一発撮りについて

この前、駅で外国人がスマホ持って右往左往してて、その外国人が、ドレッドヘアに、金色のネックレス、左手にドクロのタトゥーが入ってる、いかにもって感じの人で。

ただ、どうやら困ってる感じがして、使ってるスマホがiphoneだったから、iphone使ってる人に悪い人いないじゃないですか?
「どうしたんですか?」って聞いたら、
その外国人が「キヨスミシラカワ」って言ってて、
ドレッドヘアで、清澄白河って行っていいんだっけ?と思いながら、
連れて行ってあげたんですよ。

で、帰ろうかなって思ったら、外国人が僕の袖をつかんでるんです。
かわいいって思って、左手だったのでがっつりドクロのタトゥー入ってるんですけど。
まぁ、「なに?」って聞いたら、
「キテキテ」って言ってて、
まぁ、iphone使ってるし、いいかなって思って。
付いていったら、真っ白な部屋に案内されて、部屋の真ん中にマイクが2本立ってて。外国人が一言、「一発撮り」って。

完全にFASTTAKEだったんです。
まぁ、固有名詞だから、日本語に直さなくても伝わるよ、とは思ったんですけど。アイアンマンはアイアンマンで伝わるし、鋼男って言ってるのと同じですから。

ここまできて、「いや、僕やらないです。」ってノリ悪すぎるから。
ちょっとこのアーティスト感というかね。やっぱりさすが。
何本か見たことある動画のあるあるを記憶の隅から引っ張り出してきて。
マイク前まで無言で行って、
プルルルルとかやったり、エイエイとか言っちゃったり。
歌手じゃないから、ちょっと恥ずかしかったけど、頑張ってやったんですよ。一発撮りだしミスできないし。
で、ヘッドホンして、若干、小さな声。
あんまり、張らずに「お願いします」って言う。

そしたら、

イントロが全然始まらない。

「んんん? あれ??」
で、僕は、たまらず、
「曲が始まらないじゃないか」って言ったんですけど。
目の前の外国人は、ノリノリで腰降ってる。

「なんだよこれ」って。
真っ白の部屋で、目の前で腰降ってる外国人。
よく考えたら、知らない人だし。

どこから、運営が見てるのか分かんないから。こういう時は、とりあえず上ですよね。天の声のイメージだから。


「あのぉ、曲が聞こえないんですけど。すいません。曲が…」 
で、僕の悪い癖なんですけど、
一回聞こえてないなって、伝わってないなって思うと、
二回目の声量間違えちゃう。

「すいません。すいません。」
ブチギレてるみたいになっちゃって。

「曲が聞こえてません。…曲が聞こえないんですよ。あのぉぉぉ!!!」
ここまでは、本当にキレてなかったんですけど、
ここで、ホントにキレちゃった。

「いじってんのか?? おい。運営。ニヤニヤしてるんだろ。出てこい。
運営。おい。曲! 曲だよ! 曲かけろ!!」

「運営!! お前。多分家にテレビないだろ。スマホばっかり見て。
ニヤニヤニヤニヤしやがって。そんなちっさい画面ずっと見てるから、
ドンドンドンドン視野が狭くなって、こんなことしちゃうんだよ。
一発撮りなんだろ?」

「…カットしようとしてるのか? おい!! 
カットすれば別にいいと思ってるんだろ。 
さっきの俺のお願いしますから、楽器の画面に変えて、
俺の歌いだしから動画流せば、何とかなると思ってんだろ? 
おい、運営!! 返事しろ!! おい!!」

「今のはごめん言いすぎた。ごめん。
お願いだから、曲流して。 運営! ごめん。」

パって見たら、目の前で、腰降ってた外国人が、
「yeah yeah yeah I am wolf boy !!」

オオカミ少年だったんだって。

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