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8日目:乾いていて温かい手

フェネック文章力向上月間
Day8 エロスを感じる異性のパーツ

※諸事情により7日目を飛ばしてこちらを先に公開します


先にお伝えしておくが、この記事は盛大な惚気である。


私は夫に頭を撫でられるのがたまらなく好きだ。
優しく撫でられるたびに、私はどこかこそばゆく、それでいて温かい気持ちになるのだ。その時間だけはまるで幼子に戻ったかのように、優しい空気に包まれる。そこにはいつも感じている不安感など、まるで最初から存在しないかのようだ。

身内が言うのもなんだが、夫の手はとても綺麗だ。
特筆すべきはすらりと伸びた指で、男性としては若干小柄だが、程よく角ばっている。SNS等で性別を明らかにしたくなかったとき、よく夫の手を使って写真を撮ってもらったものだ。

夫が私の祖母と初めて会ったとき、祖母は夫の手を握り「かわいくて綺麗な手だねえ」とひたすら手を握っていた。
大好きな夫の手と、八十を過ぎても現役で働いている皺くちゃで優しい祖母の手。二つの大好きな手が触れあう瞬間を、私は感慨深い気持ちでただじっと見つめていた。


かつて江國香織氏がエッセイ集「とるにたりないものもの」にて「乾いていて温かい男性の手」を好きなものとして挙げていたが、確かに一種の酩酊効果のようなものはあると思う。

男性の角ばった手を見ると、それだけで無性にドキドキしてしまう。
浮き出た血管と骨格、すらりと長く伸びた指。
どれも私には持ちえない要素だから、余計に魅力的なのかもしれない。
私とは別の、自分より大きないきものが、慈しむように髪や肌に触れていく。そんな感覚を丁寧に味わうのはとても心地よい。


自分と異なる要素に惹かれる、という面もあるかもしれない。
それは体格もそうだし、性格面でも言える。

広い背中や喉仏、細身だけれど確実に私より筋肉質な四肢。
些細なことでも喜ぶ素直さに、物事をコツコツ継続できる勤勉さ。包容力。
私には一生手の届かない、日向を歩いてきた者特有の朗らかさ。


結局は、ないものねだりなのだろう。
私も夫も、足りないなにかを求めて今日も互いを求め合う。

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