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『犬王』を観て鎮魂されて無事成仏した話

ようやく、気になっていた『犬王』を観られた。

アニメ『平家物語』のスタッフが、能の平家物語を描く……というだけの前情報だけで観ました。

アヴちゃんの歌唱力に見事に射抜かれました!!!

アヴちゃんの超絶歌唱力+平家物語+ロックフェス=能という解が美しすぎて!!!!!!!!!!!!

なんか、もうこの映画自体が『平家物語』であり、『能』だなと思ったんですよ。

鎮魂としての『平家物語』

鎮魂としての『平家物語』は過去に和楽webにも書きました。

『平家物語』は「あはれの文学」とは言いますが、何を「あはれだ」というと、「人の死」なんですよね。

有名な人も、無名な人も死んでいく。物語の中にはさまざまな「死」が描かれています。その「死」を物語として、琵琶法師も語り継いできたのでしょう。

鎮魂としての『能』

能の演目に『修羅物』というものがあります。戦に負けた武士が主人公で、無念を語って成仏していく話です。

能の成立は、作中で語られた室町時代。室町時代は文化面で言うと「ルネサンス期」とも言えるような古典文学ブームでした。

南北朝の戦乱や鎌倉倒幕の記憶がまだ生々しい時代。その価値観の中で古典を元にの物語を創作していくわけです。

戦で戦って、死んでいった人は、仏教では修羅道に落ちてしまう。その魂がどのように救済されるかを描いています。

鎮魂としての『犬王』

犬王は平家物語を歌い踊ることによって、平家の魂を浄化し、犬王にかけられた呪いを解いていく話です。

犬王の演目に熱狂するのは名もない人々。犬王は名前しか歴史に残らなかった人物。そしてその犬王の物語を語り継ごうとしたのは、名を変え、「オレはここにあり」と叫びつづけた友魚(友一・友有)でした。

みんな歴史の中に消えていきますが、友魚は亡霊となって現代まで歌い続けています。しかし亡霊なので誰もその歌に気づきません。

700年経ってやっと友を見つけた犬王と共に成仏していくのでした……。

もう……これ自体が能の筋書きじゃぁないですか!!

能で救済されるのはやはり歴史的に有名な人々なんですが、『犬王』で救済したかったのは、歴史に残らなかった人々……あの頃生きていたすべての人なんだなって思いまして……。

それってもはや平家物語じゃぁないですか!!

ひぇえええ! すっげぇえええ! と思って。

そしてアヴちゃんの歌唱力によって、もう私の魂も浄化されましたよね……。

あ、いや私はまだこの世にまだ未練残してるんで、成仏はもう少し待ってもらいますけれど。


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