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キウイフルーツを襲う謎の病気の正体とは?_note2【イタリア】

キウイフルーツを襲う謎の病気の正体とは?

と、銘打っておいてなんですが、
結論として、この病気の原因については
はっきりとしたことはまだわかっていません。

なんじゃそら、と思われるかもしれませんね。

しかし新しい病気・症状が発見された場合、
人の病気とおなじように、植物においても
時間をかけて丁寧に研究していく必要があります。

では、今現在どのような研究がおこなわれているのか。
どのような仮説が立てられているのか。

今回はそのあたりの最新の研究内容について、解説していきます。

本記事は以下の記事の続きです。
ご覧になっていない方はまずそちらからご覧いただくことを
お勧めいたします。

謎の病気の正体とは?

イタリアのキウイフルーツ農家は
2012年頃からこの症状に悩まされてきました。

英語では、「kiwifruit vine decline syndrome (KVDS)」と呼ばれています。
日本語訳すると「キウイフルーツつる枯れ症」といったところでしょうか。
以下、仮に「つる枯れ症」とします。

これまでの経験から、このつる枯れ症は
水はけが悪く、湛水や通気不良となった土壌で多く発生する
ということが分かっています。

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さらに最近の研究によると、その条件に加えて
以下の原因が考えられています。

1.病原菌の存在
2.根に存在する常在微生物

病原菌の存在


植物も人間と同じように病気にかかり、病原菌が存在します。
種類としてはウイルス、細菌、そして菌類が主なところです。

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菌類(つまりカビ)というのは意外なところかもしれませんね。
しかし動物と違って、動くことのできない植物にとっては
糸状菌は天敵といっても過言ではありません。

つる枯れ症においても、この菌類が悪さをしている可能性があるようです。

2020年5月に、イタリアのトリノ大学の研究グループによって
卵菌類の一種Phytopythium v​​exansという菌がつる枯れ症を
引き起こすことが報告されました※1。

2_スクリーンショット 2020-11-07 164051

de Jesus, Ana Lucia, et al. (2016)より引用※2。一部改変。
上はPhytopythium v​​exansの写真で、丸いのは遊走子のうと呼ばれる組織です。大きさは大体30μmくらい。


(卵菌類は正確には真菌類ではありませんが、ややこしいのでまた別途ということで、、そして学名は本来は斜体もしくは下線で表記です。どうやってやるの、、、)

面白い点


個人的に面白いと思うのは、

この菌を乾いた土壌のキウイフルーツに接種するだけでは
感染は起こらないというところです。
土壌が水浸しの状態を続けた場合にのみ、つる枯れ症状が起こるのです。

不思議ですね。

なぜ、水浸しの土壌でのみ、この症状が起こるのか?

その謎の答えについては、
最近別の研究グループによって明らかになってきました。

次回以降、その研究内容について記事にしていきます。

以上、最後までご覧いただき誠にありがとうございました。

参考文献
※1 Prencipe, Simona, et al. "First Report of Phytopythium vexans causing decline syndrome of Actinidia deliciosa ‘Hayward’in Italy." Plant Disease (2020): PDIS-10.
※2 de Jesus, Ana Lucia, et al. "Morphological and phylogenetic analyses of three Phytopythium species (Peronosporales, Oomycota) from Brazil." Cryptogamie, Mycologie 37.1 (2016): 117-128.

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