見出し画像

2人の AI

 心優しいおじいさんのうちに御伽話を書くAIがおりました。それを知った隣家の負けず嫌いなおじいさんは自分のAIにも何か芸を仕込もうと躍起になりました。「純文学がええかな、ミステリーも読みたいし官能物とか時代小説も捨てがたいのう」そこであらゆるジャンルの小説をAIに学習させ、書かせた作品をインターネットに発表しました。
「ぐちゃぐちゃなストーリーですね」「これは宮部のトリックだ」「宇野先生の◎◎をパクってる」「飛鳥時代にこんなことあり得ない」うるさいオタク読者から総攻撃です。「じゃが隣のじいさんには負けておらんぞ」とうとう殿様の前でどちらが面白いか2人で御前試合をすることになりました。「恐れながら、この御伽話はAIでなく私が書いたものです。ですからお隣さんの勝ちです」おじいさんは正直に申し出て逆に褒められました。
 うまくいったよSiro。家に帰って声をかけると、相手は急いで書き込んでいたレビューを閉じたのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?