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アナログ巌流島 ①

「ムサシ、学校でプリントもらったんでしょ見せなさいよ」
母に突っつかれて本宮武蔵はノロノロとランドセルを開けた。乱雑に放り込まれたノートや教科書やタブレットのあいだからしわくちゃの和紙が出てきた。
「遠足のお知らせ? 何よこれ? 明日じゃないの。それであんた、お弁当はおにぎりとサンドイッチどっちがいいの?」
「要らない。コンビニで買うから」
やれやれ、そう言ってもらえるとこっちも楽だけどさ。なんで手書き、しかも墨汁?これ筆ペン? 目的地、巌流島。集合場所、現地? やっぱ変わってるよね佐々木先生って。母はさっそく自宅から山口県船島までの経路を調べて新幹線の手配をした。

 翌日。チケットを払い戻した金で大量のオヤツを買った子供たちは仮想空間デジタル巌流島でのゲームに熱中していた。

その頃アナログ巌流島では。
「ムサシ、遅い!」
わが子だけを呼び出したに違いない佐々木と対峙するために先回りして上陸した母が待ちぼうけをくらっていた。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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