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「A I」「2人用」②

 あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。二人はなかよしで、白い犬を飼っていました。犬はお利口で毎朝おじいさんが新聞の株価の面を広げると「これ買えワンワン」と吠えるのでした。
「ちょっと待ってよ。今『おばあさん』て言ったの?それにアタシこのあとほとんど出番ないのよ。単に高齢男性の一人暮らしは不自然だろうからってまるで「ついで」みたいに登場させられてさ。ひどい扱いね。許せない、もう朝ごはん作らないから」
 おじいさんはにっこりと笑いました。親父さすがだな。引きこもりニートのオレの将来を心配してイヌ型ロボットと配偶者女子を作ってくれたんだね。二人とも時代の流れを吸収して進化している。だがそろそろいいかな。その日がきたら花の下に埋めてくれ。ばあさん、じゃなくてチェリー。

 父が昔書いたおとぎ話だ。あの頃はずいぶんと心配かけたっけ。でも仕事と妻はアッサリ見つかった。今日は車椅子をつくったよ。シロとチェリー2人用の。

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こちらの企画に参加しています。今週2作目です。

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