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助手席の異世界転生 ①

 転生したら助手席に座っていた。今度の人生はかの年寄りとわだつみ文豪のタイトルを借りたショートストーリーを膨らませ世界的に注目される賞も視野に入っているという。まさに原作者の名声に相応しい生き方だといえる。思えば前世か前前世も小説家だった。このときの筋書きはいすぱにあ人で、取り仕切っていた人物もまた世界的に知られた存在であったが、私の立場はスランプ気味でやり手エディターの妻の尻に敷かれる作家だった。しかも謎のカップルをストーキングするという隠微で不道徳な男。細かいことは忘れたが残念なことにこのときの刑事が問題を起こしてしまったせいでこの私の人生も陽当たりの良くないものとなった。だがクリエイターそれも女運に恵まれないタイプに転生するクセがついて八起き。
 運転席に目をやるといかにも個性と演技力と話題性に溢れそうな女性が座っている。キミは確か、ハイ来世は義経の正室として静香を押しのける予定です。

400文字

数年前の話題です。

追記
 
ドライブマイカー(以下ネタバレあり)がカンヌで受賞したときは村上春樹の原作短編だけ読んだからいいや、と鑑賞しなかった。あらためて見たら原作もワーニャ伯父さんもいい感じに忘れていて少しずつピースがはまっていく感じが心地良かった。原作にない要素は単なる増量剤というよりかなり戦略的に選ばれているようだが広島とか手話とか多言語劇とか韓国とか土砂崩れとかいかにもだなあ。そしてやはり主役の西島秀俊は少し前にたけしと共演した「女が眠るとき」での役どころとかぶっている。これを見たのはSSで助手席の異世界転生の話を書いた後で本当はどんな話なのか確かめるためであったが、よく考えたらドライバーが現れて主人公は助手席でなく後部に座っていたのだった。(そして西島秀俊は今度は指揮者に転生⁈)

たらはかに様のお題に参加しています。

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