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「初めての鬼丼店」

 私はヒーローだ。島に乗り込み鬼城を攻め鬼の首を取った。私たちは熱狂的に歓迎された。
ある飲食店に立ち寄った折の話である。休憩する私の視野に薄汚れた張り紙が。
『鬼丼750円税込』
「この鬼丼とは?」
「あ、何でもねえす」
店主は慌てて引き剥がす。
「待て、話をきこうか」
「大したもんじゃねえす、鬼様、いえ鬼どものせいで明日をも知れぬ命、ゆっくり食えず、天麩羅、鰻、刺身、牛肉、トンカツなんかを丼飯にのせ出汁をぶっかけて食っただ。鬼の居ぬ間の丼飯、略して鬼丼」
「何やら美味そうじゃ」
「滅相もありゃせん」
店主は茶碗に盛った米と天麩羅刺身等を運んできた。だが私は鬼丼とやらが食べてみたくてたまらなかった。どうしたものか。
いっそ圧政を敷いてみるか? 

 結局私は立ち食い飯屋を開いた。鬼丼一号店だ。鬼の支配下にあった民は冷ややかだったが、本土の民は興味を示した。噂は噂を呼びモーターボート便による出前も、

「太郎や、何を一人でニマニマしとる?」

410文字

たらはかに様の企画に参加しています。
が、お題は初めての鬼丼⁉️に便乗します💦

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