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古着をリユースして1点物の創作ファッションを楽しむ、初台生活学校のガールズトーク。

【ゲスト】
小竹 嘉子さん・中筋 桂子さん(初台生活学校)

【聞き手】
嵯峨 生馬(「渋谷のワイド」火曜日総合司会)

―― ここからは渋谷のいろいろな町で活動をしている団体の皆様にお越しいただくという時間です。
今日は、初台の生活学校からお越しいただきました、おふたりにお話をおうかがいしたいと思っております。早速ですが、自己紹介からお願いします。

中筋さん)皆さんこんにちは。私は代々木に住んでいます中筋桂子といいます。生活学校へ入って30年ぐらい、環境問題について活動しております。よろしくお願いいたします。

小竹さん)私は初台に住んでおります小竹嘉子と申します。私も中筋さんと同じように生活学校で活動させていただいております。よろしくお願いします。

―― 今日は初台の生活学校のお話、それから、着物をリサイクル、リユースして作った洋服のファッションショー、こういったことについてのお話を聞かせていただきます。

まずは、生活学校について簡単にご紹介ください。

中筋さん)生活学校というのは、渋谷区の女性団体4団体の中のひとつです。50年以上の歴史を持つ会で、環境問題を中心に学習を続けております。

環境問題を学習している中で、普段は大気汚染の測定、それから浮遊微粒子(工事、工場、自動車などからの粉塵、煤塵など)の測定など、そういうことをしています。

何がきっかけになったかといいますと、温暖化の時代が来たときに、資源を大切にしようという活動がありました。そこから渋谷区でもリサイクルを取り上げるようになりまして、3R(Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル))をやろうということで、リサイクルバザーをするようになって、出品の中で和服が多くなりました。そこから、私たちのファッションショーにつながっていったのではないかなと思っております。

―― 生活学校は、主に環境問題をテーマとした活動をしているというふうにとらえてよろしいですか。

小竹さん)そうですね。あと身近な問題を取り上げて解決しようという団体なんですけど、初台では、ひとり暮らしの方のお食事会もやっております。その他、いろんな課題を見つけて学習しております。

―― 女性団体のひとつということですが、参加者は、みなさん女性ですか。生活学校には男性はいらっしゃらないんですか。

中筋さん)お食事会の中には若干男性が入っていただいています。一応女性団体というものですから、あんまり大きくは取り上げていませんが。

―― 50年の歴史があるということですが、50年前から環境の問題に取り組んでたというのは、かなり先を進んだ活動なんじゃないかと思いますけれども。

中筋さん)身近な生活の中で、ちょっと先取りをした学習をしていくというのが目標になっています。大気汚染問題などはパネルを区民フェスティバルの時に外部の方が期待されて、よく見学に来られます。渋谷はどんなに空気が悪いのか心配されて来られる方が多いです。

―― 大気汚染の測定をされてらっしゃるということですが、何か機材をお持ちなんですか。

中筋さん)細かい測定の薬がありまして、24時間、道路に貼って、それを試薬で調べてpHを出して、一覧表を作ります。東京都全体で6月と12月の年に2度測定してます。

―― 何年ぐらい連続でやっていますか。

中筋さん)150ヵ所から200ヵ所ぐらいを、二酸化窒素測定を38年間続けています。

―― 渋谷は、大気汚染というか空気は良くなってるんですか?

中筋さん)昔はワースト5に入っていたんですが、最近はだんだんと都市開発が進み、地下高速道路が開通したり、東京に青空を取り戻そうという目標で、以前に石原都知事がディーゼル車を規制したことから、ずいぶんきれいになりました。

まだ、大原交差点などはワースト5に入っています。

―― ワーストというのは、東京都内ですか? 全国ですか?

中筋さん)東京都です。

―― 中筋さんや小竹さんが生活学校にかかわられるようになったのはいつ頃からなんですか。

小竹さん)昭和の時代です。昭和50年ぐらいですから、もう40年ぐらい前ですね。

―― 最初に関わるきっかけというのは、なんだったんですか。

小竹さん)それは、食品添加物などの環境問題ですね。

生活学校では、そういった食品添加物や洗剤の問題を取り上げて、勉強をしていたんですね。

私は、こどもがまだ小さかったものですから、添加物のないおやつを食べさせなくちゃいけないということから、おやつづくりとか、そういうことを一緒に学習しようと。

そのときの会長さんが、食品添加物に詳しい方で、ジュースの中にどういうものが入っているか、色が付いているか、それをいろいろ実験して見せてくれたんです。

グループで集まっているうちに、生活学校に入れていただきました。

それから、あの頃は電池やごみの問題もありました。

中筋さん)私は、小竹さんから誘われまして、生活学校というのがよくわからないまま入ったんですけど。今は、どっぷり浸かりすぎて、卒業が出来ないです(笑)。

―― 確かに40年間いて、なかなか卒業できない学校ですね。

中筋さん)卒業のない学校です。

―― なるほど。食品添加物の実験や、大気汚染の調査、しかも大気汚染の調査は、渋谷区中に設置して調べていらっしゃるという。かなり力を入れていらっしゃいますね。

小竹さん)約10年ごとに冊子が1冊ずつ出るんですが、現在3冊目になります。

―― 今、生活学校に入られてる方は、どれぐらいいらっしゃるんでしょうか。

中筋さん)渋谷区全体で200名弱です。ちょっと減りましたけどね。多いときは300人近くいらしたんですけれども、今だんだんと高齢化になってきて、気持ちがあっても体がいうことを聞かないという方が多くなってきて、減りつつあって、困っているところです。

若い人には振り向いてもらえなくて。

―― 若い人に振り向いてもらいたい?

小竹さん)今、取り組んでいるのは食品ロスをなくそうということなんです。去年の7月から今年の3月まで、食品調査を書かされたんですね、毎月1日に。それは、古い方たちは熱心に書いてくださるんですけども、やっぱり若い人は、長期に渡った調査への協力度がちょっと薄くなっている気がしました。

―― 例えばその調査では、どんなことをやるんですか。

中筋さん)私たちは、食べ残した食品を再利用して作って、また食べたりしますけど、若い人は1回食べたからもういいとか、賞味期限が切れたら、もう死んじゃうとか思って捨ててしまう。私たちは、まだこれは味が落ちただけで死ぬことはないからと食べます。
その点でちょっと差が出るような感じがします。

―― 記録することで、自覚しなきゃいけないということですね。

小竹さん)若い人は、記録が面倒くさいっていうのありますよね。若い人たちが記録しやすいように、どうしたらいいのかが一つの課題ですね。

中筋さん)そうした時に全部書けというのではなくて、毎月1日だけって決まっていたんですけど。その日だけ、と思ってやったんですけれども、私の思いと若い世代が一致しなかったんですね。

―― これは何か打開の方策というか、どうやっていったら受け入れられるのかを考えていけるといいのかなと思います。

そして、今日のメイントピックのお召し物についてなんですが、ラジオなのでお姿を見ていただけないのが残念です。

中筋さん)私の場合はファッションショーで使ったものなんですけど。

表地が母親が着ていたお使い着で、裏のほうが自分の子供時代にお稽古事で茶やお琴をやってたもんですから、それに着て行った着物です。捨てるのが忍びなくて、作りました。

―― 子ども時代のものですか。昔のものと言っては失礼ですが、そのころのものが今でもそうやって使えるということなんですよね。

中筋さん)日本の絹はいい絹ですから。

小竹さん)絹は、冬はあったかいし、夏は涼しいんですね。それなので洋服にしても最高なんですけどね。だから、着られなくなったというか、派手になったものは全部洋服にしちゃえば、ちょっと派手でも着られます。

―― つまり、着物ですと着付けが出来ないと着られない。それをこういう形でデザインし直して、洋服としてはおったり、着たりできる。気軽に着られるようにするのが狙いなのでしょうか

小竹さん)そういうことですね。

中筋さん)使い方によればね、20代で着た着物でも、パッチワークみたいにはさみながら使えば、どんな表現でも出来るので使えると思います。

―― こういう洋服を作る作業は、どういうふうに進められるんですか。着物はご自分の家から持ってこられるのでしょうか。

小竹さん)ファッションショーを見た方が、要らなくなった着物があるんだけど貰ってほしいとおっしゃって、持って来てくださるんです。だから、材料には困らないんですけれども、作るのに、まずほどかなきゃいけない。

中筋さん)着物の形を布にしなきゃいけない。縫ったところをほどかなきゃいけない。

小竹さん)表地と裏地を別々に、全部バラバラにしてほどいて、それを洗濯機で洗う。

洗うと縮むものは縮みますね。でも、一度縮めば、それを洋服にしても、その洋服を洗濯機で洗ったときにそのままの状態でいられるわけですね。

―― ほどいて、洗って、そこでまず素材を作る。

素材は皆さんで集めたものを持ち寄って、「私はこれがいい」とか選ばれたりするんですか。

小竹さん)そういう場合もあるんですけれども。

一応、ほどくのはひとりの方が献身的にほどいてくださるんですね。その方がもう何十年前からほどいてくださっています。ちゃんとまとめて着物1個ずつに包むようにして、この表にこの裏がついていたとわかるように結んで、それを段ボールに入れてくださるんですね。だからもう数えたら何枚ほどいていただいたか。千枚単位じゃないかもしれないですね。

中筋さん)すごい枚数なんですよね。彼女は自分に、1日に一枚はほどくというノルマを課していて、ほどいてからじゃないと寝ないといって、一生懸命ほどいてくださって。

たまると小竹さんのところに送ってきてくれます。私たちも助かっています。

小竹さん)ほどいてもらわないと、品物にならないから。

縫い目を切っちゃうと生地が小さくなっちゃうからダメなんですよね。だからほどくっていうのが、まずもう難関ですよね。

それを全てやってくださるので、私たちは、その方がいなかったらもうできないです。

中筋さん)新しい着物ですとね、ほどくのも糸をきゅっと引っ張ると、すっと抜けるんですけど。
皆さんにいただくのは、いいものなんですけど古いんですよ。おじいさまやおばあさまのタンスに眠っていた着物などは、きしんじゃって絹糸が動かないです。
だから、ほどくの大変だろうな、といつも思いながらお願いしちゃっているんですけれども。

小竹さん)ハンガーにかけて日に当てて、1日か2日置いておいてから、ほどくみたいです。

―― そういうノウハウがあるんですね。

中筋さん)そうなんです。下準備の人が大変ですね。

―― そういった苦労をしてほどいてもらった布が出来てきます。これが、これまでの累計でも1000枚単位あって、それをもとにお洋服を作っていかれるわけですが、今日おふたりがお召しになっている洋服も、全く違うデザインですし、こういう服を作りたいというのは、着る人それぞれが考えるんですか。

小竹さん)それはですね、もう中筋さんが・・・。私たちは“デザイナー”と申し上げておりますけど(笑)、勝手にデザインを考えてくれて、作っていただくのですけど。

中筋さん)一回のファッションショーで40から50種類を目安にお洋服を作るんですね。でも、モデルさんというのが私の仲間だもんですから、普通の体型じゃないんですね。
普通のモデルさんは細くて背が高いから、何でも着れるんですけど、うちのほうのモデルさんは丸くて低いから、なかなかその形を決めるのも難しいし。
そこのところが苦労なんです。ややこしいんですね。

小竹さん)だから自分に合うものを縫おうと思うときは、これは私のを作ると決めて考えます。
中筋さんのデザインに合わせるように裁ってくれる人はいるんですけど、現在は裁ってくれる人は2人ぐらいしかいないんですね。
だからあとはもう私がほどほどに裁って、これを縫ってもらおうと思ってパッチワークを入れたりなど考えて、お願いするんですけど。

縫う人が少ないので、今困ってますね。
ファッションショーの前になると、みんなで集まって一生懸命縫うんです。楽しんでやってますからいいんですけれども。

中筋さん)自分の着物を壊してもいいという方は、自分で好きに作っていただいて、ファッションショーに参加していただいているんですけど、なかなか自立してやっていていただけるという方が少ないものですから。

こういう仕事をやっていたという人を引っ張ってきて、協力していただいています。

―― うかがっていると、分業化が進んでいるというか、それぞれご自分の持ち場を持って取り組んでるようですね。中筋さんはデザイナーだったんですか。

中筋さん)ど素人がやっているだけです。
勝手にやってるっていうのも変な言い方ですが、ちょっと他のほうのデザインをかじったものですから。
それを利用しながら、色合わせだとか、これならいいかなっていうのが少し見極められるのでやっているんですけど。いただくものが、みんなお年寄りのお着物ですから、よくいえば渋いものばっかりでね(笑)。
渋いものと渋いものをどうやったらより良くなるかなっていうのが、結構苦しいところですね。

―― 洋服のデザイナーの方は、どういう素材を選ぶかというところからスタートしますけれど。中筋さんたちは、あるものから始める。

中筋さん)私たちは、奇抜なものを作って、びっくりして喜ぶのではなくて、普段、こうやって利用して使えるものが、リサイクルだと思っています。
あんまり奇抜なものは作らず、普通に着られるものを考えるんですけど、ショーとしては面白くないなということで、ひとつかふたつは、とんでもない物を作ったりしますね。

―― どんな、とんでもないものを作られるんですか?

小竹さん)今年のはですね、カバンにつけるすごい大きいファスナーがあったんですね。それを背中につけてくれって言われたんですよ。つけるのがすごい大変だったんですけど。そこを開けたら、何か飛び出て欲しいっていうんですね。だから羽織の裏かなんかの般若のお面みたいなの出てくればいいのかなと思ったんですけども。そういうのがなかったんです。

それで何か飛び出すものを考えたら、今年は申年だから、バッグについてたお猿があってですね。それが3つ、背中のファスナー開けると飛び出るんですね。
前は身頃のボタンは最初はとまらないわけです。それで「窮屈そうだからどうしましょう」っていうセリフがあって、ファスナーを“がっ”と開けるとそこから猿が飛んで出てくるという・・・。(笑)

中筋さん)あと、ヨーヨーキルトってご存知かどうかわかりませんが、そういう花を作って、結婚式のドレスを作って、それを全部ドレスにつけて、クイズをしました。
参加者の方にドレスについている花の数を当ててもらって、当たった方には布で作った渋谷の花、ハナショウブを贈呈しました。

―― 中筋さんはデザイナーで、縫ったり作ったりは小竹さんたちがされるんですか。

中筋さん)下手だけれども、私も縫おうと思えば縫えるんです。
かつて私の親はそういう仕事をしていたんですね。だけど私が下手で、こどもの時、一生懸命縫ったものを、朝起きてみると、下手で汚いって、親にほどかれちゃっていて、やる気をなくしたんです。
親の子育てが間違ってたんじゃないかしらね(笑)。
もしそれがなかったらそっちの方に進んでたかもしれません。

―― しかしながら、中筋さんのこの奇抜なアイデアというか、非常にユニークなアイデアがあって、それを小竹さんが受けて、どうしようって悩まれるわけですね。

小竹さん)悩んで、「そんなのできない」って言うんですけど、やっぱり何とかしなきゃと思って、例えば、地味なところに派手な赤い柄のものとかをはめ込んで、パッチワークにすると、また、「こうじゃなくてこうしたい」とかって言うんです。
でも、ある程度は妥協していただいて素晴らしいものができるんです。

―― すごい真剣勝負ですね。

小竹さん)そうですね。大変なんですよ。

中筋さん)でも意外と喧嘩はしないですよね。言い合いはしますけどね。こうじゃないでしょ、こうでしょ! とかは、やってますけどね。

―― ファッションショーは、いつごろから始めたんですか。

小竹さん)ファッションショーを始めたのは平成4年の『消費生活展』からです。その前からリフォームはしていたんですけれども。

その時には商工会館の館長さんにカツラをかぶっていただいて。それから毎年やっていまして、渋谷の代々木公園の舞台でも2回くらい。都庁の舞台でもやりましたし、女性センター・アイリスでも。そのほかは商工会館でやってますね。

―― 今年の開催はいつでしょう。

小竹さん)今年は1月の30日にやりましたから、来年もまた1月の末ぐらいですね。
実は今年のファッションショーの時に茨城の県連の会長さんがおいでになって、その方がうちでもやりたいからっておっしゃって、9月の26日に生活学校の関ブロ(関東ブロック)研修の中でファッションショーをするということで、東京として参加させていただくことになっています。その日に、洋服を着るなり、持って行くなりしていかなくちゃいけないんです。
いつもは、秋になってから縫い始めるんですけど、今年は早めにしなくちゃって心は決めてるんですけど。

―― だいぶ早まりますね。

小竹さん)そうですね。ただ中筋さんは同じものを作りたくないっていうので、また違うものを作らなくちゃならないんです。

中筋さん)私たちも、使ったものが残ってるとあれがあるからいいじゃないって怠っちゃうんですね。それが嫌ですから。
資金も欲しいところがありまして、もしお気に召した人があったら、内覧会と称してそこで作った作品を売らせていただいてます。そして売ったお金を、材料費や付属品などを買う資金に充てさせていただいて、巡回をやっております。
作品がないと、どうしても作らなきゃいけないので必死で作る。また次、そういうパターンで繰り返しています。

―― 1月の洋服を使って9月に行かれればいいのかなと思ったんですけども、それは売ってなくなってしまったんですね。

中筋さん)処分しました。ないと、どうしても作らないといけない。必死にならざるを得ない。

―― 自分たちを追い込んで。

小竹さん)それが中筋さんのテなんですよ。私たちは困るんですけど(笑)。

中筋さん)あれば、つい、ちょっとだけ使っちゃおうという気持ちになるので、自分たちもやるからには真剣勝負でやらなきゃいけないと思ってますから。

―― 作品は、おいくらぐらいで売られてるんですか。

小竹さん)安いんですよ。1000円、1500円、2000円とか。

中筋さん)皆さんの年金で買えるくらいです。

小竹さん)合う合わないもあるし、大きさもあるし。

中筋さん)だから細い方は無理ですね、うちの作品みんな太い人用だから。

小竹さん)太い人にも入らなくて、その場で破って上から着てもらったり。前がとまらなくて、開けっ放しのデザインにしようとか、急遽変えたりもしました。

―― もう全部一点ものですものね。
このサイズ、この形しかないから、自分の体に合うものがどれかって探すんですね。

中筋さん)Aさんを計って作るわけじゃなくて、オールマイティに作ってますから、これなら誰が入るかな、これなら誰かなっていう形でやるんですけど、皆さん素人ですけど、ショーになると上手に、私たちが思うよりも近代的に着ていただいています。
その代わりに破かれたり、ほどかれたりしたりして、びっくりすることもありませすけどね。

小竹さん)それがまた、この人にこれを着てもらおうっていうのがぴったり合うんですよ。色といい、そこは私は不思議なんですけど。

中筋さん)縫っている時に、洋服にあだ名をつけたりするんです。彼女が着ているこの洋服は『金魚』っていうんです。

それで、着てもらう人たちにも『コロコログループ』とか名前をつけるの。『コロコログループ』というと、誰と誰と誰だなって名前が浮かんでくるんです。それでね『XL』とか、いろんな名前をつけて、グループを作っておいて、あの人たちのグループはこれがいいわねとか、洋服を分けて作るんです。そうしないと全体のサイズが分かんなくなっちゃうんです。

―― 小竹さんが金魚に見えてきました。ピンク色をしていてですね、スカートがちょっとひらひらしていますね。

中筋さん)ここがクレープになっていて、ひらひらがついていて。
彼女はあまりズボンをはかなくて、スカート大好き人間なんですが、生活学校のモデルさんたちはスカート嫌いな方が多いんです。下がズボンの人が多いので、スーツか上着だけになっちゃうんですけど。

―― 中筋さんのお召しの・・・これはなんていうんですか?

中筋さん)自分でデザインしたから、全体にフリルが付いて、凝っているんですよ。

小竹さん)ここが三角になってるのは、ザウルスと言う名前なんです。

中筋さん)怪獣は背中が三角になってますでしょ。

小竹さんのスカートにもザウルスがついています。

小竹さん)皆さんが着た洋服の残りを全部三角にして、8枚はぎのスカートの間に全部はさんだんです。そうすると反物が何点使ったかわかるのです。

中筋さん)なんか変なとこに凝って楽しんでいます。

―― なんかひとつひとつに楽しみを見出していますね。

中筋さん)どうせやるなら楽しくやらなきゃ面白くないですし。

―― こうやってファッションショーをされて、渋谷以外のところに出張ファッションショーをやって。そういった形で、外から声かかることもあるんですか?

小竹さん)そうですね。いつだかはアイリスの集いでやってほしいって言われて、今、ダイバーシティーセンター・アイリスで、やらせていただいたことがありますね。

―― 毎回のファッションショーで40〜50着を作られるということですが、縫い手は何人ぐらいでやってらっしゃるんですか。

小竹さん)中筋さんがこのデザインと言って、それと同じデザインにして、裁って、縫ってくださる方が今、3人ぐらいしかないんです。生活学校に所属していない方もいらっしゃるんですけども。
始末する人や、まつる人、ミシンをかける人はまた何人かいますが、そんなに大勢じゃないんです。
あと最後にまつったりするのは、もちろん中筋さんもやってくれますが。
まつったり、ボタン付専門という人もいるんですよね。
この服のボタンもこれも、種類が全部違うんですよ。サンプルをいただいたので、それを全部使っています。同じに見えるけど、全部違うんです。

―― 素敵ですね。

小竹さん)ボタンのリサイクルです。

中筋さん)また彼女がいろんなものを集めて来るのが上手なんですよ。

小竹さん)集まって来るんですね(笑)。

―― 集めてくるんじゃなく、集まってくる。

小竹さん)ですから、ボタンつけ専門の人には、コートや上着やベストなど、ボタンを選んでもらって、付けてと言ってやってもらう。

楽しんでやるには、大勢の人を巻き込まないといけませんから。

中筋さん)生活学校の仲間で、都生連(東京都生活学校連絡協議会)の中で交流ができたりもします。
日野に回転市場というところがあって、そこで和服を売っているんです。そちらも消化しきれなくて、「消化するところがないのでいりませんか」っていう声をかけていただいて、着物をいただき、そちらも消化させていただいてます。
みなさんに協力していただいて助かっているところもあるんです。

―― 縫ったりミシンをかけたりする作業というのは、それぞれご自宅でやるんですか? それとも皆さんで集まって、共同作業でわいわいやるんでしょうか?

小竹さん)個人で縫って来てくださる方も何かいるんですけど。
もう追い込みになったら、うちにみんな集まってもらって。
袖付け専門という方もいるんです。

中筋さん)自分で縫うのが不可能な方もいらっしゃるんですが、ここからここを縫ってと指示すると、ずっと縫ってくれて、そうやって協力してくださる方もあるし、まつるのだけが得意という人は、夜来て、一生懸命まつって帰る方もいます。
なにしろ前に進まないと仕事が終わらない。
だれかしらが彼女のお宅へ行ってずっと作業してます。

何もしない方は、何もしないからといって、食事を届けてくれたり、かたづけてくれたり。
そうやって皆さんに協力をいただいて、ネットワークは、かなりうまくやってます。

だいぶ前ですが、明日ショーが始まるっていうとき、みんな夜10時になったら帰っちゃったんです。一番うるさい方の衣装ができてなくて、結局は私が朝4時までかかってやって、朝になって帰ったら、もう出発する時間だった。

そういう時もあるのに、あなたは何もしないから楽ねって言われるの。冗談じゃない。最後の始末は私だそ、と言ってやっていました(笑)。

―― 朝4時までって、すごいですね。

小竹さん)昔ですよ、20年ぐらい前かな。あれは大変でしたね。

―― こういう活動をされてらっしゃると、ご家族の方はどういうふうに言われますか。

「忙しそうだね」「もっとゆっくりしてていいんですよ」なんて言われたりしないですか。

小竹さん)昔からみんな、お互いに協力的だから。

中筋さん)私たちは“奥様”じゃなくて“お外様”っていう名前がついてるくらいです。

―― 奥様じゃなくて、お外様(笑)。

中筋さん)お外にばかりいるから、お外様。私は“歌を忘れたカナリヤ”じゃなくて、“家を忘れた主婦”になっている。そんなこと言って家に帰って来ません。だから夫も独身で暮らしてるのかなと思っているんじゃないかな。

小竹さん)それはかなり協力がないとできませんね。他の仕事でもそうですけどね。

中筋さん)みんな、ご主人様には迷惑かけているんじゃないかしらね。ホットケ様みたいになっちゃってるから。
でも私は後ろ指さされないために、3食は作って出てくるんです。
そして、後は知〜らない、あとはお互いに自立しましょう、という感じで、自立した暮らしをしてます。

―― 仲間が何よりですね。

中筋さん)小竹さんのお宅が、わりと出入り自由に、開放的になってるもんですから、それをいいことに溜まり場みたいなってまして、なにか用ある人が、入れ替わり立ち代わり出入りしています。

昨日も、なにも約束してないのに、気がついたら4人か5人集まっていて。
そういう居場所があるんで、人も集まりやすいし、作業もしやすいんじゃないかなと思ってます。
そういうところがあるおかげで私も助かっていますけど。

小竹さん)民生委員を40年近くやらせていただいたので、隣近所と仲良くするというか、女性団体の方も集まるんですね。

―― ここまでファッションショーや環境の活動をおうかがいしたんですけど、最近は高齢者のサポートもやってらっしゃる。
そういった最近の動きや、これからの活動などもおうかがいできれば。

小竹さん)ファッションショーに関しては、これからは1ヶ月に2回ぐらいね、うちで日を決めて集まっていただいて、サロン形式でやりたいと思ってるんですね。それで、これからは自分のものを自分で作ってもらう、をモットーにしてやりたいです。

あとは人間関係ですね。
今、防災のことが問題になってますけども、近所付き合いを良くして、隣は何をする人ぞ・・・じゃなくて、やっぱり仲良くしていかなきゃいけないというのが生活学校のモットーですから。『持続可能な社会をつくる』というので、いつもネジまかれてますから、そういうふうにしていきたいと思っています。

お食事会のほうも、初台の生活学校は、若い方・・・若いっていっても20代30代の方はいらしていただけませんけれども、食事を作る、お料理をするということで、次々と新しいに仲間に入って来ていただいてるんです。

子育てしてる方は、子どものことで忙しいから、いつもというわけにはいかないんですけど、ともかく、少しでも若い方にあとをやっていただきたいと思ってます。

リサイクルバザーもあります。リサイクルバザーも、初台会場で40店舗、募集するんですけども。
それは女性団体主催で、生活学校も加わっていますけど、地域の方も入れて、楽しんでやりたいと思ってます。

中筋さん)団体ひとつだけっていうのはなかなか難しくなったんで、団体だけでなく個人の方にも声かけて、ジョイントみたいな形でやっていかなければ、やりにくくなってくるのかなというふうに考えてます。

―― 先ほど、食事会などは若い人も入ってきているという話があったんですが、食事会というのはどんなことをやる会なんですか。

小竹さん)初台の出張所の上に青年館があって、そこが料理もできるようになってるんです。

そこで、一人暮らしの高齢者のお食事会というのを月に1回、もう30年近くやっています。民生委員で、一人暮らしの調査をした時に、ぜひやりましょうよっということで渋谷区で3番目に始めました。
初台地区の初台1~2丁目と本町1丁目、代々木3、4、5丁目の人たちの中で、一人暮らしの方に来ていただいて、楽しんで会食しています。

―― お食事はみなさんで手づくりされるんですか。食事を作るとか、料理がちょっと得意だっていう方は参加できるわけですね。

小竹さん)主婦ですから。

中筋さん)主婦の延長線上で、得意・得意じゃないというよりは、1ヶ月前にメニューを決めて、それを当日のメンバーで作ります。それも買い物や調理、役割分担が決まってまして、クルーでやってます。

―― 本当に運営がしっかりされてますよね。いろいろ役割がはっきりしている。新しい方たちは、どうやって来られるんですか。お友達を口コミで誘ったりですか。

小竹さん)ほかの団体でちょっと興味ありそうだなっていう方と、普段お会いして話をしてるうちに「いかが?」と感じで誘います。知らない間に入ってたという人もいます。

中筋さん)「ちょっと来ない?」っていって何回かやってるうちに、お友達ができたり、居心地がよかったりすると、ずっと続けていただけるんで、生活学校にも誘っちゃってます。そんな形で少しずつですけど、世代交代しているような気がします。

小竹さん)中筋さんは、ボランティアをやってるせせらぎ(渋谷区ケアコミュニティ・せせらぎ)のラウンジの責任者なんです。そこにボランティアで来る方の中でも、料理の好きな方がいらっしゃるから、そういう方をちょっと誘います。

―― 中筋さんや小竹さんの出会った方で、ちょっとこの人はいいかな、という人にどんどん声をかけて、参加をされてるんですね。
 参加されるなかでも、最初の一歩目として入りやすい活動がいくつかあると思うんですけれど、生活学校に最初にかかわるとしたら、どういう活動がいいでしょう。そういう食事会に来てもらうのが一番いいんですか? お裁縫とかできる方は、ファッションショーの活動に入るのがいいんでしょうか。

小竹さん)作るのが好きな人、ファッションショーの場合も縫い物が好きな人とか、何かを作るのが好きという人は、もう誰でも来ていただきたいなと思ってますね。

中筋さん)食べ物を作ったりすることに興味のある人っていらっしゃるじゃないですか。そういう人に、こういうことやってるからちょっと来て、見てないでやってみて、と。やってみて、また楽しかったらまた次の月。なん日にやるから顔出してねって言えば、時間さえあれば顔を出してもらえるんです。

そんなことからもっと広がればいいとは思ってますけど、なかなか思うようにはいきません。

―― すごく楽しそうな活動そうですよね。おふたりとお話ししているだけで、こちらも楽しくなりますよね。

小竹さん)楽しい、より・・・忙しい、ですね(笑)。

―― そういうところに、若い世代が1人だけポツンと入るのは、入りにくいかもしれないので、何人か友達同士で生活学校を体験できたりしたらいいですね。

中筋さん)夏に『夏ボラ』というボランティア活動があるんです。

そのときは高校生もいらっしゃるので、こういうことしましょうって、お声かけをしています。

―― そういう入り口が結構あって、実際に行ったら、小竹さんと中筋さんのおふたり・・・そして、その周りにいらっしゃるみなさんのガールズトークのような雰囲気を見れば、自分もかかわりたいなと思う人がいるんじゃないかなと思います。

この魅力がうまく伝わって、新しくいろんな人に入っていただければと思います。

中筋さん・小竹さん)よろしくお願いします。

―― 今日は、ありがとうございました。

この番組の放送内容はこちらからお聴きいただけます

【テキストライター】加藤レイコさん

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