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よもぎに蒸されて温まる

かねてより体験してみたかったよもぎ蒸しが、向こうから来た。

裸になって足首まで長さのある分厚い服を二重に着てフードをかぶり、雛人形か置物のように穴の空いた椅子に座る。すると座面から遺伝子レベルで馴染みがありそうな心地よい香りの蒸気がたちのぼってくるのだ。

はじめにおしりや胸の辺りがじわじわ蒸気の温度と共振するように熱を持つ。時間の半分をすぎた頃にようやく手先や足先が少しずつ温まるのを確認できるようになり、そうかと思えば掛けていた眼鏡が曇り始める。
視界不良になりだすや否や、気づくと首や背中、みぞおちの当たりから汗が吹き出していた。

夏の暑い時にどうしようもなくかきつづけていたべったりと張り付く汗ではなかった。お風呂に浸かっているかのようにすっきりとしていて蒸気か汗かよく分からないが心地いい。

そうするといよいよ、なかなか熱を持たないままでいる膝の皿と肩の先が気になるようになる。
結局温まりきらないまま時間が終わった。

とはいえ、着替えたあとも指先まで温かいのが気持ちが良い。なんでも出来そうな感じがしてくる。そして、普段冷えすぎていたことに気づくしかない。
ここまでいくとよもぎ蒸しの回し者のようだが、正真正銘回し者だろう。

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