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「ルドン・ロートレック展」2020年12月12日の日記

・丸の内の三菱一号館美術館へ行きました。
・三菱一号館美術館は、今年開館10周年。それを記念して、同館のコレクションの中心的存在である1880年~1890年代の作品の中から、「オディロン=ルドン」と「トゥールーズ=ロートレック」の作品にスポットを当てた特別展が開催されている。(2021年1月17日まで)


・三菱一号館美術館へは、学生時代から何回も足を運んでいて私にとっては馴染みのある美術館だし、鑑賞前、ここへ足を運んだ私の鑑賞の心持ちとしては、まさに”なんとなく行った”だったのだけど、想像を遥かに超えてめちゃくちゃのめちゃに素晴らしく良い展覧会だったので、日記にちゃんと残す。えらいぞ。なんだかこれぞ日記をやる価値があると言えそうだ。


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・丸の内は立派にクリスマスだったのでちょっとテンションが上がって、それと同じくらいの上昇率で焦った。なんで?


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・着きました。
・入館時にはこの場所の広場で子どもたちが遊んでいて写真が撮れなかったので、これは観終わってから撮って明るく補正した写真です。



・入館して早々、音声ガイドの媒体そのものが変わっていたので驚いた。

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・以前は、多くの美術館と同様に、音声ガイド用のオーディオ借りて首から下げて聞く、という方法だったけど、今回は三菱一号館美術館のアプリを自分のケータイにダウンロードして、入館時に配布されるパスワードでログインし、自分のイヤホンで音声を聞く、という方法に代わっていた。


・これの良いところは、展覧会を観終わった後も、自分で好きな時に音声ガイドを聞き直すことができること。
・音声ガイドを聞き直せるのすごくいいな。



・オディロン=ルドン(1840~1916)について

・展覧会では、ルドンの描く作品が「黒→パステル」へ移り変わる様子をわかりやすく展示されていた。
・ルドンは39歳で画家としてデビューしてから長いこと、木炭やリトグラフ(版画の一種)で作品を作る「黒」の画家として活躍していた。もうひとつ特徴的なのは、同世代の印象派の画家たち(ルノワール、ピサロ、モネ、ゴーガンなど)が実世界である風景画や人物画などに力を注いでいた一方で、ルドンは夢や空想の世界に目を向けていたこと。

※以下、紹介する作品はすべてパブリックドメインです。また、その都合上、今回の展覧会では展示されていない作品も含みます。

・オディロン=ルドン「ケンタウロス」

・「沼の花、悲しげな人間の顔」

・「夢の中で(発芽)」


・白黒で幻想的かつ、なんだか不気味な作品たち。そんな中、1894年に50歳を過ぎて、ルドンは自身の個展で初めてカラーの作品を公に発表する。

・「ペガサスに乗るミューズ」

・「蝶」

・「仏陀」


・実際の展示では「神秘的な対話」という作品がまず目に飛び込んでくる構成になっているのだけど、この色彩の開花が劇的で、一度見たらかなり印象に残る。


・ルドン自身が黒色を「本質的な色である」と位置づけており、長年黒を主体とした作品を作っていたこともあり、ルドンの作品には観る者の目を引き寄せる力があるように感じる。
・もう少し個人的な言葉で具体的に言うと、ルドンの作品が目に入ったとき、ルドンは描きたい対象物がハッキリしているので、視線の焦点がすぐに一点に定まる。


・もともとそうした引き寄せる力を持っているルドンの作品がカラー(パステル)になったことで、ルドンの思い描いていた空想の世界が一気に現実味を帯び、身近な世界になったと感じる。


・私は最初、ルドンの黒の時代の作品を観たとき、不気味だなぁと思ったけど、ルドン自身が思い描いていた風景は、もっと鮮やかで穏やかな色彩の風景だったのかもしれない。


・黒の時代からパステルへ。ルドンの展示で一番印象に残ったのは世界の広がり。



・トゥールーズ=ロートレック(1864~1901)について

・パリでポスター画家として人気を博したロートレック。
・19世紀後半、パリにおいて流行の最先端を市民に知らせ、流行を作り上げていたのは街頭のいたるところに掲示されていたポスターでした。
・今でいう電光掲示板やSNSの広告のようなポジションと言えるでしょう。


・それまでただの情報伝達の手段でしかなかったポスターに、ロートレックは芸術的な手法を取り入れてセンセーショナルを巻き起こします。


・「アリスティド=ブリュアン 彼のキャバレーにて」

・この作品で描かれている男性は、当時パリで大人気のシャンソン(フランス歌曲)歌手、アリスティド=ブリュアンの宣伝ポスターです。
・ブリュアンは自らロートレックにポスターの制作を依頼していました。


・ブリュアンが開いたキャバレー「アンバサドゥール」にロートレックは訪れ、ブリュアンの歌声や夜の街の魅力に引き込まれ、夜の世界に入り浸るようになります。
・そしてブリュアンもロートレックの才能を見抜き、2人の交流が始まります。


・先ほどのブリュアンを描いた作品に戻ると、ムンと結んだ口元、キリリと上がった眉毛、まるで写楽を見ているかのようです。
・実際、ロートレックは当時のほかの画家たちのように、浮世絵をはじめとする日本の美術作品に魅了されており、その影響を色濃く受けています。

・「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」



・今回の展覧会の一つの目玉であり、ロートレックの非常にかっこいい作品を紹介します。


・「アリスティド=ブリュアン 彼のキャバレーにて」


・かっこいいでしょ。
・まるで歌舞伎役者の立ち絵みたい。
・一般的に、西洋の油画では前述したルドンの作品のように、画面の全面に色が塗られていて、全くの空白は存在しないことが多い。
・だけどロートレックのこのポスターでは大胆に空白が取られていて、さらにブリュアンに縁取りがされていて、存在感が強調されている。


・ブリュアン本人の貴重な音源はなんとYouTubeに公開されている。



・その他にもロートレック作の大判のポスターが多数展示されている。
・このようなポスターがたくさんパリの街なかを彩っていた時代、”粋”だねェ...。


・人気の画家が手掛けたポスターは、掲示したそばから盗まれてしまうこともあったとか。



・山本芳翠(やまもとほうすい:1850~1906)について

・今回の展覧会で一番行って良かったなって思えたのは、山本芳翠の作品に初めて出会えたこと。


・芳翠はフランスに留学して、ジャン・レオン・ジェロームに学んだ日本洋画の第一人者。
・ちなみにルドンもかつてジェロームに学んでいる。


・今回の展覧会で展示されている作品のひとつ、「裸婦図」は、国の重要文化財に指定されている。

・「裸婦図」


・画像だと伝わらないな...。
・描かれているのは人か妖か、こんなになめらかに描かれた作品は見たことが無いかもしれない...。
・中心に描かれた裸婦から光が出ているかのように感じてしまう。照明の当て方と言ってしまえばそうなんだけど、それにしてもほかの作品とは一線を画した存在感があった。


・裸婦図の隣に「浦島図」が展示されている。

・「浦島図」

・おなじみのおとぎ話「浦島」を、芳翠が学んだ西洋画の手法で描き上げた作品。
・浦島太郎が玉手箱を持って、故郷へ帰るシーン。
・背景に見える竜宮城は、パリ万博の景色を映しているといわれている。



・展覧会ではルドンとロートレックが没するまでの作品が時系列順に展示されている。
・この展覧会にはもう一度行こう。
・ルドンの黒→パステルの変貌、ロートレックの粋なポスター画、山本芳翠の美しいを超えて凄まじい”生命”を感じる作品たち。
・1回では受け止めきれないワ...。


・おすすめです!!!!



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