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茶道の所作研究会:No.3 - ひしゃくで指が切れると思え

お茶のお湯を入れたり、お水をいれたりするときに登場するひしゃく。
はじめて「ひしゃく」を意識したのは北斗七星の配列を夜空に見た時か、
神社仏閣へのお参りの時か…

近いようで遠いひしゃくの存在。普段の生活で使うことなんて無いけれど
茶道では無くてはならない、このひしゃく、実は深いんです。

素材は竹ですね。
用途は水やお湯を汲む。

ここまでは、シンプル。

しかし、これが茶道の場面になるとたっくさーーんの決まり事が登場するんです。

ひしゃくを動かす時、殆どの場合構える
基本的に、ひしゃくを動かすときは、まるで剣道で「かまえーー」って号令をかけられたときのように、体の前にヒジをはり、姿勢を正して、呼吸と共に構えなくてはなりません。

お点前をする主人が、お点前をする場所に座って、最初にすることが、このひしゃくを出して「かまえーーー!(心の中で)」の、姿勢。
不思議と、気持ちにはケジメがつくのです。

釜のフチにかけ置く時、3種類くらい手の所作を使い分ける
本当にディテールを愛する日本人らしさを感じます。
①普通に置くとき
②お茶を点てるお湯を茶碗にいれたとき
③冷水を注いだ時

ぜーーんぶ扱いが違います。ならい始めたころ、一番苦労したのもこの扱いだったかもしれません。技を習得する感覚に近いです。
特に冷水をいれたときは「引きびしゃく」といい、指先1cm平方以下のスペースを使って、ひしゃくの柄をすべらせて扱います。最後は指を満月のようにまん丸くして釜に置く。そこまで、文字通り指の先から、びしーーっと所作が決められています。そこまで追求されると、もう”気持ちいい”しかありません。集中力もマックスにアガっていきます。

他にも細かい決まりごとはあるのですが、これくらいにしておきましょう。
(筋肉痛でタイプをするのが辛い)

では、もし、こういった所作をおろそかに、
ダラダラっと扱ってしまったらどうなるか?

「指が飛びますよ」とお茶の先生は言うんです。
「ひしゃくは刀と同じです。適当に扱っていると指が切れてふっとんでいきますよ」と脅しをかけてきました。

ひぃ〜物騒な。大げさな!
と、背景を聞くと、その昔、ひしゃくを作ることは、刀や弓矢をつくる職人にしか許されていなかったそう。確かに、②お茶を点てるお湯を茶碗にいれたときの扱いは、指を揃えて親指と人差指の間に柄をおいて釜にかけるのですが、この手…… 弓矢を弾いて矢を放った手のカタチと同じなんです!!

「かまえーー」の部分も、刀といわれると、うなずけます。
時代的にも、その昔お茶をしている人なんて、ほとんどが武士で、茶道と武道は深くつながっていたんだろうと想像します。

わたしは、ひしゃくが、かなり好きです。花形の棗や茶碗もいいけれど、目立たたないのに、いつもそばにいて、ぶれない軸をもっている。しかも清潔感は群を抜いていて、機能美を兼ね備えている。最高じゃないですか。
頭(カップの部分)との絶妙なバランス感覚、その清々しい佇まいには、聖なる空気を感じます。擬人化されたらモテそうです。

ひしゃくについてのわたしの想いをダラダラと書いてしまいました。
次回は筋肉痛について書きたいなと思っています。


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