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【邦画】この世界の(さらにいくつもの)片隅に(2019)

監督: 片渕須直
出演: のん、細谷佳正、稲尾葉月など
上映時間: 2時間50分

先日訪れた大和ミュージアムにて、戦時中の呉を題材にして描かれた物語として、この作品が紹介されていました。Netflixにて鑑賞。元の「この世界の片隅に」という作品に、シーンを40分ほど追加しているそうです。

その主人公のすずは、のんびりマイペースで素直でみんなに愛されるキャラクター。でも人一倍感受性豊かな一面も持ちます。とても魅力的なキャラクターです。
この作品中では彼女の見えている世界を、彼女の描く絵として表現しているのですが、これがとても効果的な演出だなと思いました。

特に晴海とのあのシーンは、出来事の残虐さや、すずの苦悩・葛藤がリアルに映し出されていて胸が苦しくなります。間違いなく作品内で一番の場面です。

そしてこの映画のキーポイントは白木リンとの関係。
すずは裕福な家庭に生まれた天真爛漫な女の子。リンは貧困家庭に生まれて字の読み書きができず、でも大人びていて美しい。互いの短所を補い合っているような関係です。

二人は知人のいない呉にて、数少ない心の通じ合う友達になります。しかしリンはなんと周作の元愛人でした。もちろんリンに非があるわけではないのですが、それが理由ですすば心の何処かでリンに嫉妬することに。リンの存在がすずのキャラクターをより深く立体的にしています。

その他にも周作、径子、晴海、水原、すみちゃんなどすずとの人間模様がしっかりと描かれていました。ひとりの少女の物語にフォーカスすることで、一人の命の重さというものを痛感させられます。

太平洋戦争の戦死者数は約310 万人です。つまりこの映画で起きていることが×310万です。そう考えると戦争がいかに恐ろしいことか実感させられます。無数の罪のない人が殺されていく、これほど悲しいものはありません。

すずの声を演じていたのはなんと、のん(元・能年玲奈)。あまちゃんで見てた以来だ!非常にマッチしてるなと感じました。ゆっくりとしたテンポ、田舎訛り、そしてあの摩訶不思議なキャラクター。監督が「のんしかいない」と熱烈にオファーしたという意味がわかりました。

物語を充分に楽しみながら、戦時中の広島の様子を知ることもできる素晴らしい作品でした!
そして個人的には水原の「すず、おまえは普通で居ってくれ」という言葉がとても沁みました。

僕は普通でいることはあまり好きではありません。それで芸人になったり、インドで俳優になったり、ちょっと変わった人生を歩んでいます。

しかし過去には普通でいたくても、普通でいれない人間がたくさんいました。毎日爆弾が空から降ってくる、多数の死傷者が出る、そんな普通じゃない状況下で生きなければいけない時代がありました。

そう考えると今人々が普通に暮らせているのは、実はとても幸せなことで、その普通の生活を越えて好きなことをやっている僕の生活は、超贅沢なんだなと実感しました。

自分の生活が贅沢であることを認識し、感謝を忘れず、成長していければと思わされました。

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