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あるべき成仏宴 ②

 伯爵アールベッキーの弔いの鐘が鳴った。領民は葬列に参加した。赤子を抱いた若い女が現れた。少し前までお屋敷で女中をしていたマリアだ。体調を崩して宿下りしていたのだ。人々の視線が集中した。領主のお抱えの道化師がフラフラとその娘に近づくと赤子の顔を覗き込んで叫んだ。
「これはご領主さま! 生き写しじゃ、ご領主様が生まれ変わって復活された!」
人々にどよめきが広がった。
「本当だ、瓜二つではないか!」
 すると未亡人となった奥方がカラスのごとき喪服姿で立ち上がった。
「非科学的なことを言うでない。生まれ変わりのはずがなかろう、現に夫はまだ生きているのだからな!」
パカっと棺桶が開き伯爵がムクリと起き上がった。
「領主様、この子は貴方様の」
娘が進み出たのと
「保険金詐欺だなっ」
刑事らが身を乗り出したのが同時であった。弔いの宴は赤子誕生祝いの席となり、そこに母子を静かに見守る道化師(実は領主の弟、ジョー・ブッツ)の姿があった。

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成仏がお題ですが、死人の出ないホッコリ落ちを目指しました🤡


たらはかに様の裏お題に参加しています。

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