No.208 令和6年自民党総裁選雑感

0. はじめに

 先日, 自民党の総裁選が行われた. 私は高市早苗の決選投票での勝率は10%くらい(0でないだけずっとマシ. むしろよくやった方)だと思っていたので, 別段結果に驚きもしなかったが(逆に勝てたらとても驚いただろう), 高市陣営の取り巻き連中は大いに驚き(!?), 大いに憤っているようである. というわけで例によって, 「保守(あの連中を「保守」とも呼びたくはないが)の空騒ぎ」で終わった今回の顛末の雑感を個人的に述べる. 

1. 甘々皮算用について

 とりあえず件の騒動に関する前日と当日の私の4つの Tweet を順番にここに貼ってみる:

  で, まずはここで触れている甘々皮算用についてである. これは凄く簡単で, 事前の高市の取り巻き連中の決選投票の計算法が殆どみんな

(全体票) - (反石破票) = (高市票)

で計算していたのである. これのおかしさに誰も突っ込んでいない時点で

「こりゃ, ダメだな」

と私は思った. 

 すぐ考えればわかることだが, (数学的にも, 政治的にも)正しくは

(全体票) - (反高市票) = (高市票)

で計算しなければならない. で, 今回の9人の候補者とそのバックの反高市票の数を数えれば, その時点でもうほぼ勝てないことはすぐわかる. 恐らく, 実際そう計算して石破(勝ち馬)に乗った連中もいただろう. 

 尤も, 取り巻き連中としては, 選挙戦の最中は情報戦の側面もあるから, 外野から

「高市有利!」

と情報工作をするのが役目であることも理解はできる. かくいう私も前日に

『純粋に主義主張関係なく次の選挙を考えるなら, 高市で速攻をキメるのが最善手であることは間違いない』

とは言っているので, 高市陣営の取り巻き連中が連呼していた

「だから, 高市に入れるはずだ」

論に関しても確かに正論だし, 合理性がある程度あったことも認めよう.

 ただし, それは

「自民党議員連中がそこまで計算する能(脳)がある」

という前提の下における合理性であって, それに関して私は

『のだが, 進次郎が寵児として持て囃される惨状をみてもわかるように, 今の自民党議員はそんな算数もできなさそうだしな.』

とその前提の成立を疑っていた. そして私の推察は実際正しかったというわけである.

 ちょうど少し前に

を書いていたこともあって, 

「ああ, 関ヶ原の西軍や三成はこんな感じで負けたんだな.」

ということを改めて実感できた.

2. 結果の分析とハッキリしたこと

 で, 今回の結果だが, 高市の取り巻き連中は

「日本終了」

だの, 何だのわめき散らかしているようだが, とりあえず

『うろたえるな 小僧ども!!』

と一活をしておく. 

 よくよく考えてみろ. あの悪夢の民主党政権下の鳩山, 菅, 野田のワースト3連荘で, 3.11 を挟んで, 円高80円の東証平均8000円で3年やっても日本は滅びなかったのだ(まぁ, その間少なくない尊い犠牲があったことは確かだけど). そう簡単に日本は滅びはせん. 紛いなりにも「保守」を名乗ろうというのなら, 少しは日本というものを信用して, ドッシリと構えてほしいものである. 今の「保守」に決定的に足りんのはそれである(これじゃ, キチガイ左翼連中と方向が違うだけで, その本質は何も変わらんではないか). 少なくとも保守ビジネス界隈のノストラダムス(最近の若い人には「ノストラダムス」が通じない!!)商法の片棒を担ぐようなマネはやめたほうがよい. 短期の情報戦としては有利になるかもしれないが, 天下国家百年の計を論じる上ではむしろ害の方が大きいだろう. 

 それにそもそも今回の総裁選の結果も冷静に考えればそう悪いものでもない. もっと悪い結末はいくらでもありえたが, 少なくとも最悪ではないし, それどころか上から数えていいくらいにはマシな部類である. まず第一に河野太郎の政治生命を完全に断つことができた. 第二にあの小泉進次郎という「神輿」を傷物にできた. 私としては今回これだけでも戦果としては十分だったと思うが, この二つを遥かに上回る成果として, 高市以外が全て反高市と言っても過言でなかった大逆風の中でわずか一ヶ月足らずでここまでの状況に持ってこれた. というより, この成果の副産物として, 河野太郎を狩り, 進次郎神輿をコカせたという方が正しいだろう. 

 そしてもう一つ. これは私にとっては10年も前から自明だったのだが, 一応

「自民党とは戦後レジュームそのものである」

という点が完全に, 隠しようがないほどにハッキリしたということは, 歴史的に大きな意味を持つように思う. つまり私はあの日

『今日は正に運命の日. 歴史の分岐点.

高市早苗がどちらに転ぶか.

例によって「保守の空騒ぎ」で終わるか否か.』

と言った意味は,

「自民党がその意義と役割を完全に終えた日」

ということである(少なくとも「日本が終わる」とは一言も言っていないし, 思ってもいない). 

 ここで

『いわゆる「戦後レジューム」が何であるか』

を論じることはしない. 恐らく論じることにもはや大して意味もないからである. 抑えておくべきことは, 

『「戦後レジューム」という日本の支配構造が, 多くの日本人にとって一定の益をもたらす時代があった』

という歴史的事実と

『しかし, 冷戦終結30年以上を経て, 「戦後レジューム」が, それを既得権益とする者を除いて, もはや益をもたらすものではなくなったどころか, 大いに有害なものになり, そのことに気付く(あるいは実感する)日本人がどんどん増えている』

という現実である. むしろ

「今回の総裁選の高市早苗の善戦は, それが現実になってきた証左である(その現実がハッキリした)」

と言うべきかもしれない. これに関しては正直私の想像以上だった. 時代は思ったよりはやく動いているのかもしれない. 

 自民党が政権与党として今後生き残るには, その時代の変化に対応していかなければならなかったのに, それができなかった. 恐らく, 自民党は戦後レジュームと運命共同体なのだろう. だとすれば, もはや滅びるか, 解党的に出直すかいずれかの道しかない. それが今回ハッキリした.

 現に, 自民党の連中は「戦後レジューム」の死守の一心で反高市でまとまったが, 余程余裕がなかったのだろう. すぐやってくる肝心の「``選挙の顔''を選ぶ」という大命題を完全に失念している. さて, 増税クソメガネの後で「消費税15%」を争点にされたら, 石破茂で戦えるのかね? そんな算数もできないような連中は消えるしかない. 

3. 高市早苗について

 個人的にはあまり好きではないが, 今回9人の中では唯一「まともそう」だった感じ. 多分日本保守党よりはこちらの方がマシだろう(アレは胡散臭いし, それこそ「キチガイ左翼の方向が違っているだけ」で, 「幸福実現党, NHK党, 参政党よりは若干マシ」くらいに思って, あまり期待しない方がよい. 何なら国民民主の方が期待できる). ただ議員票でも石破に負けるというのは, 単純に反高市, 戦後レジュームという構造だけでカタが付く話ではないと思う. 恐らく「嫌われている」というよりは双方「無関心」なのだろう. 

 正直, 気持ちはわかる. 自民党の国会議員なんて, ウチの地元のアレも含め, 大多数はどうしようもないバカか, キチガイしかいないのだから. 私だってご同業だったら, 可能な限り口も利かないだろう. ただ, 自民党で総裁になりたいというのであれば, それは通らない. そのどうしようもないバカとキチガイ連中を動かす(説得したり, 納得させる必要はない. そもそもそれはムリである)のが自民党総裁にもとめられる資質なのだから. 

 それを自分でやるのがどうしてもイヤなら, 何らかの力(金か, 権力か, 地位か)を身に着けて行使するか, それ専門の仲間を見つけて何とかしてもらうかをしなければならない. しかし, 期間が1ヶ月しかなかったとはいえ, どうも高市早苗がそちらに力を割いたようには思えない. 実際, 割く余裕も無かったのだろうが, そうであれば, その仕込みをしていなかった時点で今回の負けは確定していた. 

 まして自民党は戦後レジュームそのもの, つまり存在そのものが反高市なのだ. にも関わらず「それの長になるべく協力を仰ぐ」ということからして既に矛盾している. 負けた根本は結局ここだろう. すなわち, 自民党が「自民党」(戦後レジューム)である限り, 高市早苗は総裁には絶対になれない. それが今回高市早苗が得るべき教訓だと思う.

 さて, それでこれからどう動く. 高市早苗が偽物であれば, 今回のココが「天」で, 後はそれこそ河野太郎のような無様な転落, 末路を辿るだろう. だがもし高市早苗に本当に何かしらの天命があるのならば, いずれその役目を果たすときがやってこよう. だとすれば, 今回の負けにも何らかの意味があるはずだ. 

『その意味を, 更には運命を理解できた上で, どう動くか』

存外, 高市早苗が本当に問われるのは今回の総裁選そのものではなく,

「『この命題』にどう向かい合うか」

にこそあるのかもしれない.

 果たして高市早苗がそれがわかる器か否か(本物か否か). 今はまだ測りかねている. 

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