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恐竜学からイノベーションを起こす、「VR恐竜シンポジウム」と「VR科学博物館」、そして「恐竜技術研究ラボ」

VR恐竜シンポジウムとは

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛要請により、博物館の入場者数が制限されたり、あるいは科学系のイベントが中止になったりなど、科学教育と博物館の活動に大きな影響が発生しています。
 そんな世の中にあっても科学教育の歩みをストップさせず、むしろテクノロジーでそれらを強化し、今までにない教育の方式を追求していきたい。そんな思いの元、私たちは2020年5月より月に一度、VR空間内で化石や地学の解説をプロの研究者が行う「VR恐竜シンポジウム」を開催してまいりました。
 

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VR恐竜博物館の外観(3Dモデル選定・配置:今井拓哉助教(福井県立大学恐竜学研究所/恐竜技術研究ラボ)、ロゴ製作:ツク之助氏(サイエンスイラストレーター))

 このシンポジウムでは、バーチャルSNS「クラスター」内に恐竜の全身骨格をはじめとする数々のコンテンツを配置した「VR恐竜博物館」を建設し、博物館内で研究者が最新の研究情報や、プロの職を得るまでの道筋、研究現場での「あるある」など、研究者でしか知り得ない情報を分かりやすく解説することで、地質学や古生物学をより身近に感じていただくことを目的に行っています。現在までに3回のシンポジウムを実施していますが、各回とも累計約200人、多い回では400人を超える方々に来場いただき、好評を博しております。

VR科学博物館の設立

 この好評を受け、私たちは「VR科学博物館」という組織を立ち上げることにしました。この組織では、VR恐竜博物館を中心に、後述する「恐竜技術研究ラボ」で新たに開発している様々な分野のVR博物館を一元的に管理し、世の中に役立てていくことを目的としています。こうしたVRコンテンツは、自粛期間の間だけ使われるものではなく、むしろそれが終了し、本格的に人々の活動が日常に戻った時に、既存の博物館展示や地学教材と組み合わせることで、まったく新しい日本ならではの教育支援システムを構築するためのものです。

博物館を主宰する「恐竜技術研究ラボ」と「地球科学可視化技術研究所」

 このVR科学博物館とVR恐竜シンポジウムは、わたしたちが所属する「恐竜技術研究ラボ(通称Dinotech Lab)」によって主宰されています。

 このラボは、産総研*発ベンチャー「地球科学可視化技術研究所」(CEO 芝原暁彦・CTO 大道寺覚)と、福井県立大学恐竜学研究所とが協力し、2020年の4月に設立させました。同大学からは、恐竜学研究の第一人者である東洋一名誉教授、今井拓哉助教にご参画いただいています。また古生物学イラストレーターであるツク之助氏に、特別技術顧問として就任いただきました。*国立研究開発法人産業技術総合研究所

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 地球科学可視化技術研究所では、「博物館からイノベーション」というキーワードのもと、古生物学者のCEO芝原と、デジタルものづくりの第一人者であるCTO大道寺がタッグを組み、地質学研究によって明らかとなった世界中の地層や化石、あるいは活断層や火山などの位置情報を、最新の3Dプリント技術やプロジェクションマッピング、VR技術を使った仮想体験などの手法を使って分かりやすく可視化する技術を開発し、それらを世界各地の博物館や教育機関などで展示、さらにその展示物を使った地学教育のコンサルティングを行うなど、「地質学の社会実装」を率先して行ってまいりました。

 恐竜技術研究ラボでは、こうした経験を活かし、恐竜研究における様々な課題を解決する、AIや3D可視化技術を活かした新しい研究手法を開発していまます。また、恐竜学研究所で得られた研究成果を、地球技研の情報可視化技術、並びにネットワーク技術を用いて教育や地域振興に活用し、社会還元することを志しています。つまり「恐竜学の社会実装」が我々の次の目標であり、VR恐竜シンポジウムはその大きな第一歩と言えます。

 これまでも人々を魅了し、子供たちに夢を与えてきた「恐竜」や「博物館」。それらを新しいテクノロジーによって、より社会に役立つ機関へと進化させる、そんな私たちの活動に、ぜひご期待ください。

 

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