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渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第11章

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令。

第11章 民事信託の実務の基本的枠組み
 Q705、民事信託解説書の選び方について・・・寺本昌広『逐条解説新しい信託法』2008年、商事法務、村松秀樹他『概説信託法』2008年版、2023年版、商事法務、別冊NBL商事法務『信託法改正要綱試案と解説 (別冊NBL no. 104)』2005年、商事法務、大蔵財務協会『改正税法のすべて平成19年版』2007年、書籍としてはこの辺なのかなと思います。
 その他には大垣尚司先生、道垣内弘人先生など、ご自身の状況に合わせて勉強していく形で良いのかなと個人的に思います。
 インターネット上では、信託法制部会の議事録や国会答弁を読むことが出来ます。
 
Q713、信託の消極的要件、受託者の損失補填義務等が完全に排除されていないこと、につて・・・限定責任信託(信託法2条2項12号)はどのようにせいりするのか、分かりませんでした。委託者が圧倒的な指図権を有し、かつ、受託者から信託財産の管理の委託を受けるなどして、受託者の信託判断の余地が全くなく、受託者が単に認容する義務を負うにとどまるものではないこと、について・・・圧倒的な、全く、などの文言から、信託行為の条項から受託者の権限(信託法26条但し書)が制限ではなく、ないという状態を想定しているのかなと思いました。
 
Q726、信託契約の公正証書化の意義、公証人による当事者の確認と法的検討について・・・士業が信託行為の案に関わっている場合、二重チェックになり、安定する一方で当事者のコスト負担は大きくなります。信託口口座開設のために選択肢が公正証書化しかないとすれば、士業が関わる場合に公証人が行うことと、金融機関が行うこととの棲み分けが必要なのではないかなと感じます。
 公証センター(公証人役場)のリソースがさけるなら、士業を入れない信託行為の書類作成について公証人のみによる関与の割合が多くなっていくことも良いのかなと思います。
 遺言、任意後見契約を信託行為と同じ日に公正証書化するのであれば、当事者の負担感は抑えられるのかなと思ったりしますが、正解は分かりませんでした。
 
Q775、居住用物件と委託者兼受益者の管理事務、委託者兼受益者は居住するに際して、具体的な義務を一切負わないのだろうか。について・・・土地の工作物等の占有者の責任(民法717条)を負うと考えます。
 
Q792、受託者の変更に伴う信託契約の見直し、信託変更は誰と誰との間で行うべきか、受託者交代時において、委託者兼受益者の判断能力が喪失されている場合どうするか。・・・信託法と成年後見等関連法令、信託行為の内容に従って必要な信託契約の見直しを行っていくものと考えます。
 
Q795、受益者の変更に係る受託者の事務、なお、新受益者が受益権を取得したことを知らない時は、受託者が通知することを要するが(信託88②。信託行為の別段の定めが可能。)、その際、旧受益者にあわせて作られていた受益債権の内容を、新受益者に対してアジャストしなくてもよいのか、という問題を生じ得る。について・・・新受益者は受益権の放棄(信託法99条)権があるので、受益権の内容条項を中心に見直す必要はあると思います。
 
Q803、修繕積立金、信託財産修繕のための積立金を留保するため、信託行為であって、その計算方法を定めておきたい。について・・・私は修繕積立金の確保を受託者の信託事務として定めるのみで、計算方法を定めていません。計算方法を定めることによってこう着しないか、気になるからです。今後、ケースによっては必要なのか検討したいと思います。
 
Q809、信託元本組入、一般に、信託契約書上、受託差は、各計算期日において、純収益から、信託事務処理のための積立金、修繕のための積立金、公租公課のための積立金、保険料のための積立金の金額の合計額について、各信託期日の翌日、信託の元本に組み入れる、という趣旨の定めがおかれている。について・・・一般に置かれていることを初めて知りました。今後この定めを入れるかどうか考えます。
 
Q814、計算事務の委託、行政書士やFPなどの専門職も支援に適していよう。について・・・計算事務の委託の文脈で行政書士が出てくるのは適しているのか、分かりませんでした。
 
Q826、信託監督人の設置の判断、成年後見制度における後見監督人が設置される場合を参考にすることについて、同意です。親族・第三者との間で紛争がある場合については、信託を行うのかどうかの判断を含め、弁護士を紹介することが適していると個人的に思います。
 
Q827、信託監督人への同意見の付与、同意見者となるからといって、必ずしも監督者としての中立性が害されるというわけでもないかもしれない。について・・・監督者は後見人、受託者を本人、受益者のために監督するので(信託法131条4項)、中立性は求められていないのではないかと思います。
 
Q832、受益者代理人の職務と不正リスク、信託金の配当に関しては、それを認知症にり患した受益者に代わって、受託者から直接受益者代理人の口座に入金するような形で受領できるのか、認知症患者の名義の預金口座では凍結されてしまいかねないか、について。・・・受益者代理人の権限はあると考えられます(信託法139条)。ただし、受益者代理人は受益者の代理人なので、口座名義は成年後見人同様に受益者代理人であることが外観上、金融機関システム上分かる必要があると考えます。受益者代理人の選任の有無に関わらず、判断能力を失った人の名義の預金口座は、原則として凍結されると考えます。
 
Q833、信託監督人の合意書、新しい受益者が、信託内容を理解し、信託監督人制度を理解するためには、かような合意書を締結することが望ましい。しかし、新しい受益者が未成年者、あるいは、認知症患者などの判断能力が減退した者である場合等もあり得るので、そのような場合にはどうすべきか、検討を要する。について・・・未成年者であれば法定代理人が、判断能力が減退した方で、成年後見制度の利用を必要とする程度であれば、成年後見制度の利用を行い後見人等が合意書の締結を行うことになると思います。
 
Q840,裁判所による信託監督人の選任、なお、信託法131条4項の「受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき」というような裁判所による信託監督人の選任の規定があることから、当初の信託行為の定めがない場合、信託期中、信託の変更を行うことで、信託監督人の選任を行うことはできるのだろうか、委託者兼受益者の自益信託の場合はどうなのか、について。・・・裁判所が関与せず、信託行為中の信託の変更条項に従って信託監督人を選任できるのか、という論点だと思います。受益者代理人の選任(信託法138条)に関する定め、信託法131条4項のような定めが受益者代理人にはないことから、信託の目的に反せず、信託の終了事由に該当せず、信託変更の当事者に受益者(受益者代理人、成年後見人を含みます。)が入っている場合は、信託変更により信託監督人の選任を行うことが可能だと考えます。委託者兼受益者の自益信託の際も同様だと考えます。
 
Q842、信託登記事項証明書、というものが分かりませんでした。
 
Q843、賃貸物件の信託譲渡時の賃借人のへの通知、賃貸管理会社への通知が多いのではないかと思います。
 
Q893、9.12判決で残された信託と遺留分の問題、また、遺留分減殺された受益権については、その結果、いかなる内容の受益債権を準共有するのだろうか(減殺請求された受益者の障害に限定されるのか、遺留分権利者の生涯に変化し得るのか)。について・・・受益権の個数を分けておけば(例えば1円につき1個)、準共有という問題は生じないのではないかと思いました。
 
Q903、10.23判決―信託契約の拘束力、委託者兼受益者であれば、受託者を解任することもできるのがデフォルトルールである(信託法58条1項)。この点、(一般論として)受託者兼帰属権利者が、当初より、委託者兼受益者の心変わり(他の推定相続人の存在)の可能性を想定して、用意周到に信託法のデフォルトルールを修正した技術的な信託条項を仕組むような場合をどのように考えるべきか、よく考えたい。について・・・受託者の解任について、委託者兼受益者が自由に解任できる条項については、私は何かしら解任事由という制限を付けることが必要だと考えています。そうでなければ、いつ解任されるか分からない信託に、受託者として責任を持つ人を探すのは難しいのではないかと思います。
 
Q904、合意終了等に関する信託条項のひな型リスク、について・・・合意できない場合は、信託法165条(特別の事情による信託の終了を命ずる裁判)で手当てが可能ではないかと思います。
 
Q906、合意終了と単独終了、について・・・委託者兼受益者による単独終了(信託法164条1項)を定める場合、何かしらの客観的な終了事由を追加する必要があるのではないかと思います。
 
Q929、委託者からの倒産隔離、について・・・登記研究463号、昭和61年4月30日民三第2777号民事局第三課長回答「信託による所有権移転の登記のある不動産に対して破産登記等の嘱託の受理の可否について」を根拠とする記載に同意です。
 
Q940、信託目録の仕組み、信託目録について、私なら信託不動産という用語は省略すると思います。登記記録から信託不動産であることが分かるからです。
信託契約書を単に引き写し、長文の信託条項を転記するのでは、第三者が即座にみてわかるものになっておらず、公示の機能を果たすことができない。について・・・信託契約書の信託条項を、可能な限り信託目録に転記しやすいような形で作成するが良いと思います。信託契約当事者、関係者に分かりやすいものであることが望ましいこと、信託契約書から要約や抽出をすると、信託契約書と信託目録の齟齬が生じる恐れがあること、信託契約書から要約・抽出された信託登記の申請を審査する登記官の負担が増すと思われることが理由です。