真冬のつくばで凍死しかけた話

■先日、家の鍵を忘れてつくば駅前でパニックに陥っている様子をX (旧twitter)で実況してしまい、多くのフォロワーさんから心配するリプライをいただきました。本当にお世話がせしました。改めて深くお詫び申し上げます。
折角なのでというのおかしな話ですが、今後私と同じような経験をする人が出ないために、またこの街に慣れていない大学の新入生諸氏や、転入して来られた方々の参考になればと思い、当時の状況を恥を忍んで書き残します。
*以下、「~である」調。

■あの日、私は旧知の親友たちと駅前で会合し、いい気分になって駅から家に向かった。時間は午前1時半を過ぎていたと思う。途中でコンビニに寄り、朝食など購入してから、道すがらモンハンnowでその辺のモンスターを借りつつ家に戻り、マンションのエントランスを開けようとした。しかしいくらカバンの中を弄っても鍵の手ごたえがない。
いやいや!そんなことはないだろう、暗いし酔っぱらっていて手元がおぼつかないだけで、本腰を入れて探せばあるはずだ・・・やはりない。
いよいよ焦りつつ、そうだ家の鍵は車のキーと一緒にまとめているから、マンションの駐車場に近づけば、カバンのどこかに埋もれている車のキーがリモートで車に反応して音が鳴り、家の鍵も発見できるはずだとぼんやりした頭で考え、車に近づく・・・何も反応がない。
ついにパニックに陥りながらも、自分が鍵を忘れて家に入れないことを、愚かにもこの時になってはっきりと自覚した。

都内であれば解決策は簡単だ。その辺のネットカフェ、あるいはカプセルホテルに駆けこんで寒さをしのぎ、始発を待てば家に帰れる。しかしここはつくば。さらにコロナ禍を経て24時間営業の店はほとんど無くなってしまっている。特に研究所の多い、つくば駅から南側のエリアでは店そのものが極端に少ないのだ。
酔った頭では解決策が浮かばず、しかも外気温が1度という環境下でいよいよ思考が朦朧としてきたとき、30分ほど前に起動していたタクシーアプリで奇跡的に車両が1台予約できたと通知がきた。週末の、しかも真夜中のつくばでは本当に稀有なケースだ。

この時点で本格的に意識が朦朧とし、激しい頭痛も伴っていたが、とにかくタクシーで駅前に戻り、2時までやっている知り合いの店に駆けこんでホット烏龍茶を飲んで体を温めつつ善後策を練った。ここもすぐに閉店時間を過ぎるので、あまり迷惑をかけるわけにはいかない。調べると近くのカラオケであれば5時までは営業しているという。しかし真冬の5時に店をおん出されればまた夜明けまで寒い環境に逆戻りだ。

もはや5時以降は、野外で何とか耐えるしかあるまいと半ばやけくそ気味に考え出していたとき、たまたま夜中に起きだしていた妻が私のDMとXでのパニック実況に気づき、救出してくれたのであった・・・感謝。

正直、このエピソードへのツッコミどころは沢山あると思う。まずはいい歳をした大人が鍵を忘れるなよということ。更にいくらつくばとはいえ、駅を少し離れれば24時間営業のお店も数店舗はあるだろうということ。数え上げればきりがない。
しかし酔いと寒さに晒されると人の行動力と思考力がここまで低下するというのを今回は心の底から実感した。
ごくたまに、同じようなケースで凍死した事例を見る。自分が経験するまでは、まさかそんなことが簡単に・・・と思っていたが、起こりえるのだ。

つくばに住んで25年、この町は本当に暮らしやすくなり、家族や子育て世帯に優しい店も増えた。何より研究者やスタートアップにとても優しい街だ。2023年にはついに人口増加率が初の全国1位に、転入超過で見ても全国の市町村で14位を記録した。自分もこの街でこれからも生活していくと思う。

でも首都圏と異なり、静かで生活しやすい環境が、時にこういう事態を招くということも今回よくわかった。どうか私のような愚かな間違いが繰り返されることの無いよう、この記録を残します。
■最後に、ご迷惑をおかけした方々、ご心配下さった方々に改めてお礼と感謝を申し上げます。有難うございました、そして申し訳ありません。
芝原暁彦

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