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朝の逆転 ⑤
「やったぞ栄転だ」夫からの電話。この日をどんなに待ち望んだことか。なまじ機転が効くばかりに上役に目をつけられて損な役回りを押しつけられた挙句、さらに追い詰められて私まで社宅で上司の奥方にいびられる日々。このまま地方に出向いて流転を続けるものと思っていた。事態は急転する。不倶戴天の敵が尻尾を出したり、思わぬ人物が味方になったりするのさ。あら、たとえば別の金貸しのおかげで事業がうまくいって有名私立大学強豪体育会に所属できたりするように? そこまで綴ったところ、また周りの奥方から横ヤリが入る。なんだか生々しいお話だわ。もう少し穏やかな物語にできないの? そういうのは殿方に任せて、女子はなんといっても不倫恋愛ものよ。あちらの方のように。やれやれ。実家の父の任官騒動を思い出しながら書いたのに。私は筆を取り直してエッセイにする。「春は、夜がほのぼのと明けはじめるころが良い」そうよ、それよ。だって私たち平安朝なんだから。 409文字
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