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差し入れの「コール」って本当に必要?

どうもシラトリーヌです。
今回も例の業界の裏話です。どうぞお茶のお供にお楽しみください。

●恐怖の「コール」
若い頃、映画やTVドラマの「制作進行」という仕事をしていたことは以前から小出しにしているが、その業務のひとつに「差し入れのコール」というのがある。
撮影現場のスタッフにはよく俳優部(キャストとマネージャーを総称して「俳優部」と言う)から差し入れを頂くことがあり、それはもう大変ありがたいのだが、そのたびに制作進行には「コール」という苦行が課されるのである。具体的に何をするかというと、みんなの前で「〇〇さんから▲▲の差し入れ頂きました!ありがとうございます!!」と叫ぶのである。しかしただ叫べば良いというわけではない。撮影の進行を妨げないタイミングでなければならないので、シーン変わりのセッティング変えや休憩前を狙わなくてはいけない。その上その場に差し入れてくれたキャスト本人がいなくてはならない(現場の真ん中にいなければならず、セットの端っこ等で控えてる時ではダメ)。これが意外とチャンスが少なく、失敗すると非難轟々なので胃をキリキリさせながらタイミングを測ることになるのだった。新人の頃はこれが本当にうまく出来ず、バタバタした現場でいつがベストなのか読み取れずに失敗しては怒られた。仮に失敗しても言えればまだマシでコール出来ないままその日のロケが終わってしまった日などはキャストの事務所からプロデューサーなどの偉い人に直接クレームが入ってしまうので絶体絶命だ。

しかし、そもそもコールって本当に必要なのか?とっくに引退した今でも疑問である。頂いた差し入れは必ず「〇〇さんから頂きました。ありがとうございます」と貼り紙して現場のお茶コーナーに置いている。それで充分じゃないのか?もし私が差し入れる立場だったら貼り紙すら貼らなくて良い。その方がさりげなくて粋な計らいではないだろうか?
そもそも差し入れはキャストよりもマネージャーが買ってくることが多いので当のコールされた本人はキョトンとしていることもしばしばあるくらいだ。キャスト自身はどう思っているのだろう?「ふふん、俺様の差し入れだ。ありがたく食え」なんて思う人いるだろうか?

●空気読めてる差し入れと読めてない差し入れ
もちろん、差し入れは嬉しい。殺伐とした現場に美味しいスイーツなんかがやってくるとそれだけでスタッフの心は潤う。
ただ、差し入れの管理をする身としてはぶっちゃけありがた迷惑な時もある。基本的に、セットでの撮影など移動がなく差し入れを出すためのスペースが確保された環境の時に差し入れてくれるのがありがたいのだが、バタバタした屋外ロケでよりによってそれ?みたいなことも多々あった。以下が実例である。

①スタッフ40名に対し桃1個。なぜ?屋外ロケでスペースもない中なんとか小さく切り刻んだが、当然全員には行き渡らない。ていうか切らなきゃいけないもの全般、制作進行としては嬉しくない。
②真夏の屋外ロケでアイス。移動が多い現場や交通整理が必要な都内の街中でアイスクリームの差し入れ。一体どうしろと言うのか?ただでさえ人止め車止め(通行人や車が映ったり余計な音が入らないよう本番中通行を止めるやつ)で手が足りないのに、クーラーボックスと大量の氷を用意しなければならず(そんな時に限ってクーラーボックス車に積んでなかったりもする)しかも時間が経てば溶けてしまうアイスを一体どのタイミングで数十人に配れと言うのか。

ちなみに、ありがたい差し入れの実例は以下のようなもの
①日持ちする焼き菓子。腹にたまるし、賞味期限が長ければもらった当日がバタバタしていても後日のセット撮影の日にまわせる。
②挽いてあるコーヒー豆。基本的にスタッフのコーヒーは一番安いドンキのアーミーグリーンなので、スタバの豆とか、ちょっと良いコーヒーを貰えると大変嬉しい。しかし悲しいかなちゃんと掲示しないと誰も違いに気づかない。
③意外と役立つせんべい。しょっぱい物より糖分が欲しかったり口の中の水分持ってかれたりで基本的にせんべいは不人気。だがしかし、どんな差し入れよりも腹にたまるので「飯おし」(何らかの事情で食事の時間を後回しにすること)の際に大活躍。腹を空かせたスタッフに配ってまわると喜ばれる。
④なんと言っても叙々苑弁当。叙々苑しか勝たん。しかしハラミ弁当かカルビ弁当かで、差し入れてくれる人の財力とセンスが比較される。


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