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半分ろうそく②あるいはカインとアベル編

 道ゆく人が私を振り返り、
「もしやあなたは」
と声をかける。そう私こそ天才絵師。

 あの日のことはよく覚えている。一歳年下の弟が小学生になった。道具箱には新品のクレヨン色鉛筆B鉛筆がぎっしり。理不尽とは知りながら自分の権利を不当に侵害されたような憤りがこみ上げてきた。オレのお下がりを使えばいいのに。私は弟のクレヨンを奪ってロウソクにすり替えた。弟の描く線は白い画用紙の上をすべって薄く掠れた。彼が困惑して助けを求めてきたら兄らしく助け舟を出すつもりだった。だが不器用な弟は俯いてひたすらスケッチブックに向かっていた。

「先生は生まれつきの才能に恵まれていましたね」
「それは違います。私はとにかく人の倍の努力が必要だと気づいても諦めなかった。そこですよ」
私に瓜二つの男がしみじみと語っている。

その話は半分、陋、嘘、即、黒。
人の倍道具を使って私は無駄に言葉を分泌した。

留学費用も全部一人で使った。絵?
イエース、アイ CAN  D

410文字

RAW と言いかけると、えっ「キャンドル」?という反応が返ってくるのだった。


たらはかに様のお題に参加しています。


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