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しゃべる未曾有 ②

「口元がお兄ちゃんにそっくりね」
弟が生まれたとき、みんなが口を揃えてそう言いました。ぼくは何とも答えようがありませんでした。それって、つまり目は似ていないと言いたいのです。ぼくの目元には性格がよく現れています。やや吊り目でともすれば意地悪とかツッパリに見られがちですが、眉毛は困惑気味の八の字で人の良さが滲み出ています。脇役によくあるタイプです。それに対し弟の目は四角いメガネをかけたように全体的にマイルドな仕上がりです。眉は男らしく(よくない言い方ですが)ピンと斜め上にはねています。とは言え世間は僕らが身内であることを一目で見抜くのでした。ぼくに弟ができたことは家族にとって未曾有の喜びですし、皆さんにとってもプラスですよね。こんなふうにぼく未曾有がしゃべると、やれやれ兄貴だからってしゃべり過ぎないでよ常用でもないくせにどうせなら舊字體と舊假名遣ひでしやべつたらどうなの未曽有のやつが痛いところをついてくるのです。

410文字


  兄
  弟

たらはかに様の企画の裏お題に参加しています。 

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