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露出狂のおじさんの心をへし折ってしまった話

これはむかーしむかし。まだマゾ猫ちゃんが、友達と家に帰ると楽しすぎて帰り道でおしっこを漏らしてはお母さんにぶっとばされてた歳の話。

地域密着型露出狂、通称”レインコートおじさん”

マゾ猫の住んでいる地域には、有名な変質者が3人いた。

一人は握手しておじさん。中学生~高校生くらいの女の子を見つけると、「握手してください!」と言って握手をせがむおじさん。わりと出てくる範囲が市内全体という広域範囲活動型。

二人目は住所教えなさいよおばさん。帰り道に遭遇すると”子供が一人で帰ると危ないから住所を教えなさい!”と追いかけてくるおばさん。手にカルテみたいなものを持っているので、見つけると基本道を変えれば問題ない。これも出没範囲が広いおばさん。

そして三人目。レインコートおじさん。
レインコートおじさんは雨の日にだけ出没する。
雨の日に全裸でちょっと透けてるレインコートを着て走っていて、ハアハア言いながらレインコートの中を曇らせている。このおじさんはなぜか、マゾ猫の住む校区内のみに出没するため、雨の日は基本絶対に人と帰らなければいけなかった。

そんな変質者三傑がいる地域。どう考えてもスラム街である。
今でこそすぐ対処される話なのだろうが、当時は子供の中の怪談のように語り継がれる変質者たちだったようで、全然対処されなかった。
警察は何してたんだ。

マゾ猫は本屋さんに行きたかった。

雨のふったある日の事。
学校から帰って、ふと気が付いた。

今日ちゃおの発売日じゃん!!!!!!!!!!
当時マゾ猫は連載を楽しみにしていた、おおばやしみゆき先生の『モンスターキャンディー』がどうしても読みたかった。
だがしかし、友達は基本習い事や塾で居ない。お母さんが帰ってくる時間は書店の閉店時間後。これは一人で行くしかないと、お小遣いを握りしめて、書店へと足を運んだ。

まったくもって自衛の足りないクソガキである。

遭遇、レインコートおじさん。

ちゃおを買って、ほくほくでリュックに入れて帰っていたマゾ猫。
その足取りは若干スキップが入っていたと思うが、当時スキップができなかったので、崖を登るヤギみたいになっていたと思う。
ディスカバリーチャンネルさん、新種のヤギはこちらです! なんと今なら二足歩行。前足を浮かせて媚びを売ります。

そんな中、マゾ猫が家に帰るために横断歩道を曲がった角の所。

はあ……。はあ……。
レインコートを着たおじさんが、息も絶え絶えで電柱によりかかっていた。
うっすらと見える肌色。
遠目で見たら風俗パネルのナチュラルなモザイクみたいな感じで身体がぼやけている。

――目が合った。
変態と変態は惹かれ合うのか、ゆっくり近づいてくるレインコートおじさん。
まるでポケモンバトルのように、こっちへ来る。
最悪のエンカウント。警察官、君に決めた! と手から即刻、国家公務員を取り出したかった。
ああ、せめて手の中にまきびしでもあればよかったのに。
それかレゴブロック。あれは、踏んだらとてつもなく痛い。日本版ホームアローンが制作されたら間違いなく採用される、家族討伐用おもちゃ型兵器だからな。

恐怖で身動きが取れなくなるマゾ猫。
まさに絶対絶命。
レインコートおじさんは、獲物を狙うハンターの顔で近づいてくる。
さようならおかあさん、おとうさん。次に生まれたら、マゾ猫、サディストのイケメンになってみたいな……。

覚悟を決めたマゾ猫の前で、レインコートおじさん勢いよく、レインコートの前を開けた。

マゾ猫は、間違えた。

局部を見せつけるおじさん。その表情は、多分「キャー!」とかを期待していたと思う。
だがしかし、マゾ猫が言った言葉はこれだった。

「あっ……おじさんじゃなくて、おばさんだったんだ……。」

マゾ猫、当時小学一年生。
男性器をまじまじと見たことなんて、父親のものしかなかった。

そう、マゾ猫のお父さん、ちんちんが大きかったのである。
もう一度言おう。ちんちんが大きかったのである。

レインコートおじさんは、太っていて、下の毛でちんちんがほぼ見えていない状態であった。
多分、今思うと一般的に小さい部類に入ると思うし、それにくわえて太っていたため、お肉に埋もれてほぼ見えていない。
そして、人は丸みをおびると中性的になる。ましてや、超貧乳のマゾ猫の母よりも、おっぱいが大きかったのと、顔を大してみていなかったのもある。

マゾ猫は、レインコートおじさんを女性と勘違いした。

ごめん、レインコートおじさん。
当時マゾ猫は純粋だったんだ。

レインコートおじさんは、マゾ猫の言われた言葉を多分「めちゃめちゃちんちんが小さい」みたいな意味で受け取ったんだと思う。

ものすごく悲しそうな顔をするレインコートおじさん。
改めて顔を見ると、森三中の大島さんっぽい顔をしていた。

おじさんはレインコートの前を閉じて、背中を丸めなながらとぼとぼと帰っていった。
哀愁漂う、雨に打たれる後ろ姿。
なんだかちょっと、アルマゲドンの別れのシーンみたいな気持ちになった。

それからというもの、マゾ猫の住む街にレインコートおじさんが現れたという噂は、二度と聞かなかった……。



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