見出し画像

「テート美術館所蔵 コンスタブル展」2021年3月4日の日記

画像1

・午前中に仕事を終えた後、丸の内の三菱一号館美術館へ行った。先月から新しい展覧会、『テート美術館所蔵 コンスタブル展』が開催されている。開期は5/30(日)まで。

・テート美術館(テート・ギャラリー)はロンドンにある国立美術館で、コンスタブル、ターナー、ゲインズバラなど、イギリス出身の芸術家のコレクションをメインに収蔵している。

・そしてこの展覧会の主役、ジョン・コンスタブルは、1776年イギリス生まれの画家で、風景画を生涯の生業とした。当時の画家には裕福な家から人物画の注文(もちろん、家の当主とその家族の人物画)が来ることが多く、コンスタブルも生活のために人物画を描くこともあったけど、風景画、特に自分の故郷の風景を描くことにこだわり、生涯に渡って描き続けた。今回の展示でもその魅力的かつ大型の風景画がいくつか展示されている。

・Google artsでいくつか作品を載せようと思ったけれど、まだGoogle arts&cultureのパブリックドメインで登録されていなかったので、作品の詳細は上記リンク先の企画展公式HPから確認されたしとしたい。


・コンスタブルはイギリス出身の風景画家として知られているけれど、この展覧会ではもう1人、イギリス出身の風景画家で忘れてはいけない巨頭がいる。
・コンスタブルと同時代を生き、コンスタブルのライバルとも言われている風景画家、ターナーである。


・生涯イギリス国内にとどまり、地元差フォークやハムステッド、ブライトンなど、自分と関わりの深い地域の作品を頻繁に描いたコンスタブルとは対照的に、フランス、スイスなどヨーロッパ各地も渡り歩いて様々な風景を描いたターナー。
・2人の比較は三菱一号館美術館の下記資料「みどころガイド」にとてもわかりやすくまとまっている。


・今回の展覧会の見所は、コンスタブルの生涯を背骨としながら、そのライバルであったターナーとの比較、同時代に活躍した画家、そしてコンスタブルに影響を与えた画家たちの作品が多く集まっていること。
・そしてなにより、”コンスタブルとターナー”という構図を確立させたといっても過言では無い、伝説的な展覧会が再現されていること。


・その伝説的な展覧会というのは、1832年のロイヤル・アカデミー展。
・この展覧会において、コンスタブルの大型作品《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》の隣に並べて展示されたのが、ターナーの大型作品《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》。


・コンスタブルの作品は、式典をテーマとしているだけあって、赤と金を基調としていて、たくさんの人も描かれている明るくて力強い作品。一方ターナーの作品は、海原を帆船がゆく情景を描いていて、白と青を基調として静かな印象を受ける作品。
・この企画展ではこの2作品がかつてのロイヤルアカデミー展のように、1つのフロアを使って2つ並べて展示されている。


・コンスタブルの《ウォータールー橋の開通式》、実物を見るとものすごく色鮮やかで、これが展時されている部屋に入った瞬間に目を引く。
・人が描かれていると、それだけで画面の生気が濃くなる気がする。


・ターナーの《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》は、空の描写がすごすぎる。去年国立西洋美術館で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に来ていたターナーの作品《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》もすごかったけど、ターナーの空は神話性すら感じる。雲の向こうになにか潜んでいそうな雰囲気がある。


・このたった2作品だけでも、コンスタブルとターナーの魅力を十分に感じることができる。



・私が今回の展覧会で個人的に好きになった作品は、コンスタブルの《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》。
・多くの作品と同じく、コンスタブルの故郷、フラットフォードの何気ない光景を描いたものだけど、この作品を描いたのは、コンスタブルが故郷を離れる直前の時期。画面手前にいる少年は、少年時代のコンスタブル自身を描いたと言われている。(作品は下記リンク先の『2章』の部分で観ることができます)

・エモい。やることがエモい。少年は自分が過ごした故郷を振り返るように後ろを振り向いている。


・展覧会の最後のエリアは、一点だけ撮影可能な作品が展示されている。コンスタブルの《虹が立つハムステッド・ヒース》。

画像2

画像3

画像4



・この展覧会の広告ポスターには、「光を描く、空気が動き出す。」と書かれているのだけど、この展覧会で展示されている多くの作品は風景画。つまり光というのは太陽の光で、ローソクなど人工的な光は今回の作品ではほとんど観られない。
・最後の《虹が立つハムステッド・ヒース》などはまさに、光と空気が描き出す自然の絵画を捉えたものだし、自然の持つ力強い生命力や神秘が感じられた。18世紀~19世紀のイギリスはまさに産業革命のまっただ中にあって、環境問題というものがもしかしたらはじめて一般市民にも注目されたタイミングかもしれない。


・こうした歴史的背景も重なって、コンスタブルやターナー、そのほか多くの風景画家の描いた風景画は特別な意味合いを帯びているようにも思える。(画家たちにその意識は無かったかもしれないけど)


・三菱一号館美術館の『コンスタブル展』は5/30(日)まで!ぜひ!



・質問など募集しています!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?