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自分(柴助)が主役のエロ小説『拘束超能力コメディアン』

俺ら、ザ・ダッチライフはあまたの漫才新人賞を総ナメにした後、結成からなんと1年でM1、KOC、R1(僕だけ)の三冠を獲得し、そしてなんかの手違いでTHE Wも優勝した。
その躍進は日本だけに留まらず、アメリカズゴッドタレント、イギリスズゴッドタレント、さらにはえんとつ町ズゴッドタレントにて、ゴードンをして金ピカボタンを押さしめた。
極めつけには、漫才をしてたら世界で戦争がひとつも起きなくなり、ノーベル平和賞を受賞。
もう毎日大忙しだ。テレビ、ラジオ、Youtube、ニコニコ動画、Vineの収録を片付け、今日の最後の仕事「高円寺漫才部シネマライブ」を終え竹芳亭を出る。
そして、目の前に広がるのはいつもの光景だった。
「キャー!ダッチライフが出てきたわ!!」
「握手してぇ!!握手握手!!」
「ママ!ボクも写真撮って欲しいよ!」
「俺もファンだぜ!ダッチライフは男人気もある!」
まあ、いつもこんな感じだ。
「ニャー!」
「ワンワン!」
「ブヒーブヒー!」
「ツクツクボォーシ!!!」
人気はヒューマンに留まらないってか。
相方のGOGOシーサーは相変わらず愛想を振りまく。
「はーい、並んで並んで。この後仕事ないからみんなとゆっくりお話できるよ!ほら、順番順番。」
正直ファン対応なんてうんざりだぜ。
「おい、シーサー。そんなヤツら構ってないで帰ろうぜ。」
「ちょっと〜ダメっすよ柴っさん。みんなのお陰で漫才できてるんすから僕ら。……みんなありがとね✩」
「キャー!!!」
出た、GOGOシーサーの必殺ウインク。キザったらしくってかなわねえや。
「あの!私、ダッチライフ結成1ヶ月目からずっとダッチガールなんです!私の彼もダッチマンで……。」
「ほんと!嬉しいな〜。じゃあ特別に……色紙に似顔絵描いてあげようか。」
「キャー!!!うれしー!!」
「ずるい!!ずるい!私もぉおおお!!!」
「俺も描いてくれぇぇえええ!!!」
やれやれ、また面倒なことしやがった。
「シーサー……俺タバコ吸ってくるわ。」
「は〜い、すぐ戻ってきてくださいよ〜。」
俺は行こうとするが、ギチギチになったファンがそれを許さない。
「待って!!待ってぇ!!サインくださいぃ!!」
「俺サイン書けねぇのよ、いつもあいつが俺のサイン書いてっから。行ってこいよ、今なら似顔絵付きだとよ。」
「握手してぇ!!」
「ごめんなぁ、さっき手ぇ洗ったばっかりなのよ。」
「柴助さぁん!!ちゃんとライター持ってますか!!タバコも柴助さんと同じの吸ってるんです!!お供させてくださぁい!!」
「どいつもこいつもうるせえな!!1本吸ったら戻ってくるから大人しくまってろ!!!」
「いや〜ん……好きぃ……。」
喫煙所に着くと、ポケットに手をいれる。
「……やば、ライター忘れてるわ。」
本当にライター持ってなかった。あのファン予言者かよ。予言者クルトかよ。
どうしよう、取りに帰ったらまためんどくさい事になるし……。
そう思った瞬間、見知らぬひとりが喫煙所に入ってきた。
これは丁度いい、とライターをお借りしようと近づいた俺は、その人の顔面と服を纏った肉体を一目見て、脳がピーっていってしまった。
アイコニックと同じヘアースタイルだったので気づかなかったが、性染色体がXXのタイプの生きとし生けるものだ。
歳の頃は二十七、八、三十凸凹フレンズ。目元は夏のパチンコ屋の前通ったときくらい涼しく、衣服もシャレオツ。彼女は生であればつるつる、ぷりっとした食感に風流を感じ、加熱すれば淡白な味わいに品を感じさせる春の食材であるところの白魚のような手で、身につけたチョッキに大量に縫い付けてあるポッケのうちのひとつからタバコを取り出し火をつけた。
メビウスの8ミリか。
……いや違う!
タバコの箱をよく見ると、8の隣に小さく『kg』、8キログラム!?あの細い棒に8kgのタールが!?
「致死量ですよ!!」
俺はつい声をかけてしまった。ついでにおしっこもかけてしまった。まるで犬だなこりゃ。
「あはは……アタシベビースモーカーで、毎日吸ってたらどんどん物足りなくなって、いまじゃ8キロ。……おしっこクッサ!」
俺のかけたおしっこがクサいようだ。
「でもだからといって、そんなタバコ……ひと吸いで肺が黒色無双ですよ!!」
「黒色無双ってあれね、世界一黒い塗料ね。でもいいのよ、どうせ私の肺のカラーリングあるあるが、光吸収しがちでも、困るひとなんていないわ。1人もね。……クッサ!あなたのおしっこ!!」
儚いフェイスで彼女は答える。
「クッサ!私はずぅっとひとりぼっちクサ!!」
でも……そんなの……あまりにもクサすぎるじゃないか。ひとりぼっちなんて、クッセェ!!クサ!!俺のおしっこクサすぎる!!!え、え、俺今日何食べたっけ?!クサクサクサ!!俺のおしっこクッッッサ!!反則だ!!反則級のクサさだ!!!
てっきり俺は世界中の人間を笑顔にしたとばかり思っていた。
しかし彼女は……クッサァァァァアアアア!!!
とりあえず謝ろう。かけ尿はまだしもクサ尿は宇宙規模でご法度だ。
「クサき尿をかけて、すまねえ。」
「ほおずきリンリンよ。」
「……え?」
「わたしの名前。鬼灯はそのままで、悋気の悋に吝嗇の吝、で鬼灯悋吝。」
「なんて面白い名前なんだ!」
「はは、名前だけよ、面白いのは……。」
名前だけが面白い……なんだかGOGOシーサーみたいだな。
「……俺も吸います、その8kg。」
俺はアヒル口で言った。
「ダメよ。絶対にダメ。あなたの肺のカラーリングを警戒してるひと、いるでしょ。」
「うるせえ!」
俺は彼女の胸ポケットから強引にタバコを奪い取る。手を突っ込んだときにおっぱいがポヨンってなった。
「これでひとりじゃないぜ、リンリン。」
吸おうと思ったが、ライターがない。
「ライター貸して。」
ライターを貸してもらった。
「これでひとりじゃないぜ、リンリン。」
俺は豪快にひと吸いすると、あまりの重さに気絶した。

目を覚ますと……どこかの地下室のようだ。
しまった。嵌められた。気絶させられてデンジャラスな場所に連れてこられたんだ。
くそ、知らない人のタバコなんか吸うからだ。
昔、お母さんにもよく注意されたっけ。
「こらこら、柴助や。知らない人のタバコを吸ってはいかんぞ。おばあちゃんも昔、」
おばあちゃんだった。記憶を辿ったらおばあちゃんだった。すまねぇおばあちゃん。
「フフフ、気がついたようね。」
その声に振り返ると全身をガッチリ拘束され身動きを封じられたリンリンがいた。
俺は……なぜか拘束されていない。
「リンリン!ここは一体どこなんだ?俺が寝てる間に何があった!?」
「まだ分からないの?実は私、鬼灯悋吝はあなたの熱狂的なファン。あなたを8kgタバコで気絶させ、ここに連れ込んだのよ。全部私の計画通り!!アッハッハ!」
「……?」
じゃあなんでお前が拘束されてるんだ?
「ちなみにあなたのケータイ勝手にさわって、LINEの友達登録をさせてもらったわ、あははは!これで友達よぉー!」
「いやそれよりも、だったらなんでお前が拘束されてるんだ?」
「なによそれよりもって。私なりの流れがあるのよ。流れ通り喋らないと話があっちゃこっちゃいっちゃうから我慢して。」
依然身動きが取れない状態でリンリンは言う。
「ケータイはちゃんとロックをかけなきゃだめよ〜。あなたのヤフーの検索履歴もみちゃったわよ。おっぱいをめっちゃ検索してたわね、なんて助平なのかしらっ!」
なぜ拘束されてるかが気になる。
「写真もみたわ〜うふふ。ダメよぉLivePhotos切っとかなきゃ。すぐ容量いっぱいになっちゃうんだからぁ。」
あ〜、写真撮ったら勝手に動画になってるやつか。切り方分からないんだよな。
「それにダメじゃないの……あー、ねむ、寝るわ。」
リンリンは寝てしまった。
「おい寝るな!なんで拘束されてるか言えよ!!!」
リンリンは熟睡してしまった。
ピロリン!
なんだ?ケータイにLINEの通知が来た。
送り主は……鬼灯悋吝!?
『どもー!拘束状態で寝ちゃったリンリンです笑』
うわ!どうやって送ってきてるんだ!キモ!!
返事は早い方が嬉しいので、俺はLINEを返信した。
『お疲れ様です。悋吝ってこんな字なんですね。拘束睡眠状態でどうやってLINEしてるんすか!?』
『変な名前でしょー笑 ちなLINEは念力で打ってる👍』
念力か!すげーな、テレビとかでたほうがいい。
『明日朝早いんす!ここから早く解放してクレメンス』
次の返信はスタンプで返ってきた。
可愛いクマが、吹き出しで「私を起こすことができたら解放してあげる!」と言ってるスタンプだ。
なんだこの限定的なスタンプ。
『どんな手を使ってでも起こしてみなさいな。検討を祈る🫡』
くそー、この女どうやったら起きるんだ。
カレーのいい匂いとかさせる手はずが整っていれば迷わずゴーなのに。
いや……待てよ。相手はガチガチに拘束されている。そして「どんな手を使ってでも」と言っていた。
……エロ行為で起こす方が吉、もとい侍じゃないのか!!!
いーや!いかんいかん冷静になれ柴助。もしエロ行為がルール的になしだった場合どうなる?
エロ行為はリスクが高すぎる!!ルールが明示されてない以上、エロ行為の直後に失格、そして「変態!」と言われ「何してるのよ!!」と言われる。そして最終的に「信じらんない!!」って言われる可能性は大いにある。
それだけは避けなければならない……!!!
俺は葛藤した。奥歯がすり減って生え変わるほどに。
丁度パンゲア大陸と心を通わせられたのだ。
すると……ピロリン!
『エロ行為、オーケー。』
きょっ……。
許諾キターーーーー!!!!
ありがとうスタンプを送ると、さっそく俺はプランを立てた。
まず俺の体表面のどの座標を用いて、リンリンの体表面のどの座標に作用させるかだ。
手でお山を?いや首でバラを?……逆に茎で手を!?
いと難しい。逆を考えると、逆の逆、裏の裏とドツボにハマってしまう。
まずは手堅く、手でお山を作用させるか……?
俺は作用を接近だ。あと30cm、20cm、10cm、5cm……1cm……!
くーーっわっは!ダメだ!!なんか自信喪失だ!!手堅いのでいってありきたりだなとか思われたら〜とか考えちゃう!!!
ここはおもいっきし変態に……味蕾で聴覚神経を作用か。
俺は作用を接近。失敗は許されない。あと30cm、20cm、10cm、5cm……1cm……!
いーりっひ!ムリムリムリ!!!何考えてんだ俺!これじゃあ俺が荒唐無稽すぎる人みたいじゃねえか!!
一体これは、どうするか。
……じゃあもう、こうなったら!!論理的に、論理的にいこう!!
論理的に行くことで……自分の責任を減らすんだ!!忘れてたとか、思い違いとか!!そんなんの方が全然ダメージが無い!!!そうでしょ?みんなそうでしょ?
いいよ!もう、どう思われても知るもんか!!論理に従って俺は……く、茎で……バラを……!
作用作用作用ぉ!!!作用ぉおおお!作用だぁああああ!!!
うわーーーー!
だぁめだーーーー!!!出来ない、出来ないぃいい!
……そいえば俺、最後に作用させたの大学3年生のときだっけ。トホホ。
そんな俺を見かねたリンリンは、助け舟を出港だ。
ピロリン!
『私が念力で仮想のバラ、具現化したろか?』
あ、あ、あ、
ありがてぇーーーー!!!!
勝った!!めっちゃありがてぇ!!生まれてきてよかったぁあああーーー!!!仮想ならかなり敷居が低い!
よし、これでオーケー牧場、俺は虎視眈々と作用を準備っと!おっと、具現化した!完成度高いねぇ、テレビとかでたほうがいいのに。
それにしてもいいよぉ、俺の茎もすこぶるグンバツで……あれ?よう考えたら、これ、惨めじゃね?
悲惨の極みじゃね?
だって、アイコニックみたいな髪型のひとに手玉にとられて、ああでもないこうでもない。挙句の果てには具現化までしてもらって……。
俺は柴助だぞ?先月国民栄誉賞受賞した柴助、世界のダッチライフ、宇宙の柴助、この次元の長だぞ……?
……よし。
俺はメッセージを送信する。
『悋吝さん、俺、念力で茎、具現化させます。』
悋吝の身体が多少シェイクする。
シェイクか……これは幸先良い。
ピロリン!
今度はボイスメモが送られてきた。
『無理よ!!念力は難しいだけじゃない!ミスるとアザができやすい種目なのよ!!!』
念力でボイスメモまで送れるなんて……テレビとかでたほうがいい。
でも俺は驚かない。心に決めたんだ。男の挑戦なんだ。明日朝早いんだ。
俺は心を集中させる。ぐぬぬぬーーー!!!
本気の心と豊かなポパイは不可能を可能にする。
俺の茎はうっすらと現れ、そして消える。
現れては消え、現れては、消え……。
焦らない。間違えてもいい、バカにされても、めっちゃディスられても!俺は、俺の心の、「心の茎」だけは!!!折れてたまるかぁあああああああ!!!!!
……。
……来るぜ。
モリモリモリモリィイイイイ!!!!
グングングーーーーン!!!
‘’Giant Equipment ー弁財天の微笑ー’’
王手……!!!
ピロリン!
『し……信じらんない!!!こんなことって……!』
ああ、そうさ、嘘みたいだろ。
俺は今まで、嘘みたいなザイマンで、本当みたいな笑顔を、幾つも幾つもリデュースしてきたんだよ!!!
本当の緊張を、緩和させる時が来たみたいだな。
俺の茎が部屋を埋めつくし、パンッパンになる!
その茎は換気口や扉の僅かな隙間から這い出て、ニュルニュルと悪さをする!!!
……え?ああ、もうとっくに作用はしてるさ。
全ての思い出が詰まった精鋭たちが、鎧を身につけ、剣を取り、兜を頭に掲げ、一国総クラウチングスタートだ。
ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ……。
ブゥオゥ〜ウゥウゥ〜!!
笛の音で悋吝は目を覚ました!
「あ……あなたの勝ちよ!試合終了!おねがいよぉ!!!」
悋吝……。
「……フレキシブルにいこうじゃないの。」
出陣じゃぁぁぁあああああああ!!!!!!
ゥォオーーーーーーー!!!!
「喰らいやがれーーーーー!!!!」
「ウゲっ、ウゲっ……ウゲゲゲゲゲゲーーーー!!!」

タバコのオイニーで目を覚ました。
ここは……悋吝と出会った喫煙所だ。
記憶と目の前の風景を照らし合わせて、なんとなく察した。
「なんだ……夢か。」
俺も疲れてんだな、あんな夢をこんなとこで見るなんて。
「柴っさ〜ん!すぐ戻ってくるって言ったじゃないですか〜!みんな待ってますよー!」
シーサーの声だ。遠くからあんな大声出して……。
なんか、面倒くせぇけど……久しぶりにサイン、書くか。
「お〜う、すぐ行くから、もう1本だけ吸わせてくれ〜!」
「まだ吸うんすか〜!早くしてくださいよー!」
1本吸おうとポッケに手をいれると。
『メビウス 8kg』
この状況を受けて俺は「は?夢じゃないん?どっちなん?イライラするわ。まあ全ての物事には理由があるからね、客観的に確率高いほう選ぶと、夢じゃないってのが真実ね、はーい決定。……え?異論があるの?えー、なんか逆に笑えてくるわ、だって考えてもみてよ……いや待って、自明なことわざわざ説明するの俺?時間の無駄です。はーいクソだわクソ。」
と思った。

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