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『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀史健)を要約してみた

この本では、著者の古賀史健さんがフリーライターや編集者として培ってきた文章の書き方・向き合い方を、これでもかというくらいに丁寧に教えてくれる内容となっている。
「書く技術を身につけることで、ものの見方や考え方が変わり、世界を見る目が変わる」という考えのもと、講義が展開されていく。本著をこれから読もうと思っている人、また文章を書くことに苦手意識を持っている人に向けて、特に印象に残っていることをまとめていきたい!

(1)書くことは、どうしてこんなにも難しいのだろうか?

著者の指摘で思い出したのは、私たちは、これまで学校で文章の書き方を体系的に教わってこなかったということである。
私自身の小学校時代を振り返ってみても、作文の時間はあったが、確かに書き方をきちんと教わった記憶はない。
 
たいていの場合、先生からは「あなたの思った通りに書きなさい」と言われる。しかし、これがいちばん難しい。何も浮かばない子どもはどうするか。先生から褒められそうな、無難な意見を書き、行儀のよい意見で顔色をうかがう。こうして、いつのまにか作文指導が道徳指導にすりかわっていくというものである。
 
ところで、我が家にも、小学生の子どもが2人いる。
低学年では、毎週末に日記の宿題が出る。これがなかなか書けない。
 
「パパ、日記って何を書けば良いの?」
 
「えーっとね、まずは自分が何をしたのかを書いてみて。それで、そのときに自分が思ったことや感じたことをまとめてみようか」
 
と、説明もしどろもどろである。
 
それでも小学校の先生からは、いつ・どこで・誰が・何をして・どう思ったかを書きましょう、とでも言われているのだろうか。
 
「きょう、かぞくで公園に遊びに行きました。楽しかったです。」
「どようび、おにいちゃんと家の中でにんてんどうスイッチをやりました。楽しかったです。」
 
という具合である…。
 
まずは、大人が文章を書くことに対する苦手意識を拭い去りたい。
そして文章を書くことは楽しいものだ、ということを教えてあげたいものである。
 
その点においては、本著「20歳の自分に受けさせたい文章講義」は、多くの方々に作文の教科書として学んで欲しいとお薦めの1冊となった。
 
本書の構成は以下の通りである。
そして、それぞれの講義の概略と感想を、400文字程度で簡潔にまとめてみたい!

・ガイダンス「その気持ちを翻訳しよう」
・第1講「文章はリズムで決まる」
・第2講「構成は眼で考える」
・第3講「読者の椅子に座る」
・第4講「原稿にハサミを入れる」

本著 目次より

(2)ガイダンス「その気持ちを翻訳しよう」 概要と感想

文章を書くという作業は、頭の中の「ぐるぐる」「もやもや」した思いを、誰にでも伝わる言葉に翻訳することである。
例えば映画を見て、「あー、面白かった」という気持ちになったとする。
この気持ちを、誰にでもイメージできる言葉で翻訳してみる。
どこのシーンで感じたのか、なぜ面白いと思ったのか、それは自分の人生にどのような影響を与えたのか、などを分析していく。
 
このような行程を踏むことによって、自分の気持ちを確認する作業となる。
 
――人は解を得るために書くのだし、解がわからないから書くのである。
 
多くの人が順番を間違えている。

「考えてから書こう」ではなく「考えるために書こう」が正しい。

頭の中にある書きたいことを書く、のではない。
自分の頭の中にある、自分でもぐるぐるしている思いを整理するために書く、という認識で作文するのだという意識を持つことが第一歩である。

(3)第1講「文章はリズムで決まる」 概要と感想

読みやすい文章とそうでない文章の違いは何か。
最も大切なものはリズムである。
そしてリズムとは、ずばり論理展開と接続詞の使い方であるという。
 
自分が書いた文と文の間に使われている(あるいは省略されている)接続詞は適切か、論理展開は正しいか、を意識することでリズムが生まれる。
 
その上で、句読点の内から、改行のタイミング、漢字とひらがなのバランス、断定するところは思いきって言い切る文章を書く、などのテクニックについても教えてもらえる。
 
村上春樹さんのような美しい文章を目指さずとも、あるいは五・七・五のようなリズムを無理に生み出さずとも、意識することは常に論理展開。
このことを肝に銘じておきたい!

(4)第2講「構成は眼で考える」 概要と感想

「起承転結」や「序論・本論・結論」の組み立て方こそが文章の面白さを生む。その際には「カメラワーク=眼」を意識しよう。

自らが映画監督になったような気持ちになって、書きたいことに対して、どのような視点から眺めるのかを考えてみる。

例えば、序論であれば先行研究や事実を客観的に俯瞰してみる、本論は自らの意見を出したいのでカメラワークは最大限主観に近づける、結論では再び客観的な視点に立って論をまとめていく、といった具合である。
 
ヒット曲にもAメロ・Bメロ・サビがあるように、文章においてもカメラワークを意識することで全体のメリハリが生まれ、印象が良くなるということである。
 
この場面は客観的な事実を確認するところ、ここから先は自分の意見を述べるところ、という意識で書きすすめることが読みやすい文章に繋がることを覚えておきたい。

(5)第3講「読者の椅子に座る」 概要と感想

自らが書いた文章を読んでくれる「読者」の気持ちにどこまで寄り添えるか。あなたの「読者」は2人いるという。

1人目は、「10年前の自分自身」である。人間は、どんな時代に置いても同じことを考え、同じことに悩み、同じことで苦しんでいる。自分だけにしかわからない、誰にも理解されるはずがないと思っている根深い問題こそが、実は普遍性を持った悩みなのである。
そしていま、この瞬間にも世界のどこかで「10年前のあなた」が必ず存在している。10年前の悩んでいた自分に向けて、今の自分からアドバイスしてあげることで、同じように悩みを持っている人の心に響くはずである。
 
2人目は、「特定の、あの人」である。
最大公約数を見つけようとして、多くの人から喜ばれようとする文章は、むしろ誰からも喜ばれない文章となりえる。
逆に「たったひとりのあの人」をイメージして文章を届けることで、多くの人に思いを伝えることができる。
 
このように、「誰に向けて書くのか」を明確にすることで、メッセージの伝わり方が断然変わってくることを心掛ける。
 
この他にも第3講では、自分の頭でわかったこと以外は書かない、目からウロコは3割程度にしておく、説得する文章より納得させる文章を目指すこと、などについても参考になった。

(6)第4講「原稿にハサミを入れる」 概要と感想

推敲の方法と考え方についての講義である。
推敲は過去の自分と対話することと心得よ。

「どうして自分はこんなことを書いたのだろう?」「なかなか面白いことを言っているじゃないか」と対話を楽しむ姿勢を持とう。

推敲のときに禁句となるのが「もったいない」である。必要が無い箇所はどんどん削っていく。

気をつけるポイントは以下の通り。
・冗長さを避けてリズムをよくすること。
・不要な言葉をできる限り削っていくこと。
・意味を通りやすくすること。接続詞は正しく使われているだろうか
・自分の文章は図にすることができるか。その際に出来事や感情に矢印を引いて論理が通っているかを確かめる。
 
このように推敲の際には着目するポイントを明確に絞り込むことで、作業効率もあがる。

(7)いい文章とはどのような文章か

本著のあとがきでこのような記述がある。
 
―「いい文章」とは何か。「いい文章」とは「読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章」のことである。読む前と読んだあとで、読者の心が変わり、できれば行動までも変わっていること。それがぼくの考える「いい文章」の条件である。
 
文章によって読者の行動を変えられるか。

私はこの本を読み、学んだことを多くの人に紹介したいとnoteに執筆するという1つの行動を起こした。

これが何よりの証明。この本は間違いなく「いい文章」であり、まずは自分自身が内容を理解したいと思い、筆をとった。

そして、我が家の子ども達にも文章を書くことの楽しさを教えてあげたいとワクワクしている。
 
「パパ、日記って何を書けば良いの?」と聞かれたら、今度はしどろもどろにならない自信が少し、ある。
 






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