見出し画像

スライダーの偉大な滑り方②

 公園の遊具に手をかけたところを母に制止された。社宅の上司の娘がやって来たのだ。
「お嬢様どうぞ」
私はブランコを譲り髪飾りをほめ母はにこやかに漕いで差し上げた。
 以来私たちは固い布団に寝て安いホルモンを食べ切磋琢磨した。

 転機は初めてジャンボ機に乗った日に訪れた。
「膨らみが足りない場合は口で息を吹き込んでください」
「手荷物は持たずに降りてください」
両手両脚を真っ直ぐ同じ方向に伸ばし手すり部分が心許なげなスライダーをおりかけるとパイロットの金切声が
「申遅れました、お客様のなかにお医者様は」
「あ、私タマゴで偉大生ごときですが何か」「すみません、一度言ってみたくて、」
それが彼との出会いだった。

 夫の実家の敷地に建ててもらった大病院に併設した保育施設の園庭には今日も大勢の子どもたちが遊びにくる。娘は彼らをうらやましそうに眺めては
「ママ、あたしも滑り台で遊んでいい?」
ときいてくる。
「もちろんよ、患者様のご家族のあとでね」

410文字

たらはかに様の裏お題に参加しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?