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【インド映画】The Great Indian Kitchen(2021)

監督:ジヨー・ベイビー
出演:ニミシャー・サジャヤン、スーラジ・ヴェンジャラムードゥなど
上映時間:1時間40分

「The Great Indian Kitchen」鑑賞しました。タイトルは日本語訳だと「素晴らしきインドのキッチン」ですが、実はこれはとんだ皮肉です。登場人物は主演はじめ名前が付けられていないので、下記の説明では「妻」と「夫」とさせていただきます。

中東のバーレーンで育った妻は、ケララ州のコジコードという街の格式高いヒンドゥー教徒の家に嫁ぐことに。夫は教師で、義父はすでに退職しており隠居生活を送っている。義母は専業主婦。

夫はいい人で妻を愛してくれ、義父や義母も優しく、最初は順風満帆な結婚生活に見えました。しかし一緒に生活をしていく中で耐え難い事柄がいくつか出てきます。

男性陣は食事中に食べ残りをテーブル上に散らかして、それを当たり前のように妻は片づけなければなりません。その残りカスのせいで洗い場の排水溝が詰まったり、台所の下に汚水が溜まったりします。夫との性行為も前戯がなく、痛いのを我慢せざるを得ません。そして妻は趣味であるダンスの先生の仕事をしたいが、格式高いヒンドゥー教徒であるがゆえに専業主婦でいることしか許されません。

妻もこの家父長制に耐えられなくなり夫に腹を割っては相談します。しかし夫は注意を受け入れるどころか腹を立て夫婦仲が悪くなる始末。義父も洗濯は手でやれだの米は釜で炊けなど注文が多く、家事の負担も一向に減ることがありません。そして妻に生理が訪れます。熱心なヒンドゥー教徒の間では生理は不浄であるという迷信が信じられており、妻は別の部屋に隔離されることになる。

ずーっと胸が詰まるような内容です。妻が経験している苦しみがこちらまで伝わってきます。特にキッチンでの描写は日本人にとってもリアルで、見ながら顔を歪めてしまいます。流し場の食べカスが詰まって水が溜まるやつとか最悪ですよね〜。

インドに住んでいると分かるのですが、この作品の内容めちゃくちゃリアルです。それも農村部や熱心なヒンドゥー教徒の家庭だけじゃなく、都心部ですらこの概念が染み付いていることを実感する場面は幾多となくあります。

例えば自分が今住んでいるシェアハウスにも毎日メイドさんが来るのですが、シェアメイトみんな彼女に任せっきりで、キッチンをめちゃくちゃ汚く使います。本当にこの映画みたいな感じです。僕はなるべく彼女の負担を減らすように自分で使った食器を洗ったり、メイドさんにありがとうと伝えたりしているのですが、他の人達は掃除してもらって当然のような扱い。

問題なのは夫も義父も僕のシェアメイトもそうなのですが、その人たち自身は決して悪い人じゃないということ。つまり根本的な思想としてこの考え方が根付いてしまっているんです。つまりこの問題を解消するには、根本を変えなければならず、伝統保持の傾向が強いインドでは一筋縄ではいきません。作中に出てきたような女性の権利を訴える運動や、このような映画が増えることによって少しずつ根本思想に訴えかけなければいけないのです。

もちろん他人事ではなく自分も気を付けなければいけないことです。結婚した際に何をすればパートナーのストレスを軽減することができるか、この作品を観て学ぶことができました。これをしっかり肝に銘じておかなければなりません!

「The Great Indian Kithen」はインドに蔓延っている女性問題についてリアルに描いた作品。インドで生活する身としては、気持ち悪いぐらいにリアリティがあり心に響きます。決して宗教批判ではありませんが、人権が守られたうえでの宗教であるべきだと改めて感じました。

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