見出し画像

ウェルビーイングタウン〜GREEN SPRINGS〜

ウェルビーイングという言葉は知っていますか?
ウェルビーイングとは、個人が健康で幸福な生活を送ることができる状態を意味します。そのウェルビーイングを、再開発にどのように取り入れたか気になりますよね。
今回は大掛かりな再開発でありながら、収益化を狙わないという異色のプロジェクト「GREEN SPRINGS」について紹介します。

「GREEN SPRINGS」はJR立川駅から徒歩8分の場所に位置しています。敷地は約3万9000平方メートルに及んでおり、敷地西側には昭和記念公園が隣接する“立川最後の一等地”と評された元国有地です。元々、立川駅周辺は飛行場として整備されており、1970年代まで米軍基地として使われていました。
この事業を担ったのは大手ディベロッパーではなく、地元不動産会社の株式会社立飛ホールディングスです。立川市の25分の1の土地を所有する立飛ホールディングスにより、次の100年に向けたウェルビーイングタウン開発が進められたわけです。

GREEN SPRINGS

大きい敷地を開発する時に、住宅を建てて売却し、開発資金を確保するが一般的です。しかし、今回の敷地は「住宅を建ててはいけない」という規制と、「敷地内に1万㎡の文化施設を作らなければいけない」という条件がありました。更に敷地近くに飛行場があることから、高い建物が建てられないという制限もあります。
こういった条件を見ると、事業面ではなかなか難しそうですね。

これらの条件を踏まえ、現代の日本全体の経済状況を考えると、不動産収益を上げていくことを主目的にしないプロジェクトとなりました。一年単位で利益を追求するのではなく、今後100年の立川を強くすることが、このプロジェクトの狙いです。

まず、取り組みとして面白いのが工事着手前の土地の暫定利用です。今までは土地に生えた雑草を普通に除草していましたが、ヤギさんを放牧してヤギさんたちに除草をお願いしました。笑
ヤギさん効果により除草が完了するだけではなく、地域住民からの親しみも得られました。

ヤギさんたちの除草

GREEN SPRINGSの目玉はエンタメホール「TACHIKAWA STAGE GARDEN」です。1~3階席まであり、全体で約2500席あります。音楽ライブはもちろんのこと、客席の一部を撤去すれば展示会にも使える、多摩地区最大のエンタメホールです。2階席の後方を開放すると、屋内外のステージがつながり、一体的に使えるというユニークな構造を持っています。

TACHIKAWA STAGE GARDEN

また、ホールの屋上は開放されています。かつてこの地にあった飛行場の滑走路をモチーフにした、全長約120メートルの階段状のスロープが屋上まで延びます。スロープを流れる水の音を聞きながら歩みを進めると、隣の昭和記念公園や、富士山が一望できるほど視界が開けます。

水の流れる階段スロープ

次に特徴的なのが、アルファベットのXを描くように、街区の中央で交差する街路です。駅前の都心軸と公園の自然軸が交差する結節点を表現しただけでなく、あらゆる領域がこの街区で交差する未来に向けた交点にしたいとの願いを込めて「X」を用いました。
二子玉川ライズなどを手掛けたランドスケープデザイナーの平賀達也氏と、東京ミッドタウンなどを手掛けた建築デザイナーの清水卓氏の2名により街区デザインを手掛けています。この2名体制からもわかるとおり、GREEN SPRINGSは建築とランドスケープ、どちらともに重視されています。

Xを描く街路
街路には多くの人がゆったりと過ごしている

街区の入り口には「ウェルビーイング・ホテル」もあります。全81室の客室は、すべて50㎡以上でバルコニー付きです。デザインにもこだわっており、内装デザインを担ったのは、「GINZA SIX」などを手掛けたフランス出身デザイナーのグエナエル・ニコラ氏です。
また、圧巻なのが、10階と屋上(11階)の2フロアにわたる温浴施設です。なんと、このホテルのために天然温泉をくみ上げたようです。
この豪華仕様は、まさに「ウェルビーイング・ホテル」ですね。笑

グエナエル・ニコラ氏デザインの内装
2フロアにわたる温浴施設

これらのハード面だけではなく、ソフト面にも力を入れています。立飛ホールディングスは、街区のオープンに先立ち、タウンマネジメントにも力を入れることにしました。
その第1弾が「立飛パブリックアートアワード2020」です。40歳未満の若手作家を対象に街区を彩る作品のアイデアを募り、敷地内にパブリックアートを散りばめました。

公衆電話を用いたパブリックアート

ウェルビーイングタウン「GREEN SPRINGS」はいかがでしたか。
高層ビルを林立させるという、近年主流の再開発とは真逆のアプローチですよね。個人的な思いとしては、こういった取り組みが増えてほしいと思っています。まちというのはそれぞれ個性があるものなので、個性が発揮できるようなハード整備が必要だと考えています。GREEN SPRINGSの場合は「ウェルビーイング」をキーワードにして、アプローチしたのは面白いですよね。
皆様も立川に寄った際は、ウェルビーイングタウンを感じ取ってみて下さい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?