見出し画像

「3年間で1万円以上損していた。」2021年7月22日の日記

・午後は東京都美術館のアート・コミュニケーターの活動のひとつ、実践講座の中の「アクセス実践講座」を受けた。第2回である今回のテーマは「経済格差とこどもたちの文化的状況」と、「台東区における多文化共生の実践」の2つ。
・それぞれのテーマについて1時間ずつ、前半のテーマではNPO法人キッズドアの代表の松見幸太郎先生に。後半のテーマは一般社団法人リテラシーラボの代表の千葉偉才也先生に講義いただいた。



・前半に講義いただいた松見先生が代表を務めるNPO法人キッズドアは、様々な理由により経済的に貧しい子どもたちのための学習塾を主な活動の一つにしている。対象は小学生から高校生までと幅広い。

・経済的に貧しい家庭や、その子どもたちが抱えている課題や現状について講義いただいた。都美館のHPに書いてあること以上に詳細に内容を書くことは控えるが、ひとつ、印象に残ったことをピックアップして書く。


・それは、家庭の貧困さを、子どもだけを見て見抜くことは難しくなっている。ということ。
・貧困は、「絶対的貧困(食べ物がなくて飢える・着る服が無い・家が無い等)」と「相対的貧困(修学旅行に行けない・部活ができない等)」に分けられる。絶対的貧困はその服装などの見た目から判断ができるが、相対的貧困に該当する家庭の多くでは、子どもが学校生活に馴染めるように、親は自身の食費を削るなど無理をして、子どもに綺麗な服装をさせたり、スマホを持たせたりしている事も多い。スマホを持っているから貧困でない、とは言えないのである。


・貧困はまた、「大学進学はしたくても学費が払えないから進学できない」であったり、「そもそも大学入学共通テストを受験する受験料が払えない」など、子どもの学習習慣や学習意欲にも影響を及ぼしてしまう。
・あまりに「○○できない」ということが続くと、社会に出てから人の話を自分事として捉えられず、なかなか「人の話を聞く」という習慣が身につきづらいという弊害もあるようだ。例えば中学に上がるまで、一度も家族旅行に行ったことが無い。家族と買い物に行って好きなものを買ってもらうという経験が一度も無い。という場合、学校で先生が例え話として家族旅行や買い物を挙げても、そのイメージができない。結果的に「話をきいていない」かのように扱われてしまうことがある、ということだった。


・貧困はどこかで食い止めなければ連鎖的に、子どもの人生に大きく影響していってしまう。
・美術館としてできる取り組みはなにか?わたしの今後の課題としたい。



・後半、「台東区における多文化共生の実践」においては、台東区と一般社団法人リテラシーラボが協同している取り組みの一つ、子どもたちによる、異文化理解をテーマとしたビデオ作成を題材に講義いただいた。
・10分程度のこちらの動画を教材に使った。
・子どもたちの教室で、給食が出るにも関わらず、いつもお弁当を持ってくる子がいた。そのことからアイデアが思い浮かび、異文化の食生活にスポットを当て、子どもたちが取材と撮影を行い、大人たちが編集したビデオ作品。


・カレーをみんなで作るシーンがあるが、あれはもともと撮影前に予定されていたものではなく、1回目のモスクでの取材が現地の方々にとても喜ばれ、モスクに来ていた方々によって子どもたちのために企画されたものとのことだった。
・そもそも、「異文化理解」とか「異文化交流」という言葉は大人たちが考えたものであって、実際、義務教育時代から教室に当たり前のように外国籍の子どもがいるという環境で育った子どもたちにとっては、「異文化を理解しよう」という課題自体が不自然に感じることもあるようだ。


・このビデオ作品から学べることは、子どもたち以上に、そうした環境を当たり前として過ごしてこなかった世代にこそ多いと思う。



・夕方、先日公開されたばかりの映画、細田守監督作品の最新作、「竜とそばかすの姫」を観ようと思っていた事を思いだし、観に行った。20時過ぎに終わる一番最後の回だったこともあってか、お客さんは客席の1/3ほどだった。


・ところで、わたしの勤め先では、いくつかの施設やサービスで社割を使うことができる。何の気なしに映画館で社割が使えないか観てみたところ、わたしが普段行く映画館の全てで500円割引が使えることが判明した。


・まじ。いや、嬉しいけど、この3年間、わたしは全て定価で映画を観てきた。映画館に行く頻度は多いわけでは無いけれど、気に入った映画は2回3回と観に行くし、3年間で20回~30回くらいは観てきたはず。つまり、これまで累計1万円以上損している事になる。


・初めて使う社割で「竜とそばかすの姫」を観た。


※以下、「竜とそばかすの姫」のネタバレを含みます。



ネタバレ含みますよ?



いいのね?



・これくらい注意喚起しておけば大丈夫なはず。


・面白かった。これまでのように時間と共に動くストーリーをじっくり見せることで物語を進行させてきた細田守監督作品と違い、少ない登場人物、狭い世界観、小さな事件(人命に直接関わらない)、回想シーンの連続によって物語が動いてゆく。
・前半の世界観や人物の背景の描写が丁寧だなと感じた。体感だけれど、上映時間の半分くらいまでは事件が大きく発展するような描写は無かったんじゃないかと思う。


・今作は、同じくインターネット上の仮想世界を舞台にした2010年公開の細田守監督作品、「サマーウォーズ」と比較されることが多いが、そのストーリー展開は全く異なる。
・細田守監督作品では、明らかなパロディーが含まれることが多いけれど、今作はずばりディズニーの「美女と野獣」をリスペクトしたパロディが、特に後半になればなるほど多分に含まれていた。


・そもそも、主人公でヒロインの「U」上でのキャラクター名が「ベル」であることからそうだ。美女と野獣のプリンセスも「ベル」だ。
・2人が竜のお城でダンスするシーン、そしてそのカメラワークだってまさしく美女と野獣そのものであった。


・竜の正体とその居場所が突き止められるシーンは、主人公の周りの登場人物たちが持つ断片的なヒントが一気に組み合わさる見せ場の一つだけれど、ここは「サマーウォーズ」で陣内家の身内たちが職種を活かしたサポートで主人公を助けるシーンに近い爽快感があった。


・あとはなにより音楽が良かったな。AmazonプライムビデオやNetflixなど、優秀な動画配信サービスの普及により、映画館は苦境に立たされるのではと危惧されているけれど、「竜とそばかすの姫」のように、音楽が物語の重要なファクターである場合、その音楽が際立つシーンで、映画館の優れた音響を活かしてくれるのはまさしく映画館にきて映画を観る意義があるものと思う。エヴァなんかも「映画館の音響で聴かれることを想定して音楽や音響を作った」と監督が言っていた。


・音楽を重視した映画制作はこれからさらに活発になっていくんじゃないかな。
・わたしは特に一番冒頭の「U」をベルが歌っているシーンが好き。アガるから。


・ストーリーの面白さもあるし、なにより音楽が素晴らしかったので、あの音響を体感しにまた映画館へ観に行きたい。
・500円引きの社割を使って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?