見ていた世界がめちゃくちゃ狭いと気が付いたある日のこと

「この人たち…何してるの？」

私が30歳の秋。
産休明けから預け先に苦労していた長女（０歳６か月くらいだったか）が奇跡的に自宅近くの公立保育園に転園が叶い、やっと生活リズムが落ち着いてきた。そんなある日、いつものように保育園に子どもを迎えにいくのだが、その日はたまたま何かの用で3時ごろ外出し早めに業務が終わったので「直帰しま～す」と職場に言って、いつもより早めにお迎えに行けた（多分５時半ごろ）。いつもギリギリで一番最後に駆け込んでいたたので、他の保護者に会うこともとても少なかったのだが、その日はたくさんの親がいた。
そこには複数の父親の姿があった。そのときの心の声が１行目に書いたやつね。

まだ明るい保育園に迎えに来れるって、いったいどういう人？仕事してないの？←失礼にもほどがある（この中にはのちに家族ぐるみで仲良くなったお父さんが３人くらいいたよね笑）。
…そんな風に思ったのは、当時の私の職場では考えられなかったからだ。

そこからいろんなことを考えた。
正直当時の私は「情報に満ち溢れた最先端の職場にいる」つもりでいたし、仕事柄いろんな職場に取材に行って、働く人の話も職場の話も、最近の企業動向もなんでも見聞きするし情報は入ってくるから「広く世の中のことをわかっている」つもりでいた。でも、この日をきっかけに自分が知っているつもりの世界ってもしかして、めちゃくちゃ偏っているんじゃないの？ということに気が付いた。

考えてみたら単純な話で、求人情報誌で関わる企業（広告費がたくさん払えるとか・会社が伸びてて人が足りないとか…）はそれなりのフィルターがかかっているし、取材で会う人は「何かうまくいった人」が大半だし、そもそも労働時間が長くて、職場の人と仲が良いので、土日もまあまあ遊んでいたりして、職場外でもノリとテンションが似た人とばかりいっしょにいたし、

つまりはめちゃくちゃ視野が狭かった、ということ。
ただ、私は出産後に強制的に（地域の保育園という環境によって）職場文化から半分切り離された。そこで見聞きしていくことで、今まで信じ込んでいた正解がそれだけじゃないとか、思い込んでいた理屈が「じゃない見方も確かにあるよな」とか、強烈に知る機会となった。
その違和感を土台に、同僚と２人で「経営への提言」という社内公募にエントリーして佳作ももらうことが叶ったのはよい思い出。

それでもまだまだ私は狭かった。
それがわかったのは市役所に転職してからなので、数年後のこと。

売り上げと利益至上主義で、結果が出ないのは本人の努力不足だと思っていたタイプの人間が（でも産後にその思考もあってズタボロになって自分で自分の首を絞めたんだけど笑）、転職してみたら、なんて世界は広いのっ？ってなった。

これを言うとみんなに意外とか逆じゃないのとか言われるのだけれど、本当そうだから。
だって市役所の（中の人も相当にいろいろだけど）関わる相手は住民全部だよ（笑）。そこまではほぼ２０代～せいぜい４０代までしか関わっていなかったけれど、職員も５０代までいるし、住民に至ってはゆりかごから墓場までだし、職業も会社員、個人商店、農家、公務員（先生とか警察官とかも）と多岐にわたるし、元気でうまくいっている人だけじゃなく、むしろ困りごとがあったり難しい課題を持っていたりって人が多いし。

何より、国会と日常がつながった体感がすごかったよね。
「あの話がここでこうなって落ちてくるのか…！」と。
会社員のころにそれを意識したのはいくつかの法律（雇用機会均等法とか派遣法とか）の変更と事業がガチで関係していたときくらいで、国会とか政治とかほぼ関心の外にあったので（かろうじて選挙は行ってたレベル）。

まあ、これは私自身が想像力と教養と勉強が足りなかったって話なので、笑ってくれたらいいのだけど、けどね、人って案外自分がいる場所、自分が付き合っている人たちの総論が「普通」って思ってしまうのよ。今だとエコチェンバーって言うんだっけね。
だから、とってもいい人なのに「どうして？」ってくらい相手への想像力がない人がたくさんいるわけで。

私たちは常に偏っている。
ナニカ違和感を覚えたら「おかしい！！」とシャッター下すまえに、きっと見えてないんだろうな～、見えてないのかもな～、と立ち止まってみなくては、って何度も言い聞かせているし、その前提で聴き、問い、伝えていかないと、どこの溝も埋まらないんだろうって思う。

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