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ほんの一部スイカ

 もう何年もスイカから遠ざかっていた。おひとり様と呼ばれる立場になる前からスイカと縁が切れていた。目覚めると家の前が川になっていた。上流から色々なものが流れてくる。小皿寿司、果物。拾ってしまってあとから「お会計」だの「中から元気な男の子」なんて流れになっても困る。用心深く見送っていると自治会役員らがボートを漕ぎながら「早く避難して」異常気象で大量のスイカが降って砕けた水分で川が増水したらしい。誰もがスイカを食べないせいだ。食べきれない、カットしたスイカの同じ種を持つ片割れが見知らぬ誰かの口に入っているかと思うと安心して夏の風物詩と一体化できない。
「そんなこと言っている場合か。我々はグローバルスイカの地中から発芽する新たな森林の問題に対峙し香りに誘われて飛来する昆虫それも害虫を追い払うのが急務だ」

悪かったね害虫で。

まあまあと差し出された健康に良くなさげな箱から一本いただいて一服すればバルサンの味ほんの一部喫いか

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たらはかに様のお題に参加しています。

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