俺はメランコリックだよ!
私の友人には、俗に言う「凄い人」が多い。
そのことにかなりのコンプレックスを感じてきた。
もちろん、音楽がすごい、振り付けがすごい、デザインがすごいといった人たちもそうだが、普通に生きてるだけでなにかが起こる、そんな人もいる。どうやって立ち向かえというのだ。
学生時代から羨ましいなぁと思ったことは数知れず、だから、私はいつもみんなと違うジャンルへと逃げてきた。
今回はその中の友人からのお題「メランコリック」だ。
その友人はいうなれば「段取り」の達人だ。人の配置・スケジュール・お金の計算・予想の立て方。どれを取っても今まであってきた人の中で一番抜かりないと思う。あと、眼鏡が似合う。そして、女性にモテる。今も彼女がいるらしい。
奴は、女性にモテる。
一緒に短い映画や舞台を作ったりしたが、「それは~無理があるんじゃないかな~」と目尻にくっきりと皺を寄せて、ニヤニヤ言ってきやがる。
このジョーカー感。実際、だいたい彼が言ったことで、問題は浮き彫りとなり、私の悩みはスタートする。どうしたものか私一人では解決できない、そんなときに手を差し伸べてくる。そして問題は解消する。すべてお見通しらしい。
いつもそうだ、資金不足に陥って、どうしようもないから物販しようとしたら、どのくらい作ればいいか分からない。奴からの「無理があるんじゃないかな?」そのあと、奴は、完璧な作成数を提示、見事に売り切った。圧巻だった。
そして、女性にモテる。非常にムカつく。
ニヤニヤしながら毒っぽいこと言うから、性格悪いなんてことも言われてた気もするが、そのくせ、いつも気にかけてくれていた。
「なんか一緒に面白いことしようぜ」
いつも自分が他の人に淡い期待を込めて、言っていたことを彼は、私に言ってくれた。
というわけで、彼はおそらく現代生活で最強な気がする。
私は彼が得意としている「段取り」が一番苦手だ。例えば〆切日が朝9時なら、前日の夕方18時になって手を付け、泣きながら動画編集をし、作業量が多く、時間が予想以上にかかることに気づき、絶望する。いったん深夜にたらふく飲んだコーヒーで胃が荒れ、気持ち悪くなる。
情けない。
もちろん私だって、そんな風になりたくてやっているわけではないやい。世の中には誘惑が多すぎるのだ。
例えば、掃除をしようと思えば、山積みの雑誌から読んでいなかった小説のインタビューが出てくる。調べ物をしようとスマホを見れば、開きっぱなしのマンガアプリが通知を投げかけてくる。なんてことだ、面白過ぎるじゃないか。
今回の「メランコリック」というタイトルの意味は、分からなかった。絶対に奴は私はこの単語を知らないだろうと思って、この単語を選んだと思う。
はっはっは、そうだ、この単語、私は意味を知らなかった。
すんごくムカつく。
だから調べようとスマホを開いた。2時間後私は、野球ゲームのサクセスストーリーを2回終了させ、超人的な選手を作り上げ満足感に浸っていた。1試合に4本塁打。怪物誕生。
何か忘れているような、だが満足感でいっぱいだ。飲みかけのダイエットコーラを飲み、ベッドに倒れこむ。朝になり、もやがかかった頭でお題の事を思い出す。なんやかんやで昼になり、「メランコリック」を調べ始める。すると今度は大好きな星野源さんのドラマが配信サイトで・・・
といった具合に、2週間もたってしまった。
やっと、調べた。相当な覚悟だった。
メランコリック【melancholic】
[形動]物思いに沈むさま。憂鬱であるさま。(weblio辞書)
私はこの単語の意味を知り、全く書けなかった。やめようと思ったが、「しばの文章って上手いとか下手とかじゃ無く、不思議だよね」と奴に言われた事を思い出した。
最近、「お前は他人の心の底では嫌われている」と言われた私に、だ。
それで、持ち直したものの、うんうん唸って、悩みまくって、もう無理と思って彼に「ごめん、無理だ」とLINEをしようとしたときに、私は思った。
そういや、アイツが俺にテーマ出し合って書こうぜって言ったじゃん。
アイツがテーマは「メランコリック」って言ったじゃん。
また、アイツの一言で悩んでいる私がいる。そしてヤツの事を想った。
書けてしまったじゃないか。ヤツの話で。
また手のひらで転がされてしまったのか。
ここまでイメージされていた、のか?
とりあえず、ムカつくなあ。
こんなことを、だらだらだらと書いて終わりにしようとしたら、またアイツは目尻に皺を寄せて、ニヤニヤ言う気がする。
「その話無理があるんじゃない?」
2021/06/20
ヤツ↓
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大好きです。