あるべき成仏宴 ①

 兄は男子ということで私と違いやたらと大事に育てられた。某名門校にギリギリで滑り込んだときは一家をあげて大騒ぎだった。
 兄はこんな話を始めるようになった。
「同級生のD(仮名)の家は超がつく資産家なんだ」
その金持ちぶりを夕飯の席で細かく説明する。両親は立派なお子さんと友達になれて良かった、お前も頑張りなさいと嬉しげだ。兄はこんなことも言い出した。
「Dの妹はうちの〇〇(私)と違って頭が良くて美人なんだ。すげえよな」
すると母はニヤニヤしてそういうお嬢さんとご縁があったらいいのにね。などと言うのだった。
 
 帰ってくるなり兄はガックリと肩を落とした。
「今日はDの通夜に行ってきた。すごかった。祭壇も参列者も戒名も半端なかったよ。この先何十年生きてもあんな成仏宴には縁が無さそうだ」

 当てが外れた。義姉は気位ばかり高く金遣いが荒かった。あの成仏宴を最後にD家の事業は傾いていた。両親はいつものように渋い顔で私をつつくのだった。

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