オノマトペピアノ ①
見て! ジュンくんのツヤツヤの髪がサラサラとなびいてるわ!
ライトに照らし出された汗がキラキラ輝いているよ! ジュンはとろんとした眼差しで大きな両手をバーンと鍵盤に叩きつけたかとおもうと、白くて長い指を小刻みに動かす。そうすると手の甲から透けて見える中節骨がヒクヒクと上下し、水色の血管はつられて体操選手に操られたリボンのようにひらひらと泳ぎまわるのだった。時おりパッと時雨のように汗が飛ぶ。女たちはキャアキャアと騒ぎ、うっとりとその姿に見とれた。ジュンはうっすらと瞳を潤ませる。泣きたい。誰もボクの演奏なんか聴いちゃいないんだ。流れているのは別の演奏者のものだもの。
ピアニストは見た目ばかりが注目されていたのだ。
夕暮れ時彼の足どりはウキウキと軽かった。
「楽しそうだね」
見知らぬ人がニコニコと声をかける。
「お互い仕事が終わってヤレヤレだよね」
コクリと頷く。あのメロディー『カラスなぜ鳴くの』ボクが弾いているんです。
410文字
カラスなぜ鳴くの、は「7つの子」の歌詞の一部で、後半の「カアイ、カアイと鳴く」がオノマトペなのですが、一瞬どこかからお叱りが?と不安になりまして調べたら作曲家も作詞家も著作権が切れていました😅ホッ
たらはかに様のお題に参加しています。
なおこちらの記事にて、拙作「星屑ドライブ」を紹介していただきました。ありがとうございます。
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