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社会人基礎力を育む方法

新入社員ならどの企業でも目にするであろう言葉の1つに、“社会人基礎力”があります。
社会人基礎力とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力」として、2006年に経済産業省が提唱したものです。
具体的には、目的(どう活躍するか)、統合(どのように学ぶか)、学び(何を学ぶか)という3つの視点と、前に踏み出す力(主体性、働きかけ力、実行力)、考え抜く力(課題発見力、計画力、想像力)、チームで働く力(発信力、傾聴力、柔軟力、状況は握力、規律性、ストレスコントロール力)の3つの能力が指示されています。

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これらの能力指標は、社会で活躍する人を育てることが目的である教育のフェーズにおいても重要な指標の一つです。そしてこの社会人基礎力を育てる効果的な手段が研究であると私は思っています。
今回は研究がいかに社会人基礎力の向上に役立つか書いてみようと思います。

論文執筆が「考え抜く力」と「前に踏み出す力」を育てる


研究の定義は様々ですが、今回は、「誰も知らないことについて、調べ、考え、明らかにすること」とします。私は研究論文を書くことを通じて、社会人基礎力の「考え抜く力」と「前に踏み出す力」が同時に育まれると考えています。

私自身は学部レベルの論文しか書いたことがないので偉そうには言えませんが、論文を1つ完成させるのはとてもパワーが必要です。
まず、最初の関門は研究のテーマを決めること。研究テーマを決めるためには、問題を見つけるためのアンテナ、研究テーマ周辺の予備知識、更には「自分はどのようなことに興味・関心があるのか」といった自己理解も求められます。
研究テーマが決まっても、研究が進む度に、情報がごちゃごちゃして、練り直して、整理して…の繰り返し。だからこそ、緻密に計画し、実行する必要性も差し迫ってくる。

こんな過程を通じて、課題発見力や計画力、実行力が磨かれていきます。

研究で気づかされる事実「ブラックボックスは存在しない」

ちなみに、計画力や実行力がある状態とない状態の違いは「ブラックボックスは存在しないことに気づいているかどうか」であると私は考えています。

私は学生時代2本の論文を書きましたが、1本目は完全に失敗作でした。論文としての一貫性も、分析結果も甘い。その失敗の原因は、論文の構成を考える際、“シミュレーション”というブラックボックスを設置してしまっていたからでした。シミュレーションは、論理的な計算のもとに積み上げられたアウトプットに過ぎないにも関わらず、当時の私はシミュレーションを魔法のようなものと勘違いしていました。
ブラックボックスは存在しないというのは研究に限りません。自身の成長にも、夢への実現にも、仕事においても、ブラックボックスはなく、すべては今の延長線上で、飛躍が起きる可能性は極々少ないのです。しかし、人間はすぐブラックボックスを設置してしまいます。

「ブラックボックスはない。」この事実にいかに早く気付けるかは、人生攻略において大事なピースの一つです。そして、そのことを身をもって体験できる手段の1つが研究なのです。

例え一人の研究でも磨かれる「チームで働く力」

研究は1人でやるイメージが強いですが、「チームで働く力」の向上にも大きく寄与します。
研究は誰も知らないことを明らかにすることです。となると、研究成果を発表する論文やプレゼンテーションは、常に研究内容・結果を知らない人に伝えることになります。だからこそ、分かりやすく、論理が明快な表現力が必要不可欠ですし、質疑応答の際には、相手の立場にも考慮した返しが求められます。
また、研究を進めていく際にも、教授に進め方のアドバイスを求めたり、時にはサンプルを集めるため多くの人の協力をお願いする必要も出てきます。

このように研究は社会人基礎力をバランスよく育てていくことに適しているのです。

優秀な人の共通点は研究経験

まだ私の数少ないサンプルでのジャッジですが、これまで出会った友人や同期の中で特に「この人優秀(社会人基礎力が高い)だなあ」と思った人に「大学時代に注力してきたこと」を聞いた中での共通点も、研究をしてきたことでした。
もちろんマスト条件ではないですし、まだ社会人になって日が浅いので判断しにくいですが、能力ベースで見ると、研究をしていた彼らは、
・資料作成スキルやプログラミング、統計分析のような副次的スキルを持っている
・仮説検証思考が身についている
・自分の領域がはっきりしている
といった社会人基礎力以外の優れた特徴もあるように思えます。

ちなみに大学時代にインターンをやっていた人はスタンス面で、バイトに注力していた人は、無思考にコミットする力が優れている印象です。←これも実は大事な能力だと思います。

何でも研究にできる


得られる能力以上に、研究のいいところは、何でも研究テーマにできるということです。これまでの内容と相反するかもしれませんが、社会人基礎力を育てるために研究をするというのはナンセンス。
自分が知りたいから、やりたいから始めたことに、研究の要素を加えることで、結果的に社会人基礎力が育まれた。そんな流れが最も理想的だと思います。
目先のお金の創出に追われない教育フェーズだからこそ、教育者は研究の機会と思考、手段を提供し、学ぶ者は好きなことを研究してみてはいかがでしょうか。

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