オンライン集団精神療法の実践にあたるハードルについて、つらつらと

現在受講している大学院の授業で「集団精神療法を題材に反転授業を展開せよ」という無理ゲーが出題されています。


参考文献は弊ゼミのお師匠の文献です。(枕・・・)

組織開発の探求


集団精神療法とは「集団の心の動きを利用して、集団を構成する個人を治療するもの」(藤・西村・樋掛, 2017)を指します。第一次世界対戦時にPTSD(心的外傷後ストレス障害: post traumatic stress disorder)を治療するために生まれた概念です。様々な手法がありますが、今回は「ゲシュタルト療法」と「モレノの心理劇」をイメージしています(ここでは詳しい説明は行いません)。


大まかな流れは共通で、以下の通り進んでいきます。


①セラピスト(進行する人)とクライアント(カウンセリングを受ける人)が信頼関係を作ることによって、世界観に入り込む

②何かを表現して、心残りや心の奥底で考えていることを「見える化」する

③見える化された情報を元に「振り返る」

感情

(出所:『組織開発の探求』より改変)


あれ、これって、オンラインでできんの?

まず①対面していないので世界観を作るのが難しい。没入観をどう表現するか?。次に②どんなツールを使って見える化する?同じ空間を共有していない人々がどう世界観への没入を維持する?。最後に③クラアントはどう振り返り、セラピストはどうまとめる?(特に集団精神療法では振り返りに失敗するとクライアントの「心理損傷」につながりかねない。)


課題が多い気がする。なんとも無理ゲー・・・。


今回は大まかな方向性を考えてみました。

本日は頭出しで、授業の構築の段階や実践の結果などはまた今度書きます(書くと思います)。


大まかな方向性:授業内では、「見える化」に集中する

少し考えてみましたが、授業内では「見える化」に集中し、「世界観の構築」と「振り返り」は一部行うという方向性が良い気がしてきました。つまり、個人での思考を元にしながら、集団との接続を行います。

プレゼンテーション3

まず授業前準備では、ケース読み込み・アバターの作成・自己認識ワークなどを通して「世界観の理解ができており、個人の考えも接続できている」状態を目指します。ここでは1-2週間の時間をかけることができるため、私物や私生活空間なども利用しながら日常的に感じている心残りを出せるのではないでしょうか。


次に授業内では「個人でイメージする世界観の統合」と「見える化」、そして「グループプロセスの振り返り」のみを行います。特に「見える化」には大胆に時間を割くと良い気がします。加えて、ここではオンライン特有の「匿名性」、つまり「ここのわたしは本当のわたしじゃない感」を最大限利用することがミソだと思います。事前にアバターを作成してもらったり、チャットを利用して言いたいことを好き放題語ってもらったり、普段と違う服装をしてもらったりするのも手ではないでしょうか。


また、仮想空間の活用も考えられると思います。あえてzoomを捨てて、VRゴーグルでの動画視聴+音声通話、もしくは音声電話のみ、はたまたチャットのみ。出会い系サイトの電話シフトを見ていると音声電話の可能性はまだあるような気がします。


最後に授業内ではグループプロセスの振り返りのみに話題を集中させ、その後個人で時間を取り、情報と自分の内面の統合を行います。個人の振り返りをあえて切り出し、私生活空間の中で行ってもらおうという趣旨です。ただ、個人的には振り返りのハードルが一番高いと考えており、オンライン特有の「アバターと自分は違うものだ」という乖離した感覚が残ってしまうではないかと懸念しています。ここに関しては京都大学の時岡先生も言及されています。と考えると、「オンラインで行ったことは自分の本来の姿である」と認知させ、その上で自分で振り返る重要性を認知してもらうことが仕掛けるべきポイントになりそうです。


と、ここまで長文でつらつらと書きましたが、以外にいけそう?オフラインよりもオンライン下の方が強化できる点は多く、特に世界観に没入させる点についてはかなり可能性が高そう。仮想空間におけるアバターがそもそも現実世界と離れているので、役割演技のモードになりやすい点もあり。


などなど。

長くなってきたのでここらで切ります。


オンラインでの集団精神療法の実践例など、あまり見つからなかったので、あったらぜひ教えてください。


柴井伶太

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?