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命、在るものになりたくて(連載小説)

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小説「命、在るものになりたくて」(全22話)をまとめたマガジンです。
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記事一覧

(22)そこにはいない

 私は、教師だった。  生徒に物を言い、導き、教える立場だった。  今とは違う生きかたをし…

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柴田彼女
2か月前

(21)ゆるされたい

 私の診察が始まる。案の定話の切り出しは医師からで、 「他の患者さんとちょっと仲よくしす…

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柴田彼女
2か月前
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(20)嘘について

 中に入ると、看護師がいつかのように私を廊下の隅に追いやる。 「前も言ったけど、他の患者…

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柴田彼女
2か月前
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(19)あの頃わたしは確かにそこにいた

 犬塚さんとまた会ったのは、秋になってすぐだった。診察時間を昼手前に戻し、案の定何時間も…

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柴田彼女
2か月前

(18)惰性

 日々は続く。二週間に一度の診察は繰り返され、本格的な夏がくる。私は予約時間を夕方にずら…

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柴田彼女
2か月前

(17)スイートスポット

 スーパーマーケットの、値下げコーナーでスイートスポットまみれのバナナを買った。ほとんど…

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柴田彼女
2か月前
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(16)何者

 そこから更に一時間半、やっと自分の番がやってきた。担当医は四十代ほどの男で、患者の話を長く聞いてくれる。それがこの混雑に繋がっているのだけれど、こういうジャンルの患者として思えば話を聞いてもらえる機会は非常に貴重で、だからこそ何時間でも待てる。需要と供給が合っているのだ。時間が無限だったら、この医者は何時間でも話を聞いてくれるだろう。そんな安心感がある。  私は医者に今の生活を話す。できるだけ丁寧に暮らしていること、きのうはパンを焼いたこと、ケーキ作りに興味があること。今

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(15)枠の中だけ

 再び涼やかなクリニック内に戻る。順番はまだまだ先だ。鞄から本を取り出して読もうとして、…

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柴田彼女
2か月前

(14)おいしそうだね

 十二時になっても当たり前のように自分の番はこなかった。私は受付の女性に一言断って、病院…

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柴田彼女
2か月前

(13)すなおメンタルクリニック

 朝、着替え、カーテンを開け、顔を洗い、朝食を摂り、化粧をし、髪を整え、それから弁当を作…

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柴田彼女
2か月前
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(12)記憶が支配する

 あしたは病院で、診察時間は十一時半から。どうせ二時間は遅れるから、お弁当を持っていかな…

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柴田彼女
2か月前

(11)逃走

 午後一時過ぎ、PCを開く。スマートフォンに入れてあるSNSをこちらでも覗く。たまに何か…

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柴田彼女
2か月前

(10)薄暗い中の祈り

 リュックサックを定位置に片づけ、時計を見るともう十二時を過ぎていた。昼食は何にしよう、…

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柴田彼女
3か月前

(9)帰宅

 家に着いたころにはもうくたくたで、玄関では突っかけていたサンダルを揃える元気もなかった。細い通路、壁に寄りかかって、イヤホンの音量を少しだけ下げる。心を整える。ちょうどいい音の大きさ、聴く曲も変える。美しい声、美しいギター、美しいベース、美しいドラム。包まれる。不安がない。かすれたボーカルの「おかえり」という歌詞。ただいま、と呟く。帰ってきた。きょうも無事帰ってこられた。  深く息を吐いて、それから吸い直す。  イヤホンを外して、リュックサックのポケットの中のケースにしまう

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