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【#8越後姫日記】ありがとうミツバチ

ある日の朝、ハウスの中を巡回していた時、ふと目に留まった1匹のミツバチについて、今日はお話していこうかと思います。

苺農家にとってのミツバチという存在

苺の栽培に欠かせない農家の相棒、ミツバチ。
受粉作業のプロとして活躍してくれます。
新発田ファームでは、11月に1回、3月に1回。
合計24,000匹を越後姫ハウスに放しました。

たくさんのミツバチが縦横無尽に飛び交う様は、初めの頃はちょっとした恐怖感を抱くことも(笑)
昼前が1日の中で特に飛ぶ数が多く、巣箱の上空が黒い塊ができていた時は衝撃の1シーンでした。
アニメなどで、ハチミツを採るために巣をつついたクマが大群のミツバチに追いかけられるシーンがありますよね。
まさに襲い掛かる前のあの感じでした。
襲われはしなかったけど、おっかなかった~~(;'∀')

ミツバチは何の目的で苺栽培に使われるのか

ミツバチは、イチゴに限らずスイカやサクランボなど様々な作物の農場で活躍してくれています。
目的は「受粉」のため。
苺は、秋~初夏にかけて1つの株に10以上の花が咲きます。(バラつきがあれど、きっともっと咲いてるはず)
たくさんの花をひとつひとつ人の手で受粉させるとなると、それはもう気が遠くなりますし、作業が遅れれば収穫量にも響きます。そしてなにより人件費が恐ろしいことに。
新発田ファームは7,000株定植しているので、単純計算して70,000の花となります。おーこわっ。

そこで、猫ではなくミツバチの手を借りて数には数で応戦!
そして、効率面だけでなく品質面でも大変重要な働きをしてくれるのです。
苺は受粉の状態で、形の良し悪しが決まります。
肥料のやり方や日光量・気温などより最も影響を与えるのは受粉。
受粉不良の花から実った果実は奇形となる確率が高く、商品にならなくなってしまいます。

苺の3つ子ちゃん

人が受粉作業をする時は、梵天(耳かきのふわふわした部分)を使いちょんちょんと花の中心に触れて進めていきます。※耳かきは使いません。笑
一方ミツバチはというと、花の周りや上をくるくる歩いて体中に花粉を付けながら動き回るのです。

一見、大差がないように思いますが、人間が行うと梵天が当たりやすい中心と、逆に当たりにくい端とでムラが出てきてしまいます。
これがミツバチだと、小さい体にびっしり花粉をつけて動き回ってくれるのでムラが少なく、花の奥まで足がズポズポ入って上手に受粉させてくれるのです。やるね~~~~!

ふと1匹の蜂が目に留まる

すっかり春めいてきたここ最近のこと、ハウスを巡回していた時に
1匹のミツバチが葉の上で休憩している所を見つけました。
なんら珍しくないので、よく気にもかけずその時は通り過ぎました。
そして翌日の朝、また同じところにそのミツバチはいました。

あれ?昨日も同じ場所で見たぞ??と思い、よく見ると・・・。

様子がおかしい。

分かりますか?
このミツバチは、葉の上で休憩していたのではなく息絶えていたのです。
前日に私が通り過ぎた時、既に命が終わっていたのかもしれません。
体は白くなり、羽はボロボロでした。

正直、床や巣箱のそばに落ちているミツバチの死骸を毎日見ているので見慣れてしまっていました。
が、このミツバチの姿を見て大きな衝撃を受けたのです。
まだ初シーズンを迎えたばかりだというのに、もう大切なことを隅に置いてしまっていた自分に気が付きました。

彼らは人間の為に飛び交っているわけではない

ミツバチは本能のままに蜜を集めようと毎日ハウス内を飛び回っています。
それが本当は、人間の目的を果たすためだったとしても。
私達は、彼らの命のおかげで立派な苺を育てることができて、多くの方々に喜んで頂けている。そして生業として生かしてもらっている。

小さな命に対する感謝を大切にすること、農業に関わる人として心に留めなくては、としかと感じた出来事でした。
初心忘れるべからず。

ありがとう、お疲れ様でした。
そんな気持ちで、ミツバチをそっと土の上に置いたのでした。

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