No.35 We Love ``Russia'' 事変 ロシア編

0. はじめに

前回の

No.33 We Love ``Russia'' 事変 潤羽るしあ編
https://note.com/shibushibuyanyan/n/n478f38d6e75d

のアナザーサイドである. 前回は

「当然この2つの事象(``るしあ''編とロシア編)は互いに何の関係もない.」

と書いたが, それはロシア編に比して``るしあ''編があまりにくだらなすぎるので言ったアヤであり, 実はある意味で関係はある(?). その鍵が正に表題の

We Love Russia

であり, その辺の雑感を中心に述べるのがこのnote目的である. 本当は2月25日時点で書きあがっていたが, 余りに長くなりすぎて「We Love Russia」と関係ないことまで書きすぎたので, とりあえず主題と関係あるtopicsとそうでないものとを分けるのに手間取り今に至る. 分けた方もそのうち適当にnoteに出すことにする. 

1. 第一報の雑感 -プーチン老いたり-

 2月24日のロシア侵攻開始から既に2週間が経った現段階に至るまで, 諸々の情報が錯綜しており, なかなか「こう」というような確たることは言えない. また元来, こういうことにはあまり触れたくないのだが, 潤羽るしあの件とは異なり, そうはあるイベント(この「イベント」という見方も今回の一つのkey)でもないので, いくつか述べておこうと思う. 

 まず第一報を職場のmeeting中に聞いたときは流石に驚いた. 急いで状況確認をしてみると, なんとロシアがウクライナの東, 北, 南の三方向から同時攻撃をしていると聞いて更に驚愕. 特に驚いたのは北側からで, これは必然ベラルーシから攻め込んでいるわけで, コレが突発的なものではなくかなり綿密な計画であることを伺わせた. と同時にプーチン致命的悪手を打ったこととこの戦争がかなり長引くことも予感し, 思わず口を突いたのが副題の

プーチン老いたり

であった. 

 私の事前の予想は侵攻はまずほぼほぼ無し, あるとしても東部のルガンスク, ドネツクの偶発的な衝突(これは偽装でもよい何でもよい)にかこつけ, 「現地ロシア系住民の保護」を名目に少数精鋭の特殊部隊を短期的かつ集中的に投入するという, 正に文字通りの「特殊軍事作戦」を実行するものだと思っていた. そして, この戦闘の停戦を口実にウクライナ政府を交渉テーブルに呼び出し, 領土問題の明確化, 武力介入による実効支配の容認あたりを引き出し, 4, 5年後によりエスカレートした恫喝を行うための仕込みが今回の本命なのだろうと. 

 ところが蓋を開けてみれば, なんとウクライナ東部侵攻は寧ろデコイで, 本命はベラルーシからのキエフへの大規模侵攻であり, これはもう全ての手順を吹っ飛ばした政権転覆が目的としか思えなかった. 私がこれをプーチンの致命的悪手だと思ったのは, それは間違いなくヨーロッパ, つまりNATO加盟国の地雷踏みぬいたからである. より正確に言えば, ヨーロッパにとってのロシアの侵攻の正に「鬼門」であるポーランドをぶっ叩いたからである(全く皮肉にも第二次大戦の時とちょうど逆の構図である). 当然, (全く無能なアメリカを尻目に)殆ど即日でNATOもEUも諸々の方針(武器供給, SWIFT, etc.)を大展開することになるわけだが, プーチンがコレをわかっていなかったことが私には信じられなかった. 

 その後数日は「ウクライナ軍による軍事クーデターによるゼレンスキー政権転覆を期待する云々」の怪情報も流れたが, 私はそんなものは絶対ないと思ってた. そんな仕込みが事前に十分できていたならば, ウクライナ軍をメインにロシアは影からサポートすればよいのであって, その工作がうまくいかなかったから今回全くバカげた軍事行動に出たのだ. 一両日中に寝返らなかった時点でその芽はとうにない. 

 仮にそういうお膳立てがあって, 首尾よく政権転覆ができたとしてもその後はどうなるのだ. 万一傀儡政権が樹立出来て, その運用がうまくいったとしても, (というよりそうなってしまえば)ロシアへの諸々の制裁が解除される見込みが無くなるどころか, それ以上に厳しいものになってしまうのは必定でそうなれば, ロシアは絶対に持たない. 特に経済制裁に関しては

「ロシアは超格差社会だから, (SWIFT以前に)プーチンをはじめとする一部の金持ちたちの資産凍結だけでもかなり厳しい」

と思ったところに輪をかけてSWIFTなのだから, 既に今の段階でもう目も当てられない. 

 つまりこの戦争はロシアがウクライナにおいて目的を達成できたとしても勝つことができない戦争で, これを終わらせるには最低でも「プーチンの失脚」が必要なのだ. だが, 冷戦以後30年, プーチンから数えても20年以上も思考停止してきた, そして実際にこの全く愚か軍事行動を止められなかったロシアが, プーチンを失脚させるといってもかなりの手間だろう. 下手をすれば2年後の大統領選を待たなければならないかもしれない(そしてその時ロシアは果たして文明国として存続しているのだろうか). 

 最短で終わるシナリオがあるとすれば, プーチンがどうしようとも, ロシアが諸々の面で戦闘継続ができなくなり, ウクライナから全面撤退するしかなくなる場合, つまりロシアが直接戦闘でもウクライナに負ける場合しかないと思われる(下手に勝って, ウクライナに居座ると上述した更なる地獄を更に長期にわたって見ることになる). こうなれば必定プーチンは失脚せざるを得なくなるし, 無論プーチン自身が誰よりもそれをわかっているから絶対に退かないだろう. つまり実質ロシアの負けが確定しているのに戦争が長引くというのはそういうことだ. 

 このように大東亜戦争以上に(尤も大東亜戦争はアメリカ以外には終局まで負けてはいないので, 最初から負け確かつ真珠湾攻撃から敗北しているような今回の事例とでは比較の対象にすらなっていないのだが), どうやっても勝てない戦争をプーチンがはじめたことは

プーチン老いたり

という言葉以外に合理的説明のしようがあるまい. 

 これの巻き添えを喰らう多くのロシア国民(そして無論ウクライナ国民)は「ご愁傷様」と思うが, 結局冷戦から30年を経てもプーチン以外のoptionを用意できなかったロシアの必然的帰結ともいえる. 尤も連中も, 敗戦から75年以上も経てもなお, 実質冷戦時代の利権構造を維持し続けるだけのoptionしか有していないjapに言われたくはないだろうが. 

2. またしてもWe Love Russia勢

 ある程度この騒動が長期化するとして, 重要なのはそれが我々にとっては何をもたらし, それを受けて何をすべきかである. そしてそれはまた別の, そして非常に長大な論になるのでそれはやめて(というかこの2週間で実際に長々と書いたのだが, 正直余りオモテにはできない感じになってしまったのでnoteには恐らく書かない), ここでは表題の

We Love Russia勢

に絞った話をすることにしよう. むしろコッチの方が本家本元の「Russia大好きだよ」なのだから. 

 そもそもこの「Russia大好きだよ」勢は随分と前からしばしば目にした. 8年くらい前のクリミア騒動の際にもいたような気がする. ただ傍から見ている分には彼らは「Russia大好きだよ」というよりむしろ「プーチン大好きだよ」に見えた. そしてことここに至っては, それを取り繕うこともなくなったように思う. 

 連中の言い分としては概ね以下のようなものである(知らんけど):

世界支配を目論む国際金融資本勢があり, 金融, メディア等々の世界の殆ど全てが彼らに支配されており, その支配体制に異を唱え, 独自秩序を作るべく奮闘しているのがロシアであり, プーチンである. 今回のウクライナ騒動もゼレンスキーをウクライナの傀儡にして, そんなプーチンを潰そうとする試みであり, その困難を打開すべくプーチンは困難な武力行使を行わざるを得なかったのだ

この一連の言説の真偽は論じない. というより, それは問題ではない. つまりこの命題が真であろうが, 偽であろうが, あるいは真偽が織り交ざっていようともどちらにしても「We Love Russia」はnonsenseなのだ. ここではそれを論じる. 

 まず偽であれば最初から無視してよい. ゆえに真であると仮定する. すると世界を牛耳っている強大な勢力があり, 彼らはありとあらゆる手を使ってロシアを, プーチンを潰そうと画策しようとしているということになる. そしてプーチンは今回のウクライナ侵攻により, そんな彼らに, 少なくとも直接の軍事行動以外のありとあらゆる手段を取らせる口実を与えてしまった. 現に資産凍結やSWIFTをはじめとする諸々の制裁が既にロシアに課されている. だから結果だけ見れば「We Love Russia」勢の言っていることも矛盾しないかもしれない. 

 しかしここでの問題は

『そんな「世界勢力」を敵に回して, 敗色濃厚, 大劣勢のプーチンに, この凄まじい反ロシアの潮流に逆らってまで「プーチン大好きだよ」actionをすることに見合った「儲け」が日本にあるか?』

ということである. たとえば, ここで「プーチン大好きだよ」と世界の中心で叫べば, それをプーチン君が恩義に感じ, 北方領土の返還が叶うのか? そこまで行かずとも何か日本にわずかでも恩恵があるのか. そんなわけ絶対にない. というよりマイナスしかないだろう. 

 つまり「We Love Russia」勢が説くべきは彼らが日頃熱を上げている彼らの言説の真偽などではなく, それが真であったときに, 如何に行動し, それが如何なる利を我々にもたらすかである. そして現状では, 彼らの言説の真偽によらず, 「We Love Russia」は我々にとって害にしかならない(少なくとも私にはそう思える). ゆえにこんな言説は極めてnonsenseかつ無意味である. そんなものを嬉々として布教しようとしている時点で, まともであれそうでなかれ, 余り関わり合いになるべきではない類の人間であろう. そういう意味では「るしあ大好きだよ」勢の方が100倍マシであり, 「We Love Russia」で同一視してしまうのは流石に悪ノリが過ぎたように思う. 厳に慎みたい. 

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