「違法な健康」生存権編

　カフェテリアなんて名前負けもいいところね。メニューは『ヘルシー御膳』だけ。あたしは薄味の味噌汁と低カロリーなおかずが載ったトレイに向かい窓際の席に座る。斜め向かいで女が俳句雑誌を読んでいる。隣の席では哲学のノートを清書している人がいる。あーあつまらない。女子ばかりだ。サークルも文化系だし学部も文科系。しくじった。来年あたり受け直すか。キャンパスは賑やかな都会にあって男子学生が大勢いて食堂もメニューが沢山ある大学がいいな。
　俳句雑誌の女が話しかけてくる。
「あなたいったい何をしでかしたの」
哲学ノートの女が答える。
「黙れ。大人しく25条で保障された健康なメシでも食ってろ」
あらいやだ。演劇サークルの人だったのね。終身刑女子房だか神経科病棟を舞台にした作品の稽古をしてるんだわ。あんまり不健康なのは違憲よ。看守に言いつけてやる。

「ほーらお迎えでちゅよ」
保母さんが母の彼氏を示す。男のポケットからちぎれた馬券が見えた。

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