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【洋画】サンセット大通り(1950)

監督:ビリー・ワイルダー
出演:グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ナンシー・オルソンなど
上映時間:1時間50分

「サンセット大通り」鑑賞しました。こちらも現在読んでいる「感情から書く脚本術」で例として取り上げられていた映画です。

ロサンゼルスのサンセット大通り。とある大物の住む邸宅で殺人事件が起きる。殺されたのは売れない脚本家のギリス。拳銃で撃たれた状態でプールに浮いていた。

売れない脚本家だったジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)は、家賃滞納でハリウッドのアパートを追い出されそうになっていた。押収されそうになった車を隠すために逃げていると、ある邸宅に迷い込んだ。そこはサイレント映画時代の大女優、ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)の自宅であった。彼女のペットの猿を入れる棺を持ってきたのだと勘違いされ、ギリスは中に呼び込まれる。

彼は誤解を解き、脚本家であることを伝えると、ノーマは自身が再起を図って書いた脚本の編集をギリスに依頼する。自分が目立つことしか考えていない酷いメロドラマだったが、ノーマが提示してきた高額な給料を断れず、住み込みで働くことに。

怖くて、狂っていて、面白い。超好みの映画です!マジで狂ってる(笑)。ただハリウッドの歴史や映画作りの工程などを知らないと理解しづらいかもと感じました。多数の作家から送られてくる膨大な量の脚本を捌くための脚本閲覧員がいることや、無声映画時代に活躍していた俳優の多くがトーキーへの移り変わりにスキルがついていけず、活躍の場を失っていった事実など。その辺の事前知識があると見やすいかと。

この映画はノーマのキャラクターに尽きます。「羊たちの沈黙」や「恋愛小説家」や「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」もそうなのですが、奇人が一人いると一気に作品に深みが出ておもしろくなります。ノーマも上記のアンチヒーローたちに並ぶ狂人っぷりです。

まずは圧倒的に悪趣味なセンス。邸宅からタバコを吸うときのヘンな道具、自分の写真が並べられている大広間、ヒョウ柄の車のシート、車の後ろについている謎の金の受話器。お金持ちの悪趣味が詰まったようなキャラクターで、爆笑しました(笑)。

そして危なっかしいほどの自尊心の高さ。精神が成熟していない状態で、スターになってしまう恐ろしい弊害です。金や権力や名誉に、中身(スキル)が追いついていないとこうなってしまいます。

これらの要素が決してフィクションではなく、実際に存在しているのがリアルでおもしろい。ハリウッドでスターになる人の中には、このように堕ちていく人がたくさんいます。人間って脆いな〜と改めて思います。

そしてノーマを演じるグロリア・スワンソンの怪演よ!!彼女の作品は恐らく初めて観たのですが、マジの狂気を感じる凄い演技でした。目から様子まで完全におかしかったです(褒め言葉)。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイスもそうですが、こういう役を演じることができる役者って最高です!

ストーリー構成もニクイぐらい上手い。最初にギリスが死ぬシーンを見せることで、ノーマのシーンがより怖く見えます。セリフも洒落ていてカッコイイ。特に好きだったセリフが「俺はあの彼女が吸っているタバコと一緒だ。完全に彼女に括り付けられている」。あの趣味の悪いタバコ固定指輪が、まさか比喩表現に使われるとは(笑)。

趣味の悪いタバコ固定指輪。タバコもギデスも彼女に括り付けられている

余談ですが最近は英語力がついてきて、直接英語を聞きながら観るように心がけているのですが、翻訳の仕事って大変だなと感じます。この映画のような洒落たセリフは英語ならではの表現が多く、直訳にすると伝わりづらいので、意訳のオンパレードです。英語と日本語の両方の語彙力と、言葉選びのセンスが求められる大変な仕事です。

「サンセット大通り」はハリウッドの闇を皮肉的かつスリラー調に描いた名作。ノーマの狂人的キャラクターとグロリア・スワンソンの怪演が光ります。

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