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新説なピン札②太郎物語 #毎週ショートショートnote

 おばあさんが川で洗濯をしていると上流からピン札が流れてきました。それで八百屋で桃を買うと中から元気な男の子が出てきました。その後の展開はみなさんご存知のとおり。問題が発生したのは鬼ヶ島からの戦利品の分け方を巡ってです。略奪に遭った家はみな被害届を出しており、主にそうした世帯に返還されることになりましたが、狙われたのはもともと裕福な家が中心でした。肝心の男の子の家は大した被害はなく、だいたいお前が出てきた桃さえ生えないずっと昔の話だ、ピン札だって実はうちの金庫から盗られたモノだしナンバーも控えてある、などと言われる始末。果たして桃の所有権や太郎の親権は誰のもので、かかった養育費、団子代、獣件費、出張費用、軍人恩給、武装経費等は考慮に入れるとしても、実際に被った鬼被害を超える宝物収入を得ているのではないかと厳しく追及されます。若い鬼の娘らが出廷してこの人にやられましたと証言するとの噂にピン札が飛び交うのでした。

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たらはかに様の裏お題に参加しています。

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