

10月は準備していたことの実施フェーズだった。
登記については8月・9月に行ったものを提出するだけ、日本政策金融公庫面談も6月から少しずつ作ってきたものを提出して再確認してもらうだけといった形。

ただし、登記が完了した後は結構忙しかった。
登記簿謄本がないと進行できない手続きがキューにたまっていたのだ。
例えば日本政策金融公庫面談で「設備投資」としてPCやPCチェアの購入を申し込んでいたのだが、社名が出ている領収証が必要となる。
各種ウェブサイトでビジネスアカウントを発行して領収証を集める必要があり、長いものでは3週間程度時間がかかった。

アドバイス

特にやってよかったなと思ったことをまとめる。

まずは地方自治体の運営する「創業支援プログラム」「特定創業支援事業」に申し込め

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/nintei.html

各市区町村の運営する創業支援センター、ならびに登記しようとする自治体が行っている場合に限るが「特定創業支援事業」
まず何よりもこれらに突撃することが大事。

特定創業支援事業については明確にわかりやすいメリットがある。
完了すると登録免許税15万円が50%OFFになり、日本政策金融公庫で受けられる創業資金の融資利率も引き下げてもらえる。
しかし、申し込みから一回目の面談まで1か月程度かかることがあり、各種プログラムの完遂にさらに1か月程度時間がかかる。
創業を検討しているなら、今すぐこのページを閉じて
「自分の住んでいる市区町村 特定創業支援事業」
で検索をかけ、予約を取るべきだ。

創業支援センターでの相談については、金銭的メリットよりも、創業それ自体の円滑化が目的となる。
そもそも創業においてはやるべきことが非常に多く、全てを独力で嘗め尽くすのは不可能に近い。しかし、創業センターで案内を受ければ、創業を「攻略サイトを見ながらクリアする高難易度ゲーム」から「丁寧なチュートリアル付きのゲーム序盤」に変えることができる。
創業支援プログラムに携わる方々は地方自治体からお金をすでに貰っているので、あなたに追加で請求が行くこともない。申し込み得ということだ。

支援の内実は金融機関の斡旋、必要な手続きの案内など実利的だ。
自分は以下の2つの支援を受けた。

①日本政策金融公庫の斡旋
融資面談の前に、創業センターの担当者に創業計画書の添削をしてもらった。
添削してもらった計画書をもとに、日本政策金融公庫の方に創業センターで面談を行ってもらった。
正式な融資面談の前に、二回添削が入ったということだ。
いきなり融資面談に突撃していた場合、融資額の減額など、マイナスを被った可能性が非常に大きい。

②創業支援最新メタの案内
自分は創業センターで先述の「特定創業支援事業」を案内された。

日本政府や地方自治体は定期的に創業にまつわる支援の内容を常に更新し続けている。一応Youtubeでメタを追っていたのだが、結構なコストがかかるし、現存しているかわからないものも多い。自分で調べたうえで、センターでメタを案内してもらうのがベストだろう。

上述の通り、創業が円滑に進められるようになる。
市区町村の運営するものは無料のサービスなのでやはり予約は埋まりがちだ。創業を検討しているなら、こちらについても、
「自分の住んでいる市区町村 創業支援センター」
で検索をかけて、すぐに申し込むべきだろう。

何事もいきなり申し込むな、紹介された通りに進め

創業に関しては、正面口にいきなり入るのは不正解というケースが非常に多く見られたように思う。

日本政策金融公庫のホームページには、創業融資の申し込みのフォームがある。
しかし実際には、上記創業支援のプログラムを経由することが正解ルートの一つであり、フォームにいきなり突撃する場合、融資減額の確率が高まる。

同じく、登記の申請についても、法務局の窓口が用意されている。
しかし、創業センターなどで得た情報を元に準備をすることで、窓口にいきなり突撃した時に比べ、手戻りを少なく済ませることができる。

この通り、創業においては、添削してもらった書類を携え、正面口を案内してもらうのが正解の訪問方法となりうる場合が多い。いきなり正面口をノックするなら、ある程度覚悟が必要と知ろう。

賃貸住みなら、管理会社に電話して名義変更 / 転貸の可否を問え

登記には必ず住所が必要となる。
住居は居住用・事務所用というのを契約書で定めたうえで借りるため、賃貸済みならば管理会社に連絡しなければならない。

金融機関は、法人名と登記住所の契約者名の一貫性を重視する
住所だけ貸してくれるバーチャルオフィスは金融機関等からは実態がないと見なされるということだ。
将来金融機関から融資を受けることを検討している場合、ここは必ずクリアしたい点となる。

なお、名義変更手続きには時間がかかる。
法人への借主名義の更新を申し込んでから、約1か月半を要した。管理会社から、保険会社や保証会社など方々に確認が飛ぶためだ。
登記簿謄本が取れるようになり次第、早めに動いた方がよい。

もし法人名義への借り換えができない場合、「転貸」という形式を取ることで、金融機関での口座開設を認めてもらうことができる模様。
転貸とは、「個人名義で借りている賃貸を、法人に対して又貸しする」ということだ。
転貸の事実を証明するためには、契約書面を用意する必要があり、大家が転貸を承認している証拠も必要となる。
転貸の書面を添付すれば、名義の一貫性を欠いていても、金融機関に法人の実態を認めてもらうことができる。

主に図書館を頼り、最新メタをYoutubeで補填せよ

創業には多種多様な知識が必要になり、それをいかに効率よく集めるかが重要になってくる。
Youtubeで1から10まで情報を集めるのは、効率が悪い。欲しい情報が本当にその動画で得られるのかという内容の精査が難しいからだ。
一方図書館では、近いカテゴリの本が一か所にまとまっている。そして、同じ情報を掲載した、さまざまな語り口の本がある。
必要な情報があるかどうか、自分のフィーリングに合うかどうか、パラパラと本を流し見して検討することが容易にできる。
図書館のネックは、最新の情報に追い付いていないということだ。
創業に関する法律は更新が早い。読みやすいけど古い本というのが多くあり、そういった本を誤謬なく利用するために、Youtubeを併用することをお勧めする。

やった方がよかったこと

やれていなかったが、やった方がよかったこともあった。

ボトルネックが明確になるタスク管理

創業にあたっては手続完了待ちが頻発する。
登記簿謄本が取れるようになる→買い物のビジネスアカウントが発行できる、等。
今何を待っているのか、待ちが解消されると何ができるのかが明確にわかる形でタスク管理をするとよいと思う。

自分は今、Google Spread Sheetでタスクを管理している。
すでにこれで慣れてしまって移行が面倒なのだが、タスク同士のつながりが記述しづらいため、待ちが発生するタスクのトラッキングがダルくなってきた。
もし、簡潔でイケてるタスク管理ツールがあれば教えていただけると幸い。

むこう3か月収入がなくても済む自己資金の準備

会社を9月にやめて、融資が下りるのが12月ごろになるというスケジュールになった。
最速で動きはしたものの、約3か月間、無収入になってしまう。

この期間のお金は、友人からの借り入れでなんとかした。
しかし、日本政策金融公庫との面談で、唯一この借入があるという点が引っかかりポイントとなっていたように思う。
自己資金でなんとかするに越したことはない。

利用サービスやら本やらの紹介

銀行:審査に通りやすいGMOあおぞらネット銀行

先述の通り、創業にかかる銀行回りの手続きには罠がある。

  • 賃貸の名義が法人でないと審査に落ちる

  • 賃貸の名義は創業後でないと変えられない

  • しかし法人口座がないと創業直後に諸々の手続きが進められない

この罠を回避するには、審査が緩い金融機関で1つ口座を申請しておくとよい。自分の場合はGMOあおぞらネット銀行だったが、おそらく他のネットバンクでも、審査は地方銀行や信金に比べれば緩い。
ネットバンクをメインバンクにするかは検討の余地がある。将来融資を受けるために、口座の利用履歴を作って金融機関の信用を積み上げることが必要になるからだ。
しかし、創業直後の詰みを回避するという目的ではとても頼れる存在だ。登記完了後すぐに申し込むとよいだろう。

見積もり:Amazon Business + Povoでコスト削減

Amazon:
https://www.amazon.co.jp/business/register/org/landing?tag=nanahathereds-22

Povo紹介コード:
M24KP7EX

創業融資では、椅子やPC、PC周辺機器など、設備投資にできるものは設備投資で申し込んだ方がよい。
運転資金に比べて返済の猶予期間が長く、使途が明確な分、融資が下りやすいからだ。
ただし、その使途の証明には、見積書が必要になる。
一般顧客向けのAmazonアカウントには、見積書の発行機能が存在しないので、登記が完了して謄本が取れるようになり次第、Amazon Businessアカウントを発行すると良い。

注意点として、SMSの受け取りのために、Amazonに過去登録していない電話番号が必要になる。
自分はPovoで番号を発行して登録した。PovoはSMS受け取りが無料であり、データ通信は従量課金制であるため、使わなければ一切コストがかからない。

契約書作成:単価が安い eformssign

特にアフィリエイトではないが、イケてるのに知名度が低そうなので紹介。

契約書の作り方に、「電子署名」という方法を採用することができる。対面で印鑑を押さずに済み、簡単なので、是非採用したい方法となる。

電子署名はAdobe AcrobatやGoogle Drive等でも行える。しかし、この記事を読んでいる人の9割以上は、どこから電子署名を行うのか知らないと思われる。そのやり方を案内するコストを背負うのはつらいものがある。
したがって、契約してもらいたい相手が、案内に従って簡単に署名できるクラウド契約サービスを利用することを決めた。

クラウド契約サービスでは月額5000円以上かかるのが相場となっている。
しかし、eformssignでは契約1件あたりで料金が発生するため、小規模法人にとってはコストがかなり安く済ませられる。
大量に契約書を交わすわけではないがスポットで必要、という業態ならオススメ。

本いろいろ

図書館にあった奴。
まさにベンチャーキャピタルと交渉を行う機会があったので、資本政策を作るために参考にした。
今のところは友人からの資本のみでやっているが、一度株を人に渡すと後戻りができないということで、事前にこういう本を読んでおいてよかったと思う。

図書館にあった奴。
株主への契約書発行のタイミングで参考にした。
タイトル通りの内容が一冊にまとまっていて情報源として非常に役立った。
従業員を雇う前にもう一度読むと思う。

図書館にあった奴。
基本的に全部自分が動かないと進まないので、体力マネジメントが最も重要だと思い参考にした。
Googleが重視するもの、プログラミングのスキルよりも運動食事休憩らしい。これを読んでから自炊頻度とチャリで運動する頻度を上げるようにしている。

以上。参考になる人がいるかはわからないが、もし役に立った場合はコメントなどで教えていただけると嬉しい。

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