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桐野夏生「玉蘭」恋愛を通じて人間の本質に迫った。

桐野夏生「玉蘭」は戦前と現代の上海を舞台に時空を超えた二組の恋愛を描いたものだが、そのうちの1人は夏生の祖母の弟がモデル。その大叔父は戦前、日清汽船ぼ機関長で戦後行方知れずになった。元々は彼の物語を書こうとしたのだという。だが現代の女性たちの苦悩も書きたくなってもう一組を登場させ、この二組の恋愛が交錯する複雑なドラマになった。恋愛を軸にドラマは展開するが、時代の荒波の中でさまざまな困難にぶつかり、もがくこの4人の姿に人間の本質が描かれる。
アウト、グロテスク、魂萌え、柔らかな頬、と優れた作品を読んできたが、これらの中でも格段に素晴らしい。異国や戦前の描写、二組を交錯させる構想力、揺れ動く心理の描写。本当にすごい作家だ。

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