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No.131 アニメ「ラグナクリムゾン」先行上映会雑感

0. Abstract

 忙しすぎてすっかり間が空いたが, 先週のアニメ「ラグナクリムゾン」先行上映会の雑感を述べる. なお, オンエア前なので, 本編のネタバレになるような情報は一応伏せる(ので諸々が曖昧な部分もある). 

1. 当日のあらまし

 7時起床. 朝食後, 出発準備をしてから9時過ぎに出発. こういう時のために, 出張経費で貯めたマイルで昼過ぎに羽田へ飛ぶ. 時間があったので, 東京都近代美術館(ガウディとサグラダ・ファミリア展)に行ってみたが, 人が多くて既に15時の回からしかチケットが無かったので, となりの国立公文書館へ行ってみる. それから神田の方に歩いて行って, 買い物. 大分久しぶりで, 意外な掘り出し物が結構あったが, 古本屋がまたいくつか無くなっていた(正に「神保町哀歌」…).

 それから新宿に移動し, 例の「シティー・ハンター」の「掲示板」を探し回ったが中々見つからず, 少し迷う(最終的には見つけられた). それから16:30過ぎに新宿ピカデリーへ. 会場に思ったより人が多い事(空席はあったが, 概ね会場は埋まっていた), そして女性が多い事に驚いた(これは「ワールドトリガー」の2期の先行上映会にも感じたことだった). どうも彼女らは小林千晃(私は今回の「ラグナクリムゾン」まで彼のことは, その存在まで含めて, 何も知らなかった)のファンらしく, 私の隣に座っていた女性は彼のブロマイドを片手に会場の写真を撮っていた. 

 ここで

「もしかして彼女らは, 私とは全く逆で, 小林千晃のことは知っていても「ラグナクリムゾン」のことは全く知らないのではないか」

という恐ろしい想像をしたのだが, 入場特典で1巻の最初の方を配っていたので, この想像も実は満更でもない感じがした(全く最近の若い人は全く理解できないものである). コレ, キャスト挨拶が無かったら, このうちの多くは来なかったのではないか. ビジネス的には

「各キャストの``信者''を新規顧客で取り込む戦略」

ということで, まぁそれに関して(大いに不満はあるが)とやかく表立ってあれこれ言う気はないが, キャスト挨拶無しに(しかも一定期間上映して)あれだけ劇場を埋めた「ワールドトリガー」の凄さを改めて思い知った. 

 で前日に Twitter で

「(凄く前の方の)私の席(スクリーンが非常に観づらい)と, 席を交換してほしい」

と言ってきた人と会場でチケットを交換することになっていたが, 彼(こちらは, これも私は全く知らない, 土屋李央目当てらしかった)は上映開始3分前になっても現れず, 大分ヤキモキしたが, 直前に駆け込んできて無事席を交換して, 後ろかつ真ん中の方の一番見やすい席から鑑賞できた(詳細は後述).

 1時間で本編終了後, キャスト挨拶. 正直どうでも良かったし, 「帰ろうかな」とも思ったが, 結局脱出するタイミングを逸して残ることに. とりあえず

・村瀬歩の背が高いこと
・日高里菜がことあるごとに忙しなく動いていること(あれは performance だったのか, 癖だったのか. 前者なら聡い, 後者なら天然? 女優出ってのも何か理由があるのかな)

が気になった. あと

「収録時にやりとりする相方の役がいないときは, 代打を立ててタイミングの調整をする」

ということを初めて知って面白かった. おまけで

「スライム (CV:村瀬歩 or 日高里菜)」

を知って, 収録がどの辺まで進んでいるかもわかった. 

 18時過ぎに終了. 先々週の出張の際に見つけった結構イイ定食屋に行って, 夕食後, 東京駅の界隈で少し買い物をしてから帰宅. 新幹線等を乗り継いで日付が変わる前に帰宅.

2. 本編雑感  --最初で最後のアニメ「ラグナクリムゾン」の感想--

 本編の雑感を極力ネタバレ無しでする. しかし, 余りに気分が重い. 正直, 観に行くとき,

「最低最悪のゴミアニメが出来上がってくる」

ことも覚悟して観にいった. そんな悲壮な覚悟をもって, あの先行上映会に望んでいたのは私だけだったのではないか. ともかくその覚悟もあって, 無事乗り切れたが, でもそれだけだった. Twitter には

と書いたが, これは「ラグナクリムゾン」だからこう書いたのであって本当の感想は

『「ゴミアニメではない」. ただ「それだけ」だった』

である.

 これがゴミなろうのアニメ化であれば, 十二分だったろうし, 私は何も言わない(そもそも観ないが). しかし, これは「ラグナクリムゾン」なのだ. 鬼才小林大樹の, 極めて高度に完成された情報処理媒体を, アニメという形式で実現, 表現するという筆舌に尽くしがたい難行なのだ. 結局, 以前から私が危惧していた通り

『アニメ化するには10年早かった』

わけだが, そういう次元の話でさえなかった. ヒラコーなら

『「良かったのは``野沢那智''の演技だけ」と言ってDVDを送り返して, リテイクを出す可能性もあるレベル』

である. 

 それはどういうことかと言うと, 本編のネタバレを防ぐために具体的に論じられない(論じてしまえば止められないからちょうどよいのかもしれない)のだが, 一言で言えば

『「設計思想」が根本的に間違っている』,

もっと言ってしまえば

『「センス」がない』

ということになる.

 当たり障りのない範囲で言うなら(ちょうど上でヒラコーを出したのでそれに準拠した例を挙げると), たとえば「ドリフターズ」がアニメ化した時(アレは本当に素晴らしい出来だった), 確か監督だったと思うが, 彼が語っていたのは, 

「メモ一つ, 紙切れ一つに至るまで全て原作をそのままに再現することを心掛けました. 何故ならば, 我々が気付いていないだけで, それが後で平野先生が何かに使う重要な伏線になる可能性もあるからです」

ということだった(正確な文言は覚えていないが, 大体こんなニュアンスだった). そして, 今回アニメ「ラグナクリムゾン」について, 私が言いたいことの全てがコレに集約されていると言っても過言ではない. 

 以前から何度も言っているように, 「ラグナクリムゾン」は「バトルファンタジー」ではない. あれは「SF」なのである. だから諸々の描写や展開には細心の注意を要する. 私が「ラグナクリムゾン」のアニメに対して(ほぼ望みがないとわかりつつも), 望んでいたのは

「原作を忠実に再現しつつも, 原作の理解の助けになる上手い補間」

であった. 

 これは単に「原作厨」がどうこうという話ではなく, ビジネス的にも

「初見でも, 原作ガチ勢でも, 幅広い layer に刺さる多層的構成」

という実際の問題であり, 少なくとも今回のアニメ「ラグナクリムゾン」はその基準を全く満たしていない.

 私は, 仕事に向けるのと同等の熱量をもって, 「ラグナクリムゾン」を読んでいる. 先日知り合いにその話をしたら,

『それは異常だ(マンガ, 娯楽は仕事の息抜きに使うべきであって, それに仕事と同等の熱量, リソースを注ぐのはナンセンスだ)』

と指摘され,

『確かにそうかもしれない』

とは感じたが(寧ろ逆に「君は「熱量」が先にあって, それを「仕事」や「娯楽」といった諸々の対象に平等に注いでいるのでは?」と指摘された), ともかくここ 2 年くらいは毎月備忘録をマジメにまとめるくらいには熱心に読んでいる. そういう人からすると,

『このアニメ「ラグナクリムゾン」は, 「ラグナクリムゾン」を読み解くのに何の役にも立たないどころか, 「ノイズ」が酷くて大変有害である』

という評価になる. 

 なんで(作画コストとしては大した手間でもない)あの描写を端折ったのか? そのくせ何でいらんオリジナルシーンを無駄に足してしまったのか(しかもかなり致命的). 具体的に挙げだすとキリが無いし, またオンエア前の現状では挙げられないのだが, ともかくこうした改変が「誤差」(「ラグナクリムゾン」はこの「誤差」の扱いが物凄くシビア)の許容範囲を軽く超えてきて, アクセルと同時にブレーキを踏むようなチグハグさと気持ち悪さで, 観ていて頭が痛くなってくるのである(実際, 覚悟していても映画館で「どうしてこうなった」と頭を抱えた). 

 小林大樹は本当にこれに Go(ing) を出したのか? 仮に小林大樹がちゃんとコミットしていたとして, アニメを最大限信頼して, これらの改変をマジメに解釈したとしよう. そうすると, たとえば私が根拠薄弱で漠然と考えている

ラグナのループも初めてではない(初めてにしては色々と都合, 展開が良すぎる)説

の最大の根拠にできる. つまり一種の「NieR」方式で,

『アニメの描写が原作と色々と異なる(特に原作の「空白の日程」を埋めてしまっている!!)のは, 原作の「ラグナクリムゾン」とアニメ「ラグナクリムゾン」は別の世界線(ループ)の物語である描写をしている』

という一種メタ的な(壮大な)叙述トリックと解釈して, その差異の読み解きから,

『どちらが``より後''の世界線(ループ)なのか(より強くメタ的に世界や『神』の正体)を読み解く』

ことがアニメ「ラグナクリムゾン」の存在意義ということになる. 

 仮にそのような「設計思想」に基づいた上で, アニメ「ラグナクリムゾン」がこのように作られているのならばよい. また「NieR」がそうであるように各種のコラボ, メディアミックス的展開をする上でも, この「設計思想」は理(利)に適っていよう. しかし, 実際にはその可能性は極めて低いと思われる. というのも, 原作ガチ勢の layer に対してだけではなく, 初見勢が観ても意味不明になってしまう謎改変がされているからである.

 一応, 制作側がそのような改変をした合理的な理由というのも, ある程度は推察できる. たとえば

『マンガの話数的なテンポとアニメのテンポとの「齟齬」の解消』

といった事情である(「だからあのセリフは, 原作と違って, 先にあの場面に持ってきたのね」等). それはわかる. だがこれがまた, プロの仕事とは思えない程にお粗末でまるでセンスがない. これは私個人の主観, 感性の問題ではなく,

『「齟齬」を解消するために, より大きな齟齬(これが酷くなると「キングクリムゾン(「ラグナクリムゾン」の文脈で使うと何か不思議な感じ!)」)を生じさせてしまっている』

のである(なら多少の齟齬が生じても原作のまま忠実にした方が遥かにマシ). 監督か, 脚本家かは知らないが, コレ恐らく, 漫画原作ではなく, (ゴミ)ラノベ原作をアニメ化する意識, メソッドでアニメ化したのではないか(その意味でも「設計思想」が根本的に間違っている). 正直, それが原因としか思えない. 

 あともう一つ, というかこちらの要因があるいは致命的な気がするが

『「設計思想」云々以前に, 今の SILVER LINK. が単純にヤバい』

ということである. 既に昨年あたりから

「諸々のスケジュールがヤバイ」

というのは, 巷間伝わっていたし, 「ラグナクリムゾン」だって 4 月の時点で

「2023年放送予定(確定じゃない!! つまり4月の段階で放送日程が2024年にもつれる可能性があった!)」

という惨状だったのだ. 実際, アニメ1話, OP の時点で

・諸々使い回し(ループの演出の割にはいささかくどすぎる)
・原作にあるちょっとした何でもないシーンでも動かさない(何なら原作よりも動いていない!!)


等々の露骨なまでの作画コストカットが, そこかしこに見えてしまっている. 無論, 時間的, 資金的, 人員的等の諸々の現実的なリソースの制約もあるので, それを否定するわけではないが, 視聴者にそれが悟られる(バレないようにできない)ようでは, 「一級の商品」とはとても呼べない.

 たとえば OP (アレ未完成だよね? アレで完成版と言われたらセンスと正気を疑うが)も, 本来ならばクリムゾン様に出会うまでは OP 無しに行くべきだろうが, 恐らく OP 無しには初回 1 時間枠を埋めることができなかったのだろう. 「空白の日程」を埋めてしまった(先程「ドリフターズ」ではないが, コレ後に原作で何かの重要イベントが回収される可能性もあるので, ちゃんと原作準拠で空けておくべきなのだが, この制作陣はそういうことが全く理解できて無さそう)のも, 一種の水増し(ラグナの悪夢と修行描写で尺を稼ぐ)である.

 ともかくせっかくの初回 1 時間作戦が, 作品に対しての advantage にならず, 既に「水増し」を連発してなんとか埋めているような惨状で, 内容的に頭が痛くなる(抱える)のと同時に, 目を覆いたくなった(見ちゃおれん). この傾向は今後ますます酷くなっていくだろう. 到底, この秋の「10年に一度」の大激戦で勝ち残れるはずもない(というより既にレースになっていない). 

 他方, この水増しテンポでは到底 2 クールで翼の血族は滅ぼせないので, 「9秒の死闘」あたりまでやって,

『最終決戦は「プリズマ☆イリヤ」方式で劇場版にする』

構想なのかもしれないが, それでも多分「キングクリムゾン」がかなり入ってしまうことは避けられないと思われる. 最悪の場合, それまで SILVER LINK. がもつのかさえ, 私は不安に感じる.

3. 最後に

 SILVER LINK., 「平凡なる非凡」を完璧に描いてみせた, あの至高の「のんのんびより」を作った, あの SILVER LINK. が, 今やこの惨状(あの「ラグナクリムゾン」をこんな形で spoil してしまっているようでは, もうどうしようもない). キャスト挨拶で無駄に(彼ら, 彼女らの名誉のために念のため申し添えるが, 別に彼らが悪いわけではない)盛り上がっている壇上を尻目に, 私はただなんとも言えないかなしい心境と面持ち(無反応)になり, 劇場を後に帰宅することになった. 

 「覚悟」はしていたとはいえ, 「ラグナクリムゾン」と SILVER LINK. にまで, こんな形で失望することになるとは, 流石に残念である. ここまでアニメ業界に裏切られ続けてしまうと

「もういい加減, 卒業するべきなのかな?」

とも思う. 

 そういうわけで私はアニメ「ラグナクリムゾン」は今後一切観ないし, 文字通り今回の note を最後に, 何も語らない. 制作陣はせいぜい好きに作って(spoil して), それで盛り上がりたい人達だけで勝手に盛り上がればよい. 私はそれらの事象を一切関知しないし, 関りも持たず, これまで通りに「ラグナクリムゾン」を読んでいくだけである.

 そうこうしているうちに, 13年ぶりに「君に届け」の3期が作られるというニュースが飛び込んできた. アレのアニメ1期は14年前の2009年, 続く第2期は2011年だったそうだが, それと同じスケジュールだったのが, 

「聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話」

である(アレもOVAだったな). まぁ, その3期を永遠に待ちながら(「ロスキャン」の3期にまで裏切られたら, 俺はもう生涯新作アニメは観ない), 某「HELLSING」の如く, ちゃんとした

「ラグナクリムゾン(OVA)」

が, 10年後くらいに作られることを切に願います. 

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