ブーメラン発言道 🪃🍜編
彼はひとり山道を歩いていた。周囲には同じような装備で緩やかな道を歩む人の姿があった。
「行楽日和ですね。こんにちは。あなたも頂上のラーメン屋へ?」
そばにいた登山者に声をかけた。
「それにしても高そうなウエアですな。うらやましい。私は子どもの頃から親に贅沢するなと厳しくしつけられたお蔭でケチに育ってしまいました。なのに親は弟の奴には湯水の如く金をかけて甘やかしました。そして親が動けなくなったとき誰が面倒をみたと思いますか? 私ですよ全く割に合わない話ですよね。おお、頂上が見えてきましたな『因果覿麺』?」
「間にあったか!」
高そうなスーツの男が病室に入ってきた。
「兄さん、俺だよ。被害者さんへの損害賠償金のことはちゃんとカタをつけたから安心してくれ」
話しかけられた男はすでに聴覚を失いかけ耳に器具を取りつけられていたがモゴモゴと口を動かし何か反応した。全身に取り付けられたチューブと心拍のモニターが縮れた線を描いていた。
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たらはかに様のお題に参加しています。